頂き女子りりちゃん事件|恋愛感情を利用した約1億5500万円詐取と実刑確定

公開日 2026年6月24日
最終更新 2026年8月14日

2021年から2023年にかけて、「頂き女子りりちゃん」を名乗った渡邊真衣は、恋愛感情を抱いた複数の男性へ生活上の窮地や借金を装い、合計約1億5500万円をだまし取った。さらに、自身の接触方法や金を受け取る会話を「マニュアル」として販売し、購入者の詐欺を助けた。

捜査は、渡邊が他人へ詐欺の方法を教えた疑いから進み、本人による巨額詐取、所得を申告しなかった脱税へ拡大した。被害金の多くはホストクラブで使われ、受け取った側のホストも、詐欺による金と知りながら受領したとして起訴された。

名古屋地裁は2024年4月、懲役9年、罰金800万円を言い渡した。名古屋高裁は被害弁償の事情などを考慮し、同年9月に懲役8年6月へ減刑した。最高裁は2025年1月に上告を退け、懲役8年6月、罰金800万円が確定している。

被告渡邊真衣
主な犯行期間2021年~2023年
被害男性3人から合計約1億5500万円
関連犯罪詐欺幇助、所得税法違反
確定判決懲役8年6月・罰金800万円

「頂き女子」と呼んだ金銭獲得の方法

渡邊は、男性から好意を引き出し、恋愛関係にあると思わせたうえで多額の金を受け取る行為を、自ら「頂き」と呼んでいた。SNSや接客の場で相手の性格、収入、孤独感を見極め、連絡頻度や言葉遣いを調整しながら信頼関係を作った。

単に金銭を無心するのではなく、家族問題、借金、生活費、風俗店を辞めるための費用など、相手が助けなければならないと感じる事情を組み立てた。返済や将来の交際を期待させる説明も加え、被害者は一度の送金ではなく、複数回にわたって金を渡した。

相手が恋愛感情を持ったこと自体は犯罪ではない。詐欺罪で問題となったのは、金を出させる目的で存在しない窮状や返済意思を示し、相手を誤信させた点である。被害者ごとに虚偽の設定を変えながら、多額の金銭を移転させたことが起訴事実となった。

男性3人から約1億5500万円を受領

起訴された本人の詐欺では、渡邊は複数の男性から合計約1億5500万円をだまし取ったとされた。被害額は一人ごとに数千万円規模へ達し、長期間の連絡と送金が重ねられていた。被害者には生活資金や貯蓄を失った人もいた。

渡邊は相手に合わせて、困っている理由、必要な金額、返済の見込みを説明した。金を受け取った後も関係を維持し、新たな問題が起きたように装って追加の支払いを求めた。被害者が不審に思った際には、感情的な言葉や将来への期待でつなぎ止めた。

恋愛関係の中で金銭が渡される事案は、贈与、貸付、詐欺の境界が争われることがある。本件では、捜査機関がメッセージ、送金記録、説明内容を照合し、最初から金を得るための虚偽だったと立証した。渡邊も公判で主要な起訴事実を認めた。

手口を文章化した販売用マニュアル

渡邊は自らの方法を文章へまとめ、SNSを通じて有料販売した。マニュアルには、対象とする男性の見分け方、相手の承認欲求への接し方、信頼を得る会話、金銭を求める理由の作り方、送金後の対応などが記されていたとされる。

購入者には個別の相談にも応じ、相手へ送る文面や話の進め方を助言した。実際に購入者が男性から金をだまし取った事件が発生し、渡邊はその詐欺を容易にしたとして詐欺幇助罪に問われた。知識を一般的に紹介したのではなく、具体的な犯行を支援したことが問題となった。

マニュアルの拡散により、同じような虚偽説明を使う被害が増える危険があった。渡邊が成功例として得た金額や体験を示したことは、購入者に手口の有効性を信じさせた。本人の詐欺と他人の詐欺への加担が一つの裁判で扱われた点が、本件の特徴である。

ホストクラブへ流れた被害金

渡邊が男性から得た金の多くは、名古屋市のホストクラブで使われた。特定のホストへ高額な料金を支払い、売上を増やすためにさらに金を必要とする循環が生じていた。被害者から受け取った金が生活再建や借金返済へ使われるとの説明は、実際の支出と一致しなかった。

担当ホストらは、渡邊が男性から金を得る方法を知り、詐欺による金である可能性を認識しながら受け取ったとして捜査対象となった。裁判では、ホスト側の認識の程度、店での会話、支払い状況が検討された。単に客から代金を受け取っただけではなく、犯罪収益と知っていたかが争点となった

渡邊の犯行をホストクラブだけが生んだと説明することはできないが、高額な支出を続ける必要が詐欺の反復と被害拡大へ影響した。本人は公判でホストへの依存や金銭感覚について語った一方、裁判所は被害者を計画的に欺いた責任を重く見た。

逮捕から詐欺・脱税の立件へ

2023年、愛知県警は渡邊を詐欺幇助の疑いで逮捕した。捜査の過程で、本人が男性へ虚偽を伝えて巨額の金を受け取った事実が判明し、詐欺容疑で再逮捕・起訴された。スマートフォンの通信、振込記録、マニュアルの販売履歴が犯行の全体像を示した。

さらに、得た所得を適正に申告せず、所得税を免れたとして所得税法違反でも起訴された。犯罪で得た金であっても税法上の所得となり得る。詐欺被害の回復とは別に、申告義務を免れた行為が罰金刑の対象となった。

一連の起訴により、本人が直接だまし取った行為、他人の詐欺を助けた行為、犯罪収益を申告しなかった行為が併合して審理された。被害総額と犯行期間だけでなく、手口を広めた社会的影響も量刑判断に含まれた。

名古屋地裁が言い渡した懲役9年

2024年4月、名古屋地裁は渡邊に懲役9年、罰金800万円を言い渡した。裁判所は、被害者の恋愛感情や好意を利用し、作り上げた虚偽を重ねて多額の金を得た点を悪質と評価した。マニュアル販売によって他人の詐欺を助けたことも軽視できないとした。

弁護側は、渡邊の生育歴、ホストへの依存、被害弁償の意向、反省などを主張した。これらは背景として考慮されたものの、被害者が受けた経済的・精神的影響は大きく、受け取った金の多くが消費されていたため、長期の実刑が相当と判断された。

所得税法違反については罰金800万円が併科された。詐欺事件では被害金の返還が重視されるが、判決時点で十分な回復は行われていなかった。地裁判決後、渡邊と検察側の双方が控訴し、量刑は名古屋高裁で改めて審理された。

被害者ごとに作られた虚偽の事情

渡邊は、生活費、家族問題、借金、将来のための資金など、相手が支援を拒みにくい事情を組み合わせて金を求めた。単発の嘘ではなく、日常的な連絡と好意を示す言葉を重ね、交際や将来への期待を維持したことが詐欺の成立に関わった。

被害者は自発的に送金したように見えても、判断の前提となる事情が意図的に作られていた。恋愛関係の金銭トラブルすべてが犯罪になるわけではないが、虚偽を用いて財産を交付させる意思が認められれば詐欺罪が成立する。

被害額の大きさだけでなく、相手の性格や資産状況を把握し、支払える限界まで要求を続けた過程が審理された。被害者の中には生活や仕事へ影響を受けた人もおり、金銭返還だけでは回復しない損失が残った。

被害金の多くはホストクラブで使われたとされ、店側や担当ホストが金の由来をどこまで認識していたかも捜査された。受け取った金が犯罪収益だと知っていたかは個別の証拠で判断され、単に高額な売上があったことだけで共犯にはならない。

渡邊は所得を申告せず、約4000万円の所得税を免れたとして脱税も立件された。詐取した金でも所得税法上の課税対象となり得るため、犯罪収益を得たことと税を納めなかったことは別の犯罪として審理された。

判決確定後も、被害者が損害の全額を回収できたとの公表はない。刑務所で服役することと民事上の返還義務は別であり、資産が失われていれば被害回復は長期化する。

マニュアル販売が広げた詐欺被害

渡邊は自らの方法を『マニュアル』として文章化し、購入者へ相手の選び方、信頼を得る会話、金を求める理由の作り方などを教えた。これは体験談の販売にとどまらず、別の詐欺を容易にする具体的な助言として問題となった。

購入者が実際に男性から金をだまし取った事件では、渡邊にも詐欺幇助の責任が問われた。幇助罪は実行行為を直接行わなくても、犯罪を容易にすると知りながら方法や道具を提供した場合に成立し得る。

マニュアルがSNSで拡散されたことで、『頂き女子』という言葉だけが娯楽的に消費された。しかし裁判で扱われたのは、被害者の感情を操作する仕組みが再利用可能な形で販売され、実際の財産被害へつながった点だった。

SNS上では被告の言葉遣いや外見が注目され、被害者を揶揄する投稿も広がった。しかし、だまされた側の孤独や恋愛経験を責めることは、詐欺の責任を被害者へ移す。裁判が認定したのは、渡邊が弱みと好意を把握して虚偽を重ねた行為である。

マニュアル購入者やホスト側の事件は、それぞれ別の被告と起訴事実を持つ。渡邊の判決だけを根拠に、関係したすべての人物が同じ罪で有罪になったと書くことはできない。

確定刑は懲役と罰金の双方で構成される。

控訴審の減刑と2025年の確定

2024年9月、名古屋高裁は一審の懲役9年を破棄し、懲役8年6月、罰金800万円を言い渡した。控訴審までに一部の被害弁償が進んだことなどを新たな事情として考慮し、刑期を6か月短縮した。犯行の悪質性や被害額に関する基本評価は維持された。

渡邊側は上告したが、最高裁は2025年1月14日付で上告を退ける決定をした。これにより懲役8年6月、罰金800万円の判決が確定した。判決確定後は、刑の執行と被害回復が別々に続くことになる。

本件は「頂き女子」という呼称で広く知られたが、実際に審理されたのは、恋愛感情を意図的に利用した複数の詐欺と、その方法を他人へ教えて具体的な被害を生じさせた行為である。2026年8月時点で、渡邊は確定した実刑に服する立場にある。

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