福岡県篠栗町5歳児餓死事件|碇翔士郎ちゃんの死亡と母親・赤堀恵美子の実刑確定

公開日 2026年6月21日
最終更新 2026年8月28日

事件ステータス

発生年月日
2020年
都道府県
福岡県
事件分類
強盗・監禁・暴行事件 / 詐欺
最終刑・処分
有期刑

2020年4月18日、福岡県糟屋郡篠栗町の住宅で、碇翔士郎ちゃん(当時5歳)が重度の低栄養状態で死亡した。母親の碇利恵は、知人の赤堀恵美子と共謀して十分な食事を与えず餓死させたとして保護責任者遺棄致死罪に問われた。赤堀はさらに、利恵から調査費用などの名目で約200万円をだまし取るなどした詐欺・窃盗の罪にも問われた。

裁判で明らかになったのは、単純に「母親が食事を与えなかった」という一場面だけではない。赤堀が夫の浮気や架空の関係者をめぐる話を重ね、利恵を家族や周囲から孤立させ、金銭と生活全般へ強い影響を及ぼしていた。福岡地裁はこの支配を認定しながら、母親には子どもを保護する責任が残っていたとして利恵に懲役5年、赤堀には懲役15年を言い渡した。両判決はその後確定した。

事件名福岡県篠栗町5歳児餓死事件
死亡2020年4月18日
場所福岡県糟屋郡篠栗町
被害者碇翔士郎ちゃん(当時5歳)
母親碇利恵
知人赤堀恵美子
利恵の判決懲役5年、2022年11月確定
赤堀の判決懲役15年、2023年3月確定
主な罪名保護責任者遺棄致死、赤堀は詐欺・窃盗も

幼稚園を通じた知人関係から生活全般の支配へ

利恵と赤堀は、子ども同士が通う幼稚園を通じて知り合った。福岡TNCの公判報道によれば、関係が始まったのは事件の数年前で、当初は子育てを通じた知人だった。ところが次第に、赤堀が利恵の家庭内の判断へ深く入り込む関係へ変わっていった。

赤堀は利恵の夫に女性関係がある、調査や裁判のために費用が必要だなどと説明し、利恵に不安を抱かせた。利恵は赤堀の話を信じ、夫や周囲の人との関係を弱めていった。裁判所は、赤堀による数々の虚偽によって利恵が経済的に搾取され、心理的にも支配されたと認定した。

支配は一度の脅迫で成立したものではない。日常的な連絡、金銭の要求、家族関係に関する虚偽の説明が積み重なり、利恵が自分で情報を確かめたり別の人へ相談したりする範囲が狭まっていった。

調査費などの名目で約200万円をだまし取る

赤堀は、夫の浮気調査や周辺への対応に費用が必要だとする虚偽の説明を重ね、利恵から金銭を受け取った。赤堀の刑事裁判では、こうした金銭の一部について詐欺罪が認定され、被害額は約200万円とされた。

家計から赤堀側へ資金が流れる一方、碇家では食費が削られていった。2019年8月ごろから子どもたちの食事量や回数が減らされ、2020年3月ごろには翔士郎ちゃんが重度の低栄養状態に陥ったとされた。

赤堀は利恵一家と同居していたわけではない。それでも裁判所は、具体的な指示と金銭・生活管理を通じて、利恵の生活全般を実質的に支配していたと認定した。現場に常時いなくても、利恵を介して食事制限を継続させた関与が共犯として評価された。

2019年ごろから子どもたちの食事が減る

起訴内容や公判報道によると、2019年8月ごろから翔士郎ちゃんら子どもたちの食事量や回数が制限されるようになった。家庭内の食事を自由に決めるのではなく、赤堀の指示を意識して利恵が食事を減らす状態が続いた。

5歳の翔士郎ちゃんは成長期にあり、十分な栄養を継続的に必要としていた。しかし食事制限が長期化し、体は著しく衰弱した。2020年3月ごろには重度の低栄養状態に陥り、生命の危険がある状態だったとされた。

食事制限は長期に及び、5歳の翔士郎ちゃんに必要な栄養が継続して与えられない状態となった。その結果、重度の低栄養状態から死亡に至ったとして、利恵と赤堀には保護責任者遺棄致死の共犯責任が問われた。

2020年4月18日、翔士郎ちゃんが餓死

翔士郎ちゃんは2020年4月18日に死亡した。死因は餓死とされ、長期間にわたる栄養不足が明らかになった。警察は家庭内の食事状況だけでなく、利恵と赤堀の通信、金銭の流れ、家族関係を調べ、死亡までの支配構造を捜査した。

子どもの衰弱を把握しながら、医療につなげず十分な食事も与えなかったことが刑事責任の中心となった。利恵が赤堀から強く支配されていた事実は、責任を全面的に失わせる事情とはされず、量刑上どこまで考慮するかが争われた。

一方の赤堀については、翔士郎ちゃんの保護者ではないため、母親と同じ立場の保護責任だけを直接問う構造ではなかった。利恵を支配して食事制限を実行させ、死亡結果へ関与した共犯としての責任が審理された。

母親・碇利恵は起訴内容を認めた

2022年6月に始まった利恵の裁判員裁判で、利恵は起訴内容を争わなかった。争点となったのは、赤堀からの心理的支配が利恵の判断にどれほど影響し、それを量刑でどこまで考慮すべきかだった。

検察側は懲役10年を求刑し、子どもを守る行動を放棄した責任は重いと主張した。弁護側は、赤堀の支配によって行動選択の幅が狭まっていたとして、執行猶予付き判決を求めた。

福岡地裁は2022年6月17日、利恵に懲役5年を言い渡した。判決は、利恵に「被害者としての側面」があることを認めた一方、母親として翔士郎ちゃんに食事を与え、必要な保護をする責任まで失われていたわけではないと評価した。

福岡高裁が母親の控訴を棄却、懲役5年確定

利恵側は量刑が重すぎるとして控訴した。2022年11月9日、福岡高裁は一審の懲役5年を支持し、控訴を棄却した。高裁は赤堀による支配の影響を一審が十分に考慮しているとして、量刑が不当に重いとはいえないと判断した。

弁護側は上告せず、上告期限の11月24日までに手続が取られなかったため、懲役5年が確定した。利恵の刑事裁判は、赤堀の支配を受けた事情を認めながらも、保護者としての責任を免れないという形で結論が確定した。

赤堀恵美子は全面無罪を主張

赤堀の裁判員裁判は2022年8月29日に始まった。赤堀は、食事制限の指示も金銭をだまし取ったことも否定し、起訴内容を全面的に争った。利恵の裁判とは異なり、赤堀の支配そのものがあったか、共犯として餓死へ関与したかが正面から争われた。

公判では利恵本人も証言し、双方の主張は対立した。検察側は、赤堀が虚偽の話を使って利恵を家族や公的機関から遠ざけ、経済面と生活面を支配したと主張した。赤堀側は、利恵の家庭に対する指示や詐欺を否定した。

福岡地裁は通信や金銭関係などを検討し、赤堀が利恵の生活全般を実質的に支配していたと認定した。単なる友人同士の助言ではなく、虚偽を重ねて判断を縛り、食事制限を継続させる関係だったと評価された。

赤堀に求刑どおり懲役15年

2022年9月21日、福岡地裁は赤堀に懲役15年を言い渡した。検察側の求刑どおりだった。判決は、悪質な手口で利恵を支配し、翔士郎ちゃんへの食事制限を指示した中心的な関与を重く評価した。

赤堀には保護責任者遺棄致死だけでなく、利恵から金銭をだまし取った詐欺、窃盗も認定された。子どもの死亡と経済的搾取が別々に起きたのではなく、家族を孤立させ、金銭と食事を同時に管理する支配関係の中で進行した事件だった。

2023年3月、赤堀の懲役15年も確定

赤堀は一審判決を不服として控訴し、控訴審でも無罪を主張した。2023年3月9日、福岡高裁は一審判決に不合理な点はないとして控訴を棄却した。

弁護側は上告するか検討するとしていたが、期限の3月23日までに上告しなかった。これにより赤堀の懲役15年も確定し、翔士郎ちゃんの死亡をめぐる二人の刑事裁判は終結した。

確定した二つの判決は、利恵を一方的な加害者、赤堀を単なる助言者として分けなかった。利恵には支配を受けた被害者的側面があったが、母親としての保護責任を負う。赤堀は保護者ではないが、生活を支配し、共犯として餓死へ関与した。この二つの責任を分けて評価した点が事件の司法判断の中心にある。

心理的・経済的支配と5歳児の餓死

翔士郎ちゃんは長期間十分な食事を与えられず、重度の低栄養状態のまま5歳で死亡した。刑事裁判は、その死亡結果に加え、赤堀が虚偽の説明と金銭要求を重ね、利恵を心理的・経済的に支配していた過程を認定した。

利恵は赤堀の支配を受けて家族や周囲との関係を弱め、生活上の判断を大きく左右されていた。一方で裁判所は、母親として翔士郎ちゃんへ食事と必要な保護を与える責任は残っていたと判断した。赤堀については、保護者ではなくても、支配を通じて食事制限を継続させた共犯として責任を認定した。

2026年8月時点で、利恵の懲役5年と赤堀の懲役15年はいずれも確定している。二つの確定判決は、同じ死亡結果について、母親としての保護責任と、支配を通じて犯行を進めた共犯者としての責任をそれぞれ区別して評価した。

参考資料・出典

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