浜名湖連続殺人事件|須藤敦司さんの財産奪取と出町優人さん殺害、上告取下げで死刑確定

公開日 2026年2月19日
最終更新 2026年8月28日
カテゴリー 2010年代 死体遺棄事件 死刑

事件ステータス

発生年月日
2016年
都道府県
静岡県
事件分類
死体遺棄事件
最終刑・処分
死刑

2016年、浜松市周辺で川崎竜弥と接点のあった男性2人が、約半年の間隔を置いて相次いで死亡した。最初の被害者は元同僚の須藤敦司さん(当時62歳)。裁判所は、川崎が須藤さんの財産を奪う目的で殺害し、死亡後も本人になりすまして不動産や車両、預金、年金を自分の側へ移したと認定した。

同年7月には、服役中に知り合った出町優人さん(当時32歳)が磐田市内で殺害された。遺体は切断され、浜名湖周辺で相次いで発見された。川崎は公判で黙秘を続け、弁護側は犯人性を争ったが、一審・控訴審はいずれも死刑。最高裁判決の2日前、本人が上告を取り下げたことで刑が確定した。

事件名浜名湖連続殺人事件
発生時期2016年1月・7月
発生場所静岡県浜松市・磐田市、浜名湖周辺
被害者須藤敦司さん(62)、出町優人さん(32)
被告人川崎竜弥
一審2018年2月23日、静岡地裁・死刑
控訴審2019年3月15日、東京高裁・控訴棄却
刑の確定2021年2月13日付の上告取下げにより死刑確定

須藤敦司さんの死亡後、財産が次々と川崎側へ移った

静岡地裁判決によれば、川崎は2016年1月29日ごろ、浜松市内の須藤さん宅で須藤さんを殺害し、キャッシュカード、実印、運転免許証、携帯電話などを奪ったと認定された。具体的な殺害方法までは特定されていない。

殺害後には、須藤さん名義の軽自動車やバイク、不動産について、本人から川崎へ譲渡されたように見せる手続が進められた。さらに預金口座から現金を動かし、別口座を開設して年金の受取先まで変更した。財産移転の連続は、須藤さんの死亡と川崎の利益取得を結び付ける重要な事情となった。

遺体を焼損し、浜名湖周辺へ遺棄

須藤さんの遺体は完全な状態では発見されなかった。判決は、川崎が遺体を焼損したうえ、同年7月までの間に浜名湖またはその周辺へ遺棄したと認定している。浜名湖岸で見つかった骨の鑑定などから、須藤さんの死亡が捜査上裏付けられた。

完全な遺体や殺害方法が分からない事件では、最後に生存が確認された時期、被告人との接点、金融記録、名義変更、遺骨の鑑定など複数の事実が意味を持つ。裁判では、これらが一つの経過として説明できるかが検討された。

7月、出町優人さんの切断遺体が浜名湖で見つかった

2016年7月、浜名湖では人体の一部が相次いで発見された。身元は出町優人さんと判明した。出町さんは川崎と服役中に知り合い、出所後に京都から静岡へ来ていたとされる。

地裁判決は、川崎が7月5日ごろ磐田市内のアパートで出町さんの腹部を刃物で刺すなどして殺害し、遺体を切断したうえで浜名湖周辺へ遺棄したと認定した。須藤さん事件と異なり、出町さんを殺害した具体的な動機は確定しなかった。

不正出金事件から殺人捜査へ

川崎が当初逮捕されたのは、須藤さん名義の口座から現金を引き出した窃盗や、資金移動をめぐる詐欺などだった。財産関係の捜査が進むにつれ、須藤さん本人の所在が確認できないこと、財産移転が集中していることが問題となった。

一方、出町さんの遺体発見後は、被害者の足取り、川崎との接点、アパート周辺の映像、遺体処理に関わる物証などが調べられた。二つの事件はいずれも川崎の自白によって解明されたものではなく、客観証拠を重ねる形で立件された。

黙秘が続く中、間接証拠の積み重ねが裁判の中心になった

2018年1月に始まった静岡地裁の裁判員裁判で、川崎は罪状認否を含めて黙秘した。弁護側は二つの殺人について犯人性を争い、検察側は被害者との最後の接点、金融記録、防犯カメラ映像、遺体処理に関係する証拠を示した。

裁判所は黙秘そのものを有罪の根拠とはせず、個別の証拠がどこまで一つの犯行経過を示すかを検討した。須藤さん事件では財産奪取と名義変更、出町さん事件では現場・移動・遺体遺棄に関する事情を重ね、いずれも川崎の犯行と認定した。

静岡地裁は死刑を言い渡した

静岡地裁は2018年2月23日、川崎に死刑を言い渡した。須藤さんを財産目的で殺害し、その後も名義変更や年金詐取を続けた計画性、二人の遺体を損壊・遺棄した行為、被害者が2人に及んだ結果を重く評価した。

川崎に生命・身体犯の重大な前科がないことや年齢など、有利に考慮できる事情も検討されたが、二つの殺人と証拠隠滅行為の重大性から死刑を回避する事情はないと判断された。

東京高裁も一審の認定を維持

川崎側は控訴したが、東京高裁は2019年3月15日に控訴を棄却した。弁護側は事実誤認などを主張したものの、高裁は一審が積み上げた間接証拠の評価に不合理な点はないとした。

出町さん殺害の動機が特定されていないことも、殺人の認定を覆す事情とはならなかった。二人の生命が奪われ、いずれも遺体が損壊・遺棄された結果を含め、一審の死刑判断が維持された。

最高裁判決の2日前に上告を取り下げ

川崎側は最高裁へ上告し、上告審では弁論も開かれた。最高裁の判決は2021年2月15日に予定されていたが、川崎本人は2月13日付で上告を取り下げる書面を提出した。

これにより、最高裁が判決を言い渡す前に東京高裁の死刑判決が確定した。司法手続としては、最高裁が死刑を宣告したのではなく、控訴審判決が本人の上告取下げによって確定した。

二つの事件で認定された内容には違いが残った

須藤さん事件では、財産取得の目的と、その目的に沿った犯行後の名義変更・出金まで詳細に認定された。出町さん事件では殺害の実行は認定された一方、なぜ殺害したのかという動機までは確定しなかった。

一人の被告人による二つの殺人でも、裁判で明らかになった範囲は同一ではない。確定判決は、分からない部分を埋めるのではなく、客観証拠から認定できる行為を積み上げて刑事責任を判断した。

須藤さん名義の書類と口座が、死亡後も使われ続けた

地裁判決が認定した財産関係の行為は一つではない。川崎は、須藤さんから軽自動車やバイクを譲り受けた事実がないのに譲渡書類を作成し、所有名義を自分へ移す手続を進めた。不動産についても、須藤さん本人の意思による処分を装う形で手続が行われた。

金融面では、須藤さんのキャッシュカードを使った出金に加え、本人名義の新たな口座を開設し、老齢厚生年金の受取口座を変更した。判決では、2016年6月までに振り込まれた年金16万9730円をだまし取った事実も認定された。殺害後も被害者が生存し、自ら財産を動かしているように見せる行為が続いていた。

7月の遺体発見と、9月まで続いた二つの身元確認

出町さんの遺体の一部は2016年7月8日、浜名湖で相次いで見つかった。切断された遺体から身元を割り出す捜査が進む一方、須藤さんについてはまだ死亡が確定していなかった。

川崎は7月14日、須藤さんのキャッシュカードを使った現金引き出しなどの容疑で逮捕された。8月31日には浜名湖岸で須藤さんの肋骨や肩甲骨などが発見され、鑑定を経て9月16日に警察が殺人・死体遺棄事件として捜査本部を設置した。

9月22日には出町さんへの殺人・死体損壊・遺棄容疑で再逮捕され、12月には須藤さんへの強盗殺人などで再逮捕された。二つの事件は、浜名湖で遺体が見つかった時点で同時に全容が判明したのではなく、金融犯罪の捜査と遺体の身元確認が並行して進む中で一つずつ立件された。

検察は出町さん殺害を「口封じ」とみた

出町さん事件では、検察側は須藤さん事件を察知されたための口封じだった可能性を主張した。しかし、川崎本人が黙秘し、客観証拠からも動機を一つに特定できなかったため、判決は殺害動機を確定しなかった。

動機が確定しなくても、殺害の実行者を認定する証拠が別に存在すれば刑事責任の判断は可能である。出町さん事件では、被害者の足取り、川崎との接点、現場周辺の映像、遺体処理に関する事情が犯人性の判断材料となった。

二件を通して見えた、犯行後の隠蔽

須藤さん事件では遺体を焼損し、出町さん事件では遺体を切断している。処理方法は同一ではないが、いずれも遺体をそのまま残さず、浜名湖周辺へ分散して遺棄した点が共通する。

さらに一件目では、死亡を隠したまま財産関係の手続を続けた。遺体を見つかりにくくする行動と、被害者が生きているように装う金融・名義手続が組み合わさったことが、事件の発覚を遅らせる一方、後には客観的な記録として川崎と須藤さんの財産を結び付ける証拠にもなった。

参考資料・出典

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