沼津・バラバラ遺体遺棄事件は、2023年2月、静岡県磐田市に住む会社員の伊藤亜佑美さん(当時33歳)が殺害され、遺体を切断されたうえで、沼津市内の住宅や車内などに遺棄された事件である。2024年6月14日、静岡地裁浜松支部は土屋被告に求刑通り懲役18年の判決を言い渡した。裁判では殺害の計画性が中心的な争点となり、裁判所は周到な計画殺人とまでは認めなかった一方、完全な突発犯行とも評価しなかった。
- 2023年2月21日に伊藤亜佑美さんが殺害された経緯
- 土屋勇貴被告と伊藤さんの交際関係、金銭トラブルの背景
- 遺体切断・遺棄から死体遺棄容疑で逮捕されるまでの流れ
- 裁判で争われた計画性と懲役18年判決の内容
沼津・バラバラ遺体遺棄事件の概要
| 事件名 | 沼津・バラバラ遺体遺棄事件 |
|---|---|
| 発生日・期間 | 2023年2月21日殺害場所静岡市内の山中・農道付近に駐車した車内遺体損壊・遺棄場所静岡県沼津市内の土屋被告宅、車内、バルコニーなど |
| 被害 | 伊藤亜佑美さん(当時33歳) |
| 被告人等 | 土屋勇貴被告( |
| 裁判・捜査状況 | 2024年6月14日、懲役18年現在の状況一審で懲役18年。2026年7月6日時点で、その後の明確な公開続報は確認できない 2023年2月21日、伊藤亜佑美さんは土屋勇貴被告と会った 事件が起きたのは2023年2月21日である。 |
| 現在の状況 | 沼津・バラバラ遺体遺棄事件は、2023年2月、静岡県磐田市に住む会社員の伊藤亜佑美さん(当時33歳)が殺害され、遺体を切断されたうえで、沼津市内の住宅や車内などに遺棄された事件である。2024年6月14日、静岡地裁浜松支部は土屋被告に求刑通り懲役18年の判決を言い渡した。裁判では殺害の計画性が中心的な争点となり、裁判所は周到な計画殺人とまでは認めなかった一方、完全な突発犯行とも評価しなかった。 |
2023年2月21日に伊藤亜佑美さんが殺害された経緯
土屋勇貴被告は当時31歳。沼津市内に住み、保険関係の仕事に従事していた。2人は知人関係から交際関係となり、後の裁判では不倫関係にあったことが明らかにされている。事件当日、2人は会い、伊藤さんの車で移動した。起訴内容や判決報道では、静岡市内の山中にある農道付近に止めた車内で殺害が行われたとされている。
検察側は裁判で、土屋被告が金を支払うなどと言って伊藤さんを誘い出し、鉄製ハンマーを持って出発したと指摘した。これが後に「殺害をどこまで事前に考えていたのか」という計画性の争点につながる。
鉄製ハンマーで20回以上殴打し、充電ケーブルで首を絞めた
刑事裁判で認定された犯行態様は極めて激しいものだった。土屋被告は車内で、伊藤さんの頭部を鉄製ハンマーで20回以上殴打した。その後、スマートフォンの充電ケーブルを使って首を絞め、伊藤さんを殺害したとされている。事件初期の捜査でも、伊藤さんの死因について、頭部への強い打撃による外傷性くも膜下出血や、頸部圧迫による窒息が伝えられていた。
土屋被告は後の裁判で、最初の殴打は衝動的だったという趣旨の説明をした。弁護側は一貫して、事前に殺害を決意していた計画犯罪ではないと主張している。ただし、検察側は、ハンマーを持参して伊藤さんを呼び出した経緯などから一定の計画性があったと反論した。単に現場で偶然手にした物を使った事件ではなかったことが、裁判で重視された。
交際解消と200万円をめぐる金銭問題
事件の背景には、2人の交際関係の悪化と金銭問題があった。裁判では、妻子のいた土屋被告と伊藤さんが不倫関係にあり、関係解消をめぐってトラブルになっていたことが明らかにされている。報道された公判内容によると、土屋被告は不倫関係が明らかになった際、伊藤さんが自身の妻へ支払う慰謝料に充てる趣旨で、200万円を伊藤さんの口座へ振り込んだとされている。その後、この金銭の返還をめぐって対立が生じた。
土屋被告は被告人質問で、関係を解消する目的で金銭を支払うなどと伝えて伊藤さんと会ったと説明した。また、伊藤さんから家族や職場に関係を明かす趣旨の圧力を受けていたという主張もしている。これらは裁判で示された土屋被告側の供述・主張を含むものであり、被害者側の言動を一方的に確定事実として扱うことには注意が必要である。仮に深刻な交際・金銭トラブルが存在したとしても、殺害や遺体損壊を正当化する事情にはならない。
殺害翌日、電動工具などを用いて遺体を切断
伊藤さんを殺害した後、土屋被告は遺体を沼津市内の自宅へ運んだ。翌日には電動のこぎりなどの工具を入手し、自宅で遺体を切断したとされている。起訴内容では、糸のこぎりなどを使用して遺体を損壊したことが罪に問われた。捜査段階では、自宅敷地から複数の電動工具が発見され、血液反応が確認されたとの報道もあった。警察は自宅の浴室などで切断作業が行われた可能性を調べた。
切断された遺体は、自宅のバルコニーや車内などに遺棄された。事件が「バラバラ遺体遺棄事件」と呼ばれるようになったのは、この発見状況によるものだ。ただし「バラバラ」という言葉は報道や検索上で広く定着した俗称である。刑事裁判上の罪名は、殺人、死体損壊、死体遺棄であり、事件内容を正確に整理する場合は「遺体を切断・遺棄した」と表現する方が適切である。
家族が暮らす住宅に遺体を運び込んだ異常な犯行後行動
事件は、遺体の損壊方法だけでなく、その場所でも強い衝撃を与えた。土屋被告は伊藤さんの遺体を、自身が生活していた沼津市内の住宅へ運び込んだ。当時、この住宅には土屋被告の家族も暮らしていたと報じられている。殺害現場から遺体を移動し、工具を準備したうえで損壊し、複数の場所へ分ける行為は、殺害そのものとは別に死体損壊罪と死体遺棄罪として問われた。
裁判では検察側が、遺体切断について被害女性の尊厳を著しく踏みにじる残忍な行為だと厳しく指摘した。遺族にとっても、死亡だけでなく、遺体が損壊された事実が深刻な被害を重ねる結果となった。
行方不明届から遺体発見、土屋勇貴容疑者の逮捕へ
伊藤さんと連絡が取れなくなったことから、家族側は警察へ行方不明を届け出た。警察が足取りを調べるなかで土屋勇貴容疑者との関係が浮上する。捜査の結果、2023年2月23日朝、沼津市内の土屋容疑者宅などから伊藤さんの遺体が発見された。同日、警察は土屋容疑者を死体遺棄容疑で逮捕した。この時点では、逮捕容疑は遺体を遺棄した行為であり、殺人罪の有罪が確定したわけではない。
その後の捜査で、伊藤さんの車内に残された痕跡、遺体の状況、土屋容疑者の供述などが調べられた。土屋容疑者が殺害への関与を認める趣旨の供述をしていることも報じられ、捜査は殺人事件へ発展した。
2023年3月15日に殺人容疑で再逮捕、4月5日に起訴
2023年3月15日、静岡県警は土屋容疑者を殺人容疑で再逮捕した。警察は、静岡市内で伊藤さんの頭部を鈍器で殴り、充電コードで首を絞めて死亡させた疑いを追及した。さらに2023年4月5日、静岡地検浜松支部は土屋被告を殺人、死体損壊、死体遺棄の3つの罪で起訴した。
起訴状では、静岡市内の農道付近に駐車した車内で伊藤さんを殺害し、翌日に沼津市内の自宅で遺体を切断した後、バルコニーや車内などへ遺棄したとされた。
2024年6月の裁判員裁判で土屋被告は起訴内容を認めた
事件の初公判は2024年6月4日、静岡地裁浜松支部で開かれた。土屋被告は起訴内容を認めた。そのため裁判の中心は「殺害したかどうか」ではなく、犯行の計画性や経緯をどのように量刑へ反映するかという点に移った。検察側は、土屋被告がハンマーを持参し、金銭を支払うなどと言って伊藤さんを誘い出したとして、殺害には一定の計画性があったと主張した。
これに対して弁護側は、ハンマーは殺害のためではなく脅す目的で持参したもので、実際の殺害は会話の中で精神的に追い詰められた末の衝動的行為だったと主張した。
「衝動的に殴った」土屋被告が法廷で語った事件経緯
6月6日の被告人質問で、土屋被告は犯行時の状況について説明した。土屋被告の法廷供述によると、交際関係を解消するため金を支払うなどと伝えて伊藤さんと会ったものの、会話の中で家族の安全に関する不安を感じる発言をされたとして、「衝動的に殴った」という趣旨の説明をした。
首を絞めた理由についても、殴打後のやり取りで限界を感じたという趣旨の供述をしている。また、殺害後には申し訳ない気持ちがあった一方、犯行を隠さなければならないと考え、遺体を損壊したと述べた。これは土屋被告本人の供述である。被害者である伊藤さんは死亡しており、同じ場面について反論することはできない。そのため、被害者の言動に関する被告側の説明を無条件に確定事実とみなすべきではない。
検察は懲役18年、弁護側は13年以下を求めた
2024年6月10日の論告求刑公判で、検察側は土屋被告に懲役18年を求刑した。検察側は、金を支払うとして伊藤さんを誘い出し、ハンマーを持って出発した段階で一定の計画性があったと指摘。頭部を20回以上殴打し、さらに首を絞めた行為について、強い殺意に基づく執拗で危険な犯行だと評価した。
遺体を切断した行為についても、被害者の尊厳を踏みにじる残忍なものだと主張した。弁護側は、殺害は衝動的で計画性がなく、交際関係や金銭要求などによって土屋被告が精神的に追い詰められていたと主張。懲役13年以下が相当だと求めた。最終陳述で土屋被告は、取り返しのつかないことをしたとして謝罪の言葉を述べた。
静岡地裁浜松支部が懲役18年判決|計画性をどう判断したのか
2024年6月14日、静岡地裁浜松支部は土屋勇貴被告に懲役18年を言い渡した。検察側の求刑通りの実刑判決である。判決は計画性について、殺害を全く想定していなかったわけではないと指摘した。その一方、検察側が主張したような明確な計画殺人とまでは評価しなかった。
裁判所の判断は、要約すれば「計画性があったとまではいえないが、突発的犯行ともいえない」というものだった。ハンマーを準備して持参したこと、激しい殴打と絞首を重ねたこと、殺害後に遺体を切断・遺棄したことなどが総合的に評価された。裁判所は各犯行の悪質性を踏まえ、土屋被告に罪の重大さを自覚させ、猛省を促す必要があるとして懲役18年を選択した。
なぜ事件名に「沼津」と付くのか|殺害場所と遺体遺棄場所は異なる
本件は「沼津・バラバラ遺体遺棄事件」と広く呼ばれていますが、事件の場所を整理すると複数地域にまたがっている。
- 被害者の居住地:磐田市
- 殺害場所:静岡市内の山中・農道付近に止めた車内
- 遺体損壊場所:沼津市内の土屋被告宅
- 遺体遺棄・発見場所:沼津市内の住宅、車内、バルコニーなど
殺害そのものが沼津市内で行われた事件ではない。「沼津」という呼称が定着したのは、切断された遺体が土屋被告の沼津市内の自宅などで発見され、最初に死体遺棄事件として大きく報道されたためである。
現在の状況|一審懲役18年、その後の公開情報は限定的
2026年7月6日時点で確認できる明確な裁判情報は、2024年6月14日に静岡地裁浜松支部が懲役18年を言い渡したところまでである。その後について、一般に確認できる主要な公開情報では、控訴審判決や上告審決定などを明確に示す続報は確認できない。このため、公開確認できた情報だけを基準とする場合、「土屋勇貴被告に一審で懲役18年判決」とするのが最も慎重な整理である。控訴がなければ一審判決は確定しますが、控訴の有無を裏付ける十分な公開資料が確認できない以上、推測で確定刑とは記載しない。
事件そのものについては、土屋被告が2024年の初公判で起訴内容を認め、静岡地裁浜松支部が殺人、死体損壊、死体遺棄について有罪判決を言い渡している。
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