1990年代、福岡県内で、会社代表の男性(46)と交際相手のフィリピン人女性(25)が金品を奪う目的で殺害され、遺体を牧草地に埋められた。事件を主導した倉吉政隆は、この2人に対する強盗殺人だけでなく、拳銃を使った強盗致傷や強盗、警察官に対する殺人未遂など一連の事件でも起訴された。
最高裁第一小法廷は2004年12月2日、倉吉の上告を棄却し、一、二審の死刑判断を維持した。判決は、2人を殺害して遺体を埋めた事件で倉吉を首謀者と認定し、ほかの拳銃事件を含めて一連の犯行を主導した責任を重く評価している。
| 事件名 | 福岡連続強盗殺人事件 |
|---|---|
| 主な被害 | 男性会社代表(46)と交際相手の女性(25)が死亡 |
| 被告人 | 倉吉政隆 |
| 主な罪 | 強盗殺人、死体遺棄、強盗致傷、強盗、殺人未遂、公務執行妨害など |
| 背景 | バカラ賭博による借金などで金銭的に困窮 |
| 控訴審 | 2000年6月29日、福岡高裁が死刑を維持 |
| 上告審 | 2004年12月2日、最高裁第一小法廷が上告棄却 |
| 確定刑 | 死刑 |
バカラ賭博の借金が膨らみ、金品を狙う計画へ向かった
最高裁判決によると、倉吉はバカラ賭博にのめり込み、借金の返済などに窮していた。そこで、製管会社の代表取締役を務める一方、中古貴金属なども販売していた男性を標的とし、男性と交際相手の女性を殺害して金品を奪う計画を立てた。
計画には、強盗の発覚を防ぐため2人の遺体を土中へ埋めることまで含まれていた。最高裁は倉吉をこの犯行の「首謀者」と位置づけ、共犯者1人に指示を出しながら実行させたと認定している。
男性と女性を車へ乗せ、拳銃とガムテープで抵抗を封じた
倉吉らは被害者2人を呼び出し、倉吉が運転する車に乗せた。車内では拳銃を突き付け、ガムテープで両手首などを縛り、自由に行動できない状態にしたうえで人気のない場所へ連行した。
被害者は男性46歳、女性25歳。女性はフィリピン人で、男性と交際していた。最高裁判決では、2人を最初から強盗の対象として呼び出し、抵抗を抑えた後に殺害へ進んだ一連の流れが認定されている。
男性は拳銃で射殺、女性は鼻と口をふさがれて窒息死した
人気のない場所へ連行した後、男性は拳銃で撃たれて死亡した。続いて女性は、鼻と口をガムテープでふさがれ、窒息死した。倉吉自身がすべての殺害行為を直接行ったのではなくても、判決は共犯者に指示命令して2人の殺害を実行させたと認定した。
2人を殺害した後、男性が所持していた貴金属などが奪われた。金品を得るという強盗目的と、その発覚を防ぐために被害者の生命を奪う行為が一体となった事件だった。
2人の遺体は牧草地へ運ばれ、土中に埋められた
犯行後、倉吉らは2人の遺体を牧草地へ運び、土中に埋めた。最高裁判決は、殺害前から遺体を埋めて事件の発覚を防ぐ計画があったと認定しており、死体遺棄も強盗殺人と連続する行為として審理された。
殺害、金品の強奪、遺体の隠匿までを一連の計画として進めた点は、裁判で倉吉の主導性を判断する重要な事情となった。共犯者が存在していても、計画を立てて指示を出した中心人物としての責任は軽減されなかった。
前後には拳銃を渡して強盗事件を次々と実行させていた
倉吉の事件は2人の強盗殺人だけでは終わらない。最高裁判決によると、その前後にも倉吉は共犯者へ拳銃を渡し、強盗致傷や強盗事件を次々と実行させていた。
そのうち強盗致傷事件では、共犯者が発射した弾丸がパチンコ店従業員3人に命中した。金品を得るために実銃を繰り返し使う犯行が続き、実際に複数の負傷者を出している。
逮捕を免れるため、パトカー内の警察官にも発砲した
さらに倉吉は、逮捕などを免れるため、至近距離からパトカー内の警察官らに向けて拳銃を発射した。この事件では弾丸が警察官の頭部のすぐ近くを通過し、殺人未遂と公務執行妨害などが成立した。
強盗のために拳銃を準備して共犯者へ使わせるだけでなく、自らも身柄確保を逃れるため発砲したことから、裁判では一連の事件全体の危険性と継続性が考慮された。
共犯者は無期懲役、首謀者とされた倉吉には死刑が選択された
2人を殺害した強盗殺人事件の共犯者には無期懲役が言い渡された。一方、倉吉については、共犯者より重い死刑が選択された。最高裁は、共犯者の刑が無期懲役であることも倉吉に有利な事情として検討したうえで、それでも死刑を回避できないと判断した。
刑の差を生んだ大きな要素は、倉吉が強盗殺人を計画した首謀者であり、共犯者へ指示して2人の殺害を実行させたこと、さらにほかの拳銃事件も主導していたことだった。共同事件では、同じ現場に関わったかだけでなく、計画・指示・実行への関与の程度が個別に量刑へ反映される。
福岡高裁が死刑を維持し、2004年に最高裁も上告を棄却
福岡高裁は2000年6月29日、一審の死刑判決を維持した。弁護側は最高裁に上告し、事実認定や量刑などを争ったが、最高裁第一小法廷は2004年12月2日、上告理由に当たらないとして棄却した。
最高裁は職権でも記録を検討し、死刑を見直すべき事情はないと判断した。倉吉が被害者らへの謝罪の念を示していたことなども考慮したが、強盗殺人を含む一連の事件を主導した責任は重大だとして、原判決を是認した。
上告審では死刑の量刑や事実認定に関する主張が示された
最高裁判決によると、弁護側は死刑制度と憲法の関係を含む主張を行い、そのほか事実誤認や量刑不当も訴えた。最高裁は、死刑制度が憲法13条・36条に反するとの点について従来の大法廷判例に照らして理由がないとし、残る主張は適法な上告理由に当たらないとした。
そのうえで最高裁は、形式的に上告理由を退けるだけでなく、記録を調べて刑事訴訟法411条により判決を破棄すべき事情があるかも検討した。そして一連の犯行内容、倉吉の役割、被害結果、共犯者との刑の違いなどを具体的に挙げ、死刑を維持する判断を示した。
強盗殺人から殺人未遂まで、複数の事件が一つの裁判で量刑判断された
倉吉に問われた罪名は、強盗殺人と死体遺棄だけではない。強盗致傷、窃盗、強盗、銃砲刀剣類所持等取締法違反、殺人未遂、公務執行妨害などが含まれた。これは、金品目的の強盗、拳銃の使用、警察官への発砲という別々の行為が一連の事件として立件されたためである。
最高裁の判決理由も、2人を死亡させた事件だけを取り出して評価せず、その前後に共犯者へ拳銃を渡して強盗を実行させたことや、自ら警察官へ発砲したことまで含めて責任を判断した。複数の事件で中心的な役割を継続した点が、量刑を考えるうえで重要な位置を占めた。
謝罪や共犯者の無期懲役も考慮されたが、死刑判断は変わらなかった
最高裁は、倉吉に不利な事情だけを列挙したわけではない。倉吉が被害者らに対する謝罪の念を示していたことや、強盗殺人の共犯者が無期懲役となっていることを、倉吉のために酌むべき事情として明示的に検討した。
それでも、強盗殺人の計画を立てて殺害を指示したこと、一連の拳銃事件を主導したこと、複数の生命・身体を危険にさらしたことを合わせれば刑事責任は重大だと結論づけた。共犯者との量刑差についても、役割の違いを踏まえれば死刑を維持できると判断された。
2人死亡だけでなく、一連の拳銃事件を通した主導性が量刑を決めた
最高裁の量刑判断では、2人の生命が奪われた結果に加え、金銭目的で被害者を選び、拘束・殺害・遺体の隠匿まで計画した経緯が重視された。加えて、前後の強盗事件で拳銃を用い、パチンコ店従業員3人を負傷させ、警察官にも発砲した事実があった。
このため裁判は、単独の強盗殺人だけを切り離して刑を判断したのではなく、倉吉が複数の事件で中心的な役割を担い、拳銃を使った犯行を繰り返した全体像を踏まえて死刑を維持した。
参考資料・出典
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