長野県中野市4人殺害事件|青木政憲被告に一審死刑・控訴審は未開始

公開日 2026年7月23日
最終更新 2026年7月31日
カテゴリー 2020年代 大量殺人事件

長野県中野市4人殺害事件は、2023年5月25日、長野県中野市江部で近隣住民の女性2人と、通報を受けて駆け付けた警察官2人が殺害された事件である。現在も控訴審の日程は決まっておらず、死刑判決は確定していない。

POINT
この記事でわかること
  • 散歩中の女性2人と警察官2人が殺害された経緯
  • 青木政憲被告が約12時間にわたり立てこもった状況
  • 女性2人への一方的な思い込みが犯行へ発展した背景
  • 事件前にナイフを購入し、研いでいたとされる準備行為
  • 妄想症と統合失調症をめぐる精神鑑定の違い
  • 長野地裁が完全責任能力を認め、死刑を選択した理由
  • 現在も控訴中となっている裁判の状況
項目内容
一般的な呼称長野県中野市4人殺害事件、中野市4人殺害事件、中野市猟銃発砲立てこもり事件
発生日2023年5月25日
通報時刻午後4時26分ごろ
発生場所長野県中野市江部
死亡者4人
被害者村上幸枝さん(66歳)、竹内靖子さん(70歳)、池内卓夫さん(61歳)、玉井良樹さん(46歳)
死因4人とも失血死
被告人青木政憲
犯行時の年齢31歳
事件当時の職業農業
使用された凶器ナイフ、ハーフライフル銃
立てこもり自宅に約12時間立てこもった
身柄確保2023年5月26日午前4時37分ごろ
鑑定留置2023年8月から11月まで約3カ月間
起訴2023年11月16日
主な起訴罪名殺人、銃刀法違反
初公判2025年9月4日
一審判決2025年10月14日、長野地裁が死刑
控訴2025年10月27日、弁護側が東京高裁へ控訴
現在控訴中。死刑判決は確定していない

散歩中だった女性2人をナイフで襲う

事件が起きたのは、2023年5月25日午後4時すぎだった。村上幸枝さんと竹内靖子さんは、日課として一緒に近所を歩いていた。青木被告は自宅近くで2人を見つけると、ナイフを持って接近した。

裁判で認定された内容によると、青木被告は2人を追い掛け、胸部などを繰り返し刺した。通行人らが異変に気付き、午後4時26分ごろ、「男が女性を刺した」という趣旨の110番通報を行っている。村上さんと竹内さんは救助されましたが、いずれも失血により死亡した。

駆け付けた警察官2人に猟銃を発砲

通報を受け、中野警察署地域課の池内卓夫巡査部長と玉井良樹警部補がパトカーで現場へ向かった。2人が到着すると、青木被告はハーフライフル銃を発砲した。さらにナイフによる攻撃も加えたと認定されている。

池内さんと玉井さんは、住民からの通報に対応するため現場へ駆け付けたところを襲われた。2人も大量の出血によって死亡し、事件の死亡者は合計4人となった。殉職した2人は、その後、それぞれ2階級特進している。

猟銃を持って自宅へ立てこもる

4人を襲った後、青木被告は猟銃を持ったまま近くの自宅へ入った。警察は周辺住民へ屋内退避や避難を呼び掛け、現場周辺を封鎖する。当時、住宅には青木被告の両親や伯母がった。母親と伯母は、立てこもり中に住宅から脱出して保護されている。

警察は青木被告への説得を続けましたが、立てこもりは夜を通して続いた。翌26日午前4時37分ごろ、青木被告が自宅から外へ出てきたため、警察が身柄を確保した。最初の通報から、約12時間が経過していた。

死亡した4人の被害者

被害者年齢事件当時の状況
村上幸枝さん66歳竹内さんと散歩中にナイフで襲われた
竹内靖子さん70歳村上さんと散歩中にナイフで襲われた
池内卓夫さん61歳中野署巡査部長。通報を受けて現場へ出動した
玉井良樹さん46歳中野署警部補。池内さんとともに現場へ出動した

村上さんと竹内さんは、青木被告と親しい関係にあった人物ではなかった。裁判では、2人が青木被告へ実際に悪口を言っていた事実は認められていない。池内さんと玉井さんも、住民を守るため職務として現場へ向かった警察官だった。

4人に殺害される原因となる落ち度はなく、一方的な攻撃によって命を奪われた。

「ぼっちとばかにされた」という一方的な思い込み

青木被告は捜査段階で、女性2人から「ぼっち」などと繰り返し言われていると思っていたという趣旨を供述した。しかし、女性2人が実際にそのような言葉を発していたことを示す証拠はない。検察側と弁護側の双方が、青木被告には、自分が悪口を言われているという妄想があったことを前提に裁判を進めた。

青木被告は大学生のころから、周囲の人から悪口を言われ、インターネットを通じて監視されているなどと思い込むことがあったとされている。事件前には、近所を歩く女性2人が自分を侮辱していると考え、怒りを蓄積させていた。

事件前にナイフを購入して刃を研ぐ

裁判では、事件が突発的に起きただけではないことを示す行動も明らかになった。青木被告は事件の約1カ月半前、インターネットで犯行に使用したナイフを購入していた。購入後には、刃を研いで切れ味を鋭くしていたと認定されている。

ナイフを購入した直後、弟へ人を殺すことを示唆する内容のメッセージも送っていた。事件前日にも、今後重大なことが起こるとほのめかす趣旨の連絡をしていたとされている。長野地裁は、こうした準備や事件前の言動を、犯行時の判断能力を検討する事情として重視した。

警察官については「撃たれる前に撃った」と供述

青木被告は捜査段階で、警察官から射殺されると思い、先に撃ったという趣旨の供述をした。しかし、警察官2人は住民からの通報を受け、状況を確認するためパトカーで到着した直後だった。青木被告が警察官から現実に銃撃を受けていた事実はなく、正当防衛が成立する状況ではない。

裁判所は、青木被告が警察官を敵と認識したとしても、そのことだけで判断能力が著しく低下していたとは認めなかった。

約3カ月間の鑑定留置後に起訴

青木被告は、4人それぞれへの殺人容疑で逮捕、再逮捕された。長野地検は2023年8月から約3カ月間、青木被告を鑑定留置し、犯行時の精神状態を調べた。鑑定留置は、精神障害の有無だけでなく、善悪を判断する能力や、判断に従って行動する能力があったかを調べる手続きである。

長野地検は刑事責任を問えると判断し、2023年11月16日、殺人と銃刀法違反の罪で青木被告を起訴した。

2025年9月、長野地裁で裁判員裁判

2025年9月4日、長野地裁で青木政憲被告の裁判員裁判が始まった。青木被告は起訴内容について問われ、「黙秘します」と述べた。その後の被告人質問でも、事件の経緯や動機に関する質問へほとんど答えていない。

一方、弁護側も青木被告が4人を襲ったという基本的な事実関係は前提としていた。裁判の中心的な争点は、犯行当時の刑事責任能力と、死刑を選択すべきかという量刑だった。

妄想症か統合失調症かで鑑定結果が分かれる

検察側の鑑定医は、青木被告について妄想症だったとの見解を示した。女性2人に悪口を言われているという誤った確信はあったものの、思考や行動全体が精神障害に支配されていたわけではないと評価している。弁護側の鑑定医は、青木被告が統合失調症の症状を再発、悪化させ、妄想の強い影響を受けていたとした。

弁護側は、善悪を判断し、その判断に従って行動する能力が著しく低下した心神耗弱状態だったと主張する。心神耗弱と認定された場合、法律上、刑を減軽しなければならないため、死刑を言い渡すことはできない。

長野地裁は完全責任能力を認定

長野地裁は、青木被告に妄想症の症状があり、それが女性2人への怒りに影響したことを認めた。一方、事件前にナイフを購入して研ぎ、殺害を示唆するメッセージを送っていたことも重視している。犯行後には遺体を移動させ、猟銃を準備し、警察官の到着に対応していた。

さらに自宅へ戻って立てこもり、家族や警察とのやり取りを行っている。これらの行動は、状況を理解し、目的に応じて行動を選択できていたことを示すと判断された。裁判所は、善悪を判断し、行動を制御する能力を特に問題なく保っていたとして、完全責任能力を認定した。

2025年10月14日、長野地裁が死刑判決

検察側は、短時間に4人を殺害した結果は極めて重大として、青木被告へ死刑を求刑した。弁護側は心神耗弱による刑の減軽を求め、死刑を回避すべきだと主張した。2025年10月14日、長野地裁は検察側の求刑どおり、青木政憲被告へ死刑を言い渡した。

判決は、強固な殺意に基づき、ナイフや猟銃で4人を殺害した犯行を残虐極まりないと評価した。女性2人への動機は一方的な思い込みによるもので、酌量の余地はないとしている。住民を守ろうとして駆け付けた警察官2人まで殺害したことも、刑事責任を重くする事情となった。

死刑を回避すべき事情はないと判断

長野地裁は、青木被告に精神障害があったことを量刑上の事情として考慮した。しかし、妄想の影響があったことは、4人を殺害した責任を大きく軽減する事情にはならないと判断している。事件では、女性2人を襲った後に犯行をやめることなく、警察官2人にも攻撃を加えた。

短時間に異なる立場の4人を殺害し、その後も猟銃を持って立てこもった結果は重大である。裁判所は、死刑の選択を回避すべき事情は見いだせないと結論付けた。

弁護側が東京高裁へ控訴

一審判決後、青木被告本人は、弁護人との接見で控訴を望まない趣旨の話をしていたと報じられた。一方、弁護団は責任能力に関する一審の判断に不服があり、控訴する方針を示す。2025年10月27日、弁護側は東京高裁へ控訴した。

控訴審では、妄想症と統合失調症をめぐる精神鑑定の評価や、完全責任能力を認めた一審判断の妥当性が争われる可能性がある。現在も控訴審の日程は決まっていない。

一審死刑と死刑確定は異なる

青木政憲被告には、長野地裁で死刑が言い渡されている。しかし、弁護側が控訴しているため、一審判決は確定していない。今後、東京高裁の判決や、最高裁への上告手続きが行われる可能性がある。

すべての上訴手続きが終了するまでは、青木被告は死刑確定者ではない。現在の正確な法的立場は、一審で死刑判決を受け、控訴中の被告人である。

精神障害だけを事件の原因にしない

本事件では、青木被告の妄想症や統合失調症をめぐる精神鑑定が大きく報道された。しかし、精神障害のある人の大多数は、重大な暴力事件を起こすことなく生活している。診断名だけで人物を危険視したり、精神疾患が直ちに犯罪へつながると考えたりすることは適切ではない。

刑事裁判で検討されたのは、診断名そのものではなく、青木被告が犯行時に善悪を判断し、行動を制御できたかという点である。一審は具体的な準備や犯行前後の行動を検討したうえで、完全責任能力を認定した。

長野県中野市4人殺害事件の主な時系列

  • 2023年4月:青木被告がインターネットでナイフを購入し、刃を研ぐ
  • 5月24日:弟へ重大な出来事を示唆する内容のメッセージを送ったとされる
  • 5月25日午後4時すぎ:散歩中の村上幸枝さんと竹内靖子さんをナイフで襲う
  • 午後4時26分ごろ:「男が女性を刺した」と110番通報
  • その後:駆け付けた池内卓夫さんと玉井良樹さんを猟銃やナイフで襲う
  • 同日夕方:猟銃を持って自宅へ立てこもる
  • 5月26日午前4時37分ごろ:自宅から出てきた青木被告を確保
  • 同日:警察官への殺人容疑で逮捕
  • 6月から7月:残る警察官と女性2人への殺人容疑で相次いで再逮捕
  • 8月から11月:約3カ月間の鑑定留置
  • 11月16日:殺人と銃刀法違反の罪で起訴
  • 2025年9月4日:長野地裁で裁判員裁判の初公判
  • 9月24日:検察側が死刑を求刑
  • 10月14日:長野地裁が死刑判決
  • 10月27日:弁護側が東京高裁へ控訴
  • 現在:控訴審の日程は未定。死刑判決は未確定

現在の状況|一審死刑、東京高裁へ控訴中

長野地裁は2025年10月、青木政憲被告に完全責任能力があったと認定し、死刑を言い渡した。弁護側は、精神障害の影響を過小評価した判決だとして、東京高裁へ控訴している。2026年5月に事件発生から3年を迎えましたが、控訴審はまだ始まっていない。

再審請求や死刑確定、死刑執行の段階ではなく、刑事裁判が継続している状態である。現在の正確な状況は、一審で死刑判決を受け、東京高裁での控訴審を待っている段階である。

長野県中野市4人殺害事件が残したもの

長野県中野市4人殺害事件では、日常の散歩をしていた女性2人と、住民を守ろうとした警察官2人が命を奪われた。青木政憲被告は、女性2人から悪口を言われているという事実に基づかない思い込みを抱いていた。裁判では、その妄想が犯行へ与えた影響と、青木被告が自らの行動を制御できたかが詳しく検討されている。

一審は、ナイフの購入や準備、事件中の状況判断、犯行後の行動などから、完全責任能力があったと認定した。さらに、強固な殺意によって短時間に4人を殺害した結果は極めて重大として、死刑を選択している。一方、死刑判決は控訴によって確定しておらず、責任能力の評価は今後、東京高裁で改めて審理される可能性がある。

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