頂き女子りりちゃん事件|約1億5580万円詐取、マニュアル販売と脱税で懲役8年6月確定

公開日 2026年6月24日
最終更新 2026年8月28日

事件ステータス

発生年月日
2021年
都道府県
愛知県
事件分類
マッチングアプリ・SNS関連 / 詐欺
最終刑・処分
有期刑

「頂き女子りりちゃん」を名乗っていた渡邊真衣は、2021年から2023年にかけ、マッチングアプリなどで知り合った男性3人に好意があるように装い、架空の借金や家賃滞納などを理由に現金を繰り返し求め、合計約1億5580万円をだまし取った。

さらに、自ら使っていた詐欺の方法を文章化して販売し、その購入者が男性2人から計1065万円をだまし取る行為を助けたほか、詐取金を所得として申告せず約4034万円の所得税を免れた。名古屋地裁は2024年4月22日、懲役9年・罰金800万円を言い渡し、控訴審で懲役8年6月に減刑。2025年1月、最高裁が上告を退け、懲役8年6月・罰金800万円が確定した。

被告渡邊真衣
主な犯行期間2021年3月~2023年8月
本人の詐欺被害男性3人・計約1億5580万円
詐欺幇助男性2人・計1065万円の詐取を幇助
脱税所得税約4034万円
一審懲役9年・罰金800万円
確定刑懲役8年6月・罰金800万円

男性の好意を利用し、虚偽の事情を重ねる

名古屋地裁判決によると、渡邊は男性が自分に恋愛感情を抱いていることに乗じ、実際には存在しない経済的な窮状を伝えて金を交付させた。単に「お金が必要」と求めるのではなく、相手ごとに具体的な事情を作り、支払えば関係が続く、生活が立て直せると信じさせる方法を取っていた。

裁判で認定された虚偽には、親と縁を切るため800万円の手切金が必要だという話、知人への多額の借金を返せば同居できるという話、携帯電話料金を滞納しているという話、家賃滞納で退去させられるという話などが含まれた。虚偽の内容は一つではなく、相手の反応に合わせて追加されていった。

男性1人から数千万円単位の送金

被害者のうち50歳の男性には、親との縁切り費用として計800万円を支払わせた後、架空の借金2714万円があると説明し、2680万円と36万円を振り込ませた。さらに携帯電話料金や別の借金を理由に、少額から数百万円まで追加の送金を重ねさせている。

別の男性には、家賃の滞納を理由に金を借りる形を取りながら、実際には返済する意思も能力もなく、受け取った金を遊興費などへ使うつもりだったと認定された。裁判所は、被害者の中には長年の貯蓄を取り崩し、生命保険を解約するなどして資金を工面し、ほぼ全財産を失った人もいたと指摘している。

被害総額は約1億5580万円

本人の詐欺として起訴されたのは、男性3人から合計約1億5580万円をだまし取った行為だった。金銭のやり取りは一度で終わらず、同じ相手に対して虚偽の理由を変えながら送金を繰り返させる形で被害が拡大した。

裁判所は、男性側の恋愛感情や信頼を形成したうえで、その感情を金銭交付へ結び付けた点を重く見た。被害者が自ら振り込んだという外形だけでなく、その判断の前提となる事情が意図的な嘘によって作られていたことが詐欺罪の中心となった。

約1億1704万円を送金した男性もいた

判決の「I」とされた男性に対する詐欺は、2021年3月から2023年8月まで長期間続いた。最初は「家賃を滞納して退去させられる」として65万円を振り込ませ、その後も知人への借金、事故の賠償、カードローン、親との縁切り費用、架空のアパレル会社の借金返済など、理由を次々に変えて送金を求めた。

この男性から認定された被害は、1110万円、2120万円、4028万円、1500万円、2826万円など大口の送金を含み、合計約1億1704万円に達する。最長の区間では37回にわたり計2826万円を振り込ませており、単発の虚偽ではなく、長期間にわたって同じ相手の信頼を維持しながら金銭交付を反復させた構造が判決から分かる。

手口を「マニュアル」として販売

渡邊は、自分が男性から金を得る方法を文章化し、インターネット上で販売した。名古屋地裁判決には、「1ヶ月1000万頂く」とうたった文書データと「参考書」と題したデータを、購入希望者へ合計2万8000円で販売したことが記載されている。

内容は、男性に好意を抱かせた後、家賃滞納などの経済的苦境を装って現金を交付させる方法だった。渡邊は文書を売るだけでなく、購入者に対しインターネット上の通信機能を使って男性の籠絡方法を個別に助言した。

購入者による1065万円の詐欺を幇助

マニュアル購入者の女性は、偽名を使って知り合った男性2人から、2023年3月から5月にかけて合計1065万円をだまし取った。渡邊は、その女性が詐欺に使うことを知りながら文書を販売し、さらに助言を加えたとして詐欺幇助罪に問われた。

この部分で渡邊自身が男性2人から直接金を受け取ったわけではない。裁判所は、具体的な詐欺に利用されると知りながら手法を提供し、実行を容易にした行為として幇助責任を認定した。本人による巨額詐欺と、他人の詐欺への加担が同じ裁判で扱われた点が事件の大きな特徴となった。

詐取金の多くをホストクラブで費消

渡邊は男性から得た多額の金を、ホストクラブでの遊興費などに使っていた。地裁判決は、詐取金を被害回復に充てることなく費消していたことを量刑上不利な事情として挙げた。

公判では、渡邊がホストクラブへ通うようになった経緯や、特定のホストの売上に貢献することを目指して金を集めていた状況も語られた。裁判所は生育歴などを考慮しつつも、意中のホストの売上に貢献する資金を得るという動機は身勝手であり、被害者へ転嫁できないと評価した。

犯罪収益を申告せず、約4034万円を脱税

渡邊は、男性からだまし取った金を所得として申告せず、2021年分と2022年分の所得税を免れたとして所得税法違反にも問われた。判決で認定されたほ脱税額は、2021年分約2806万円、2022年分約1227万円、合計約4034万円だった。

刑事裁判では、詐欺で得た金だから申告しなくてよいという扱いにはならない。裁判所は、金銭を得ていることや申告の必要性を認識しながら税務申告を行わなかったと認定し、詐欺・詐欺幇助とは別に所得税法違反の刑事責任を認めた。

犯罪で得た収益も所得税の対象と判断

所得税法違反について、弁護側は、詐欺で得た金は民事上被害者へ返還すべき不当利得であり、税法上の所得に当たるのか疑問があると指摘した。しかし名古屋地裁は、現実に所得が生じている以上、その原因となった行為が違法かどうかによって課税が妨げられるものではないとして、この主張を退けた。

そのうえで、2021年分のほ脱税額約2806万円と2022年分約1227万円を認定した。詐欺で得た金銭をめぐる刑事責任と、その収入を申告しなかった所得税法上の責任が、それぞれ別の犯罪として一つの裁判で評価されたことになる。

懲役13年・罰金1200万円の求刑

検察側は、3人から約1億5580万円を詐取した被害規模に加え、手口をマニュアル化して販売し、別の詐欺を助長した社会的影響、約4034万円の脱税を重視し、懲役13年・罰金1200万円を求刑した。

弁護側は、渡邊が起訴事実を認めていることや謝罪・賠償の意思、生育環境、ホストへの依存、詐欺幇助事件で本犯者と被害者の間に示談が成立したことなどを挙げ、刑を軽くするよう求めた。

一審が重く見た「被害回復のないままの費消」

名古屋地裁は量刑理由で、被害者の中には長年の貯蓄を取り崩しただけでなく、生命保険を解約してまで金を工面し、ほぼ全財産を失った人がいたと指摘した。その一方で、渡邊は詐取金をホストクラブでの遊興費などに使い、一審判決時点では本人から実質的な被害回復措置が講じられていないことを不利な事情として挙げた。

一方で裁判所は、渡邊が起訴事実を認め、謝罪と賠償の意思を示したこと、詐欺幇助事件では実行者と被害者の間に示談が成立していたことも考慮した。また、約1億1000万円余が詐取された男性への関係では、金の使途先となったホストが1800万円弱を返還する意向を示していたことも量刑事情の一つとされた。

名古屋地裁は懲役9年・罰金800万円

2024年4月22日、名古屋地裁は渡邊に懲役9年・罰金800万円を言い渡した。判決は、被害者の男性心理を利用した詐欺を狡猾と評価し、被害額が非常に多額で、ほぼ全財産を失った被害者もいることを重視した。

さらに、手法をマニュアル化して販売し、購入者から求められて具体的な助言まで行った点について、主体的に同種犯罪を助長したと指摘した。一方、事実を認めて謝罪・賠償の意思を示していること、詐欺幇助部分で示談が成立したことなども量刑事情として考慮された。

控訴審で6か月減刑

渡邊側と検察側はいずれも一審判決を不服として控訴した。名古屋高裁は2024年9月30日、一審判決を破棄し、懲役8年6月・罰金800万円を言い渡した。刑期は6か月短くなったが、罰金額は維持された。

控訴審では、一審後に一部の被害弁償が進んだ事情などが考慮された。犯行そのものの悪質性や被害額に関する基本的な評価は維持され、長期の実刑が必要とする判断は変わらなかった。

最高裁が上告を退け、実刑確定

渡邊側は控訴審判決を不服として上告した。最高裁第三小法廷は2025年1月14日付で上告を退ける決定をし、懲役8年6月・罰金800万円とした名古屋高裁判決が確定した。

事件は「頂き女子」という言葉が独り歩きした一方、確定判決が扱ったのは、恋愛感情を利用して3人から約1億5580万円を詐取したこと、詐欺手法を販売・助言して別の詐欺を幇助したこと、そして約4034万円の所得税を免れたことだった。

参考資料・出典

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