2025年7月6日午前1時ごろ、浜松市中央区千歳町のガールズバーで、店長の竹内朋香さん(当時27歳)と店員の伊藤凜さん(26歳)が刃物で相次いで刺され、死亡した。警察は現場にいた山下市郎(当時41歳)を、まず竹内さんに対する殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。
山下は伊藤さんと一緒に店へ来ており、両手に刃渡り約20センチのククリナイフと呼ばれる刃物を持っていたとされる。事件2日前から伊藤さんと行動し、前日には熱海市で伊藤さんが店員に助けを求めたとの捜査情報も報じられた。鑑定留置を経て、静岡地検浜松支部は2025年11月14日、山下を2人に対する殺人と銃刀法違反などの罪で起訴した。
| 発生 | 2025年7月6日午前1時ごろ |
|---|---|
| 場所 | 浜松市中央区千歳町のガールズバー |
| 被害者 | 竹内朋香さん(27歳)、伊藤凜さん(26歳) |
| 被告人 | 山下市郎(事件時41歳) |
| 最初の逮捕 | 竹内さんに対する殺人未遂容疑で現行犯逮捕 |
| 凶器とされる物 | 刃渡り約20センチのククリナイフ2本 |
| 捜査段階 | 2人死亡後、殺人容疑で送検 |
| 鑑定 | 責任能力を調べる鑑定留置 |
| 起訴 | 2025年11月14日 |
| 起訴罪名 | 殺人、銃刀法違反など |
| 現在 | 判決前 |
事件2日前、山下と伊藤さんは同じ車で行動していた
静岡朝日テレビの報道では、山下は事件前からレンタカーを利用していた。6月28日に袋井市内で車を借り、7月3日に期間延長を申し出て、4日午前にも手続きのため店へ現れている。
7月4日ごろから、山下と伊藤さんは周囲と連絡が取れない状態になったと店の関係者が話している。事件当日、2人が浜松の店へ来た際にも、このレンタカーが使われたとみられている。
レンタカー店の従業員は、山下が自分の車を修理に出しているため代車として借りる趣旨を説明し、当初1週間の予定だったと証言している。7月3日に電話で延長を申し出た後、4日午前11時半過ぎに黒い乗用車で再び店へ来た。
事件当日の店舗到着に使われたとみられる車と、事件2日前にレンタカー店へ現れた車がつながったことで、警察は7月4日から6日未明までの移動経路を追うことができた。事件前の2日間は、伊藤さんがどのような状態で山下と行動していたのかを解明する時間帯となった。
事件前日、熱海で伊藤さんが助けを求めたとの情報
捜査関係者への取材として、伊藤さんは事件前日の7月5日、山下と2人で熱海市内にいるところを目撃され、市内の店員へ助けを求めていたと報じられた。警察にも「様子がおかしいカップルがいた」と通報が入った。
警察官が現場へ向かった時には2人の姿はなく、周辺を捜しても見つからなかったという。熱海から浜松までは160キロ以上離れており、その後2人がどの経路で浜松へ戻ったのかが捜査された。
この通報が事件前に存在したことは、店舗での襲撃だけでは説明できない前段階があったことを示す。伊藤さんが自発的に山下と旅行していたのか、途中から帰る自由を奪われていたのかは、捜査で確認すべき重要な点になった。
共同通信は、山下が刃物で脅して伊藤さんを店へ連れて来た可能性を県警が調べていると報じた。あくまで捜査段階の可能性であり、11月の起訴によってその行為が別罪として確定したわけではない。
熱海での救助情報は、誘拐・監禁の有罪認定ではない
伊藤さんが助けを求めたという情報や、県警が刃物で脅され車で連れて来られた可能性を調べていたことから、事件前に自由を制限されていた可能性が報じられた。
一方、2025年11月の起訴報道で明確に確認できる罪名は殺人と銃刀法違反などで、熱海での行動について誘拐・監禁の有罪判決が出たわけではない。捜査段階の見立てと、起訴・判決で確定する犯罪事実は分けて扱う必要がある。
7月6日午前1時ごろ、伊藤さんと一緒に店へ
朝日新聞によると、山下は7月6日午前1時ごろ、伊藤さんとともに浜松市中央区千歳町のガールズバーを訪れた。山下は以前から店を複数回利用し、竹内さんと伊藤さんの2人と面識があった。
客として通常に入店した場面ではなく、捜査報道では両手に2本のククリナイフを持った状態だったとされる。刃渡りはいずれも約20センチ。店内には他の従業員や客もいた。
2本の刃物を両手に持っていたという状況は、偶然店内にあった刃物をその場で手にした事件とは異なる。少なくとも刃物を店舗へ持ち込んだことが、警察の初期捜査で重視された。
ただし、刃物を用意した時点で竹内さんと伊藤さんの2人を殺す計画まで完成していたか、どの時点で殺意が生じたかは、公判で証拠を踏まえて判断される問題になる。
入店直後、まず店長の竹内朋香さんが襲われた
朝日新聞と静岡朝日テレビは、山下が店へ入るとすぐ竹内さんの背中などを複数回刺したと報じている。竹内さんは病院へ搬送されたが死亡した。
現場にいた他の人が110番通報し、警察官が駆け付けた。事件が進行中の現場で山下の身柄が確保されたため、逃走した人物を後から特定するタイプの事件ではなかった。
現場で被疑者とみられる人物、使用されたとみられる刃物、複数の目撃者が同時に確保されたことは、未解決事件とは証拠構造が大きく異なる。警察はその場の目撃証言、刃物、被害者の傷、店舗内外の状況を照合し、2人それぞれへの攻撃を捜査した。
一方で、現場で逮捕できたことと、犯行前の経緯や責任能力までその場で確定できることは別である。山下と伊藤さんが熱海から浜松へ戻るまでの経過、2本の刃物を準備した時期、3人の間のトラブルはその後の捜査対象として残った。
伊藤凜さんは店外へ逃げた後も刺された
静岡朝日テレビの報道では、竹内さんが襲われた後、伊藤さんは店の外へ逃げたが、山下が追いかけて背中を刺したとされる。伊藤さんも搬送先で死亡した。
共同通信配信では、2人には背中を中心に10カ所以上の刺し傷があったとされ、静岡県警は強い殺意があった可能性をみて捜査した。死因は失血死と報じられている。
多数の刺傷が背中側に集中していたことは、被害者が逃れようとする中でも攻撃が続いた可能性を考える資料になった。県警が「強い殺意」をみたのは、死亡という結果だけではなく、使用された刃物と攻撃回数、部位などを踏まえた捜査判断だった。
この段階ではまだ裁判所の認定ではなく、県警が強い殺意があったとみて捜査していた段階にとどまる。最終的な殺意の認定は、起訴後の裁判で検察・弁護双方の主張を踏まえて判断される。
他の客や従業員には被害がなかった
当時店内には2人以外の従業員や客もいたが、別の人物が刺されたとの報道はない。県警は、山下が竹内さんと伊藤さんの2人を狙って襲った可能性を調べた。
ただし、なぜ2人が標的になったのかという最終的な動機は、裁判所が認定した事実ではない。事件直後に伝えられた人間関係やスマートフォンのやり取りは、捜査段階で集められた情報になる。
捜査報道では、山下が伊藤さんに強い関心を持って店へ通っていたことや、伊藤さんと竹内さんのメッセージ内容を見て怒りを募らせた可能性が伝えられた。店舗関係者の証言と通信記録の分析が、動機を解明する材料として扱われた。
しかし、人間関係に関する証言は伝聞を含む場合があり、本人の供述も公判で信用性を吟味される。山下が2人だけを狙ったように見える結果から、特定の感情や一つのメッセージを唯一の動機と断定することはできない。
最初の逮捕容疑は竹内さんに対する「殺人未遂」
浜松中央署は山下を、竹内さんを刺して殺そうとした殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。逮捕時点では被害者の死亡が刑事手続上確定していなかったため、まず殺人未遂として身柄を確保した。
その後、竹内さんと伊藤さんの2人の死亡が確認され、県警は殺人容疑へ切り替えて捜査した。事件結果が判明するにつれて、逮捕容疑から送検・起訴段階の罪名が変わる典型的な経過である。
7月7日、2人への殺人容疑で送検
共同通信は、山下が7月7日に殺人容疑で送検されたと伝えている。県警は2人への多数回の刺傷、2本の刃物、入店直後の行動などから、強い殺意があったとみて動機を調べた。
山下が捜査段階で刺したことを認める趣旨の供述をしたとの報道はある。しかし、捜査段階の認否は刑事裁判での正式な認否とは異なり、供述内容がそのまま確定事実になるわけではない。
スマートフォンのやり取りをめぐる報道
静岡朝日テレビは、店の複数の関係者の話として、伊藤さんが竹内さんへ送った山下に関するメッセージを山下が目にし、怒りを募らせていたとの情報を報じた。県警は3人の間に何らかのトラブルがあったとみて通信記録などを調べた。
この内容は捜査関係者・店舗関係者への取材に基づくもので、判決で認定された犯行動機ではない。「好意が拒まれたため殺害した」など単純な動機へ確定させる段階にはなく、公判での証拠評価と区別する必要がある。
責任能力を調べるため鑑定留置
逮捕・送検後、静岡地検浜松支部は山下の刑事責任能力を調べるため鑑定留置を行った。精神状態を専門家に鑑定させ、犯行時に行為の善悪を理解し、それに従って行動を制御する能力があったかを検討する手続である。
鑑定留置が行われたこと自体は、責任能力がなかったことを意味しない。検察は鑑定結果を踏まえて起訴するか、どの罪名で起訴するかを判断する。
刑事責任能力は、犯行時に自分の行為の意味や違法性を理解し、それに従って行動を制御できたかという問題である。事件の重大さや被害者数とは別に評価される。
本件では鑑定留置の後、検察が殺人などで起訴した。少なくとも検察は、刑事裁判で責任を問うことができるとの判断に進んだことになるが、責任能力について公判で弁護側が争う余地まで失われたわけではない。
11月14日、殺人と銃刀法違反などで起訴
2025年11月14日、静岡地検浜松支部は山下市郎を、竹内さんと伊藤さんに対する殺人、銃刀法違反などの罪で起訴した。鑑定留置を経たうえで刑事裁判に問う判断がされたことになる。
起訴によって山下は「容疑者」から「被告人」の段階へ移った。検察は裁判で2人に対する殺人行為と刑事責任能力などを立証することになるが、起訴だけで有罪が確定するわけではない。
2人の被害と、事件前の2日間は別々に整理する必要がある
この事件には、7月6日午前1時ごろの店舗襲撃という明確な現場と、それ以前に伊藤さんが山下と行動していた約2日間という別の時間軸がある。
熱海で助けを求めたとの情報は、店舗事件へ至る前の危険を考える重要な捜査情報である。一方、何らかの脅迫・拘束が刑事裁判でどこまで認定されるかは別問題で、店舗での2人殺害と自動的に同じ犯罪事実にはならない。
2026年8月時点では判決前
2026年8月26日時点で、山下に対する有罪・無罪や刑を伝える主要報道はなく、法的状態は殺人などの罪で起訴された被告人の段階にある。
この段階では「2人を殺害した犯人として刑が確定した人物」ではなく、検察が2人への殺人などで訴追している被告人である。現場での逮捕や捜査段階の供述があっても、刑事裁判の判決が出るまでは法的な位置付けを区別する必要がある。
一方、竹内さんと伊藤さんが刃物による襲撃を受け死亡したこと、山下が現場で逮捕され、その後殺人容疑で送検され、鑑定留置を経て起訴されたという手続は公表済みの事実として追うことができる。
今後の裁判では、起訴された2人への殺人行為、殺意、責任能力、犯行前の行動や動機に関する証拠が審理される。捜査段階で報じられた供述や人間関係は、判決が出るまでは裁判所の確定認定と区別される。
参考資料・出典
- 朝日新聞「ガールズバーで女性店長と店員、2人刺され死亡 41歳の男を逮捕」
- 福島民友・共同通信「女性2人の刺し傷10カ所以上 逮捕男に強い殺意か」
- LOOK静岡朝日テレビ「袋井でレンタカー借り、熱海に現れ…明らかになる2人殺害直前の行動」
- 集英社オンライン「浜松ガールズバー2人刺殺」2025年7月10日
- 集英社オンライン「浜松ガールズバー刺殺事件の容疑者の末路」2025年12月24日
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