伊東市干物店強盗殺人事件|情況証拠で死刑確定、肥田公明が最高裁で再審を争う

公開日 2026年3月12日
最終更新 2026年8月28日
カテゴリー 2010年代 死刑

事件ステータス

発生年月日
2012年
都道府県
静岡県
最終刑・処分
死刑

2012年12月19日朝、静岡県伊東市八幡野の干物販売店で、業務用冷凍庫の中から経営者の清水高子さん(59)と従業員の小淵慶五郎さん(71)が見つかった。2人は刃物で襲われ、出血性ショックで死亡していた。

元従業員の肥田公明は強盗殺人罪に問われたが、捜査段階から一貫して無罪を主張した。自白や犯行を直接見た証言ではなく、事件当夜の行動、現場付近の車、事件直後の金銭使用など複数の情況証拠を総合して犯人性が認定され、2021年に死刑が確定した。確定後も再審請求が続いている。

事件発生2012年12月18日
発覚2012年12月19日朝
被害者清水高子さん(59)、小淵慶五郎さん(71)
被告人肥田公明
一審2016年11月24日 静岡地裁沼津支部・死刑
控訴審2018年7月30日 東京高裁・控訴棄却
最高裁2021年1月28日 上告棄却
再審2025年に地裁・高裁で棄却、最高裁へ特別抗告

2人は刃物で襲われた後、冷凍庫へ入れられた

最高裁判決は、金銭に窮した肥田が以前勤務していた干物店で経営者の女性らを殺害して現金を奪おうと決意し、2人の頸部などを刃物で突き刺した上、業務用冷凍庫へ入れたと認定している。

扉の外には障害物が置かれ、2人は出血性ショックで死亡した。裁判所が認定した死因は冷凍による死亡ではなく、刃物による傷害に基づく出血性ショックだった。

元従業員・肥田公明は2013年に逮捕された

肥田は以前この店で勤務し、店内事情や被害者を知る立場にあった。警察は事件当日の行動と金銭状況を調べ、2013年6月に強盗殺人容疑で逮捕した。

肥田は犯行を認めず、その姿勢は一審、控訴審、最高裁を通じて変わらなかった。裁判の中心は、一つの直接証拠ではなく複数の間接事実をどこまで積み上げられるかだった。

最高裁も「種々の客観的証拠」による犯人認定を是認

2021年1月28日の最高裁判決は、『種々の客観的証拠等に基づき』肥田を犯人と認定した一審判決を是認した東京高裁の判断を相当とした。

つまり、決定的な自白や犯行目撃証言が一つあった事件ではない。現場付近での行動、店への立入り、車の動き、金銭状況、犯行後の現金使用などを総合した認定だった。

事件直後の現金使用が、犯人性を支える事情となった

確定審では、事件前の肥田が借金返済や携帯電話料金の支払いなどを抱え、金銭的に困窮していたことが検討された。一方、事件直後には借金返済、妻への現金交付、料金支払い、口座への入金など、まとまった現金を使っていた。

店からなくなった現金の内容と、事件後に肥田が扱った硬貨などとの関係も証拠評価の対象になった。裁判所は、これらを単独で決定的証拠とせず、他の情況証拠と合わせて犯人性を判断した。

弁護側は別犯人の可能性を主張した

弁護側は、肥田が店へ行った事実と2人を殺害した事実は別だと主張した。現場付近から別の車が走り去ったとの目撃情報などを挙げ、別人が犯行に関与した可能性は排除されていないと争った。

しかし一審と東京高裁は、複数の客観的事情を総合すれば肥田を犯人と認定できると判断した。最高裁もこの認定を維持した。

2016年に死刑、2018年に控訴棄却

2016年11月24日、静岡地裁沼津支部の裁判員裁判は肥田に死刑を言い渡した。2人の生命を奪い、刃物で攻撃した後に冷凍庫へ閉じ込めた態様や金銭目的が重く評価された。

肥田は控訴したが、2018年7月30日、東京高裁は一審の有罪認定と量刑を維持して控訴を棄却した。

最高裁は「当初から強盗殺人を計画」とまでは認めなかった

最高裁は量刑について、2人の殺害結果や金銭目的、強固な殺意を重く見た一方、当初から強盗殺人を計画した犯行とまでは認められないこと、犯行前に懲役前科がなかったことを被告側に有利な事情として挙げた。

それでも、これらを十分考慮しても死刑を維持した原判断はやむを得ないとした。死刑選択の理由を『綿密な事前計画』だけに求めるのは、最高裁判決の内容と異なる。

2021年の死刑確定後、同年に再審請求

最高裁の上告棄却後、肥田の死刑は確定した。同年8月、肥田側は静岡地裁沼津支部へ再審を請求し、確定判決の犯人認定に合理的な疑いがあると主張した。

再審請求は死刑判決を未確定に戻す手続ではない。確定判決は効力を持ったまま、新証拠などによって裁判をやり直すべきかを審査する。

第三者のDNA型や単独犯行の可能性が再び争点に

再審請求側は、現場から確認された肥田以外のDNA型や、現場状況からみて一人で犯行を実行できたのかという点などを新たな証拠・主張として示した。

第三者のDNA型があることだけで別人が殺害犯と決まるわけではないが、確定判決の証拠関係に新証拠を加えたとき合理的疑いが生じるかが再審では問われる。

2025年、地裁と高裁が再審開始を認めなかった

静岡地裁沼津支部は2025年2月19日、再審請求を棄却した。弁護側は即時抗告したが、東京高裁も同年3月28日に棄却した。

共同通信は、高裁が新たな三者協議を開かないまま短期間で結論を出したとして、弁護側が審理の進め方も批判したと報じた。

最高裁へ特別抗告、死刑確定と再審手続が並行する

肥田側は2025年4月、最高裁へ特別抗告した。2026年8月27日時点で、公表資料上、特別抗告が棄却され再審手続が終了したとの確認はない。

現在の法的状態は、強盗殺人罪による死刑が確定している一方、その確定判決について再審開始を求める手続が続いているというものになる。

確定判決の事実と再審側の主張は混同しない

確定判決は肥田を2人の強盗殺人の犯人と認定している。一方、肥田は一貫して無罪を主張し、再審手続で第三者関与などの可能性を争っている。

再審請求側が提出した内容は、それ自体が新たな確定事実になったわけではない。情況証拠による死刑事件だからこそ、確定判決が何を認定したかと、再審で何が争われているかを分けて読む必要がある。

参考資料・出典

・最高裁判所第一小法廷 平成30年(あ)第1270号判決 2021年1月28日
・裁判所「強盗殺人被告事件」事件概要
・共同通信ニュース用語解説「干物店強盗殺人事件」
・LOOK静岡朝日テレビ「最高裁で弁護側が改めて無罪主張」2020年12月1日
・共同通信「死刑再審抗告 1カ月で棄却」2025年6月14日

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