2025年6月、兵庫県西宮市と大阪府内の集合住宅で、帰宅した面識のない女性が相次いで襲われた。いずれも住宅への侵入と刃物による脅迫を伴い、女性は性的被害と負傷を受けた。捜査と裁判で中心人物とされたのが山下高志で、インターネット掲示板を通じて実行役を募り、現場ごとに侵入方法や役割を決めていた。
山下と行動した相馬崇司、渡辺哲理こと李博倫は別々に裁判を受け、相馬は拘禁刑17年、李は拘禁刑12年が確定した。山下には2026年7月8日、神戸地裁が求刑25年に対して拘禁刑22年を言い渡した。8月24日の公判報道では、相馬と李が判決確定後の受刑者と明記される一方、山下は一審判決を受けた被告として記載されている。
| 事件時期 | 2025年6月5日、6月17日深夜〜18日未明 |
| 主な現場 | 兵庫県西宮市、大阪府内の集合住宅 |
| 被害 | 20代女性2人が性的被害・負傷。大阪事件では同居男性も拘束・負傷 |
| 被告人 | 山下高志 |
| 共犯者 | 相馬崇司、渡辺哲理こと李博倫 |
| 山下一審 | 2026年7月8日、神戸地裁・拘禁刑22年 |
| 相馬 | 拘禁刑17年・確定 |
| 李 | 拘禁刑12年・確定 |
掲示板で実行役を募り、面識のない女性を標的にした
山下はアダルトサイトなどの掲示板に、女性を襲う行為へ加わる人物を求める書き込みをしていた。応募した相馬や李とは以前からの友人関係ではなく、犯行のためにネット上でつながった関係だった。捜査段階では、3人が互いに本名を明かさず、アルファベット1文字などの呼び名を使って連絡していたことも報じられている。
裁判で示された経過では、山下は女性を帰宅時に狙う方法や集合住宅への入り方を説明し、刃物、タオル、粘着テープ、結束バンド、アイマスクなどを入れたバッグを用意した。大阪事件では李がエレベーター側、相馬が非常階段側、山下が建物外から指示する役割に分かれた。
6月5日、西宮市で最初の襲撃
最初の事件は2025年6月5日夜、西宮市の集合住宅で起きた。山下と相馬は帰宅する20代女性を標的とし、女性が自宅へ入ろうとしたところで相馬が背後から襲い、刃物のような物を突きつけて室内へ押し込んだ。女性は抵抗して逃げ、その過程で手などにけがを負った。
山下は公判で、女性へ声をかける目的だったのに相馬が独断で襲ったという趣旨の説明をした。しかし判決は、山下が掲示板で相馬を募り、犯行方法を伝え、必要な道具も準備した経過を重視した。西宮事件は一部が目的どおりに進まなかったが、その約2週間後、山下は別の実行役を加えて大阪で再び計画を実行した。
大阪事件の前日、李との最初の試みは失敗
李はインターネット上で山下の募集を見て連絡し、大阪事件の前日に初めて山下と会った。公判での李の証言によると、山下から、一人で帰宅する女性を尾行し、住民を装って集合住宅へ入り、エレベーターを途中階で降りて非常階段から先回りする手順を説明された。
李はその日のうちに対象となる女性を見つけて建物へ入ったが、非常階段の位置を把握できず実行に至らなかった。翌日も実行する方針を示した山下は、西宮事件で一緒に行動した相馬を呼び出した。相馬と李は初対面だったが、山下が2人を引き合わせ、建物の構造を調べ直して役割を割り振った。
6月17日深夜、3人で大阪の集合住宅へ
2025年6月17日深夜から18日未明、李は住民に続いてオートロック内へ入り、帰宅する女性を待った。相馬は非常階段側で待機し、山下は建物外から連絡を取った。女性が玄関前へ着くと相馬と李が襲い、室内へ押し込んで手首を粘着テープで拘束し、刃物のような物で脅したうえで性的暴行を加えた。女性は約10日間の治療を要するけがを負った。
犯行の一部はスマートフォンで撮影された。女性には複数枚の「同意書」を書かせ、身分証を撮影し、勤務先や実家などの情報も言わせた。実家の情報を画面で確認させるなどして、被害を申告すれば本人や家族へ危害が及ぶと思わせる口止めが続いた。
帰宅した同居男性も拘束し、山下は電話で指示
犯行の途中で女性と同居する男性が帰宅した。相馬と李は男性を押し倒し、刃物を示して手足を縛った。山下は先に部屋を出たが、その後も電話を通じて男性を脅し、身分証を撮影させるなどの指示を出したと認定された。男性も約10日間の治療を要するけがを負った。
相馬と李は公判で、男性が帰宅した際にも山下から襲うよう指示されたことや、撤収の指示を受けたことを証言した。山下は、女性への行為は一部しかしていない、男性には何もしていないなどと主張したが、共犯者2人の供述が一致し、犯行映像とも合わないとして判決では採用されなかった。
映像と証言が示した主導性、被害は事件後も続く
大阪事件の映像は、被害者のプライバシーに配慮した措置の下で証拠として調べられた。被害女性は目隠しをされていたが、山下がほかの2人へ指示する声が記憶に残っていたと供述した。現場で誰が直接何をしたかだけでなく、誰が全体を動かしていたかを判断する材料になった。
被害女性は公判時点でも事件を突然思い出して感情が崩れ、一人で外出することが難しい状態が続いていると証言された。同居男性も、事件後の日常が大きく変わったことを法廷で述べた。大阪地裁が李の判決で、住所などを言わせて脅したことで外出困難になるほどの影響を与えた点を指摘したように、被害は身体のけがにとどまらなかった。
防犯カメラなどから3人へ捜査が進む
大阪府警は集合住宅の防犯カメラ映像などを追い、山下、相馬、李の関係を調べた。2025年6月末に山下と相馬が逮捕され、その後、李も逮捕された。李が先に建物内へ入り女性を探していたことや、3人がSNSなどを通じて知り合っていたことも捜査で明らかになった。
大阪事件の捜査から西宮事件とのつながりも浮上し、山下と相馬は同年9月、西宮で起きた事件でも再逮捕された。離れた地域の2件は、被害者と加害者に事前の面識がなく、帰宅直後を狙い、住宅へ押し込むという共通した方法が用いられていた。
李に12年、相馬に17年――共犯者の判決が先に確定
李は大阪事件について起訴され、大阪地裁は2026年3月9日、拘禁刑12年を言い渡した。判決は、刃物で脅して女性を拘束したことに加え、勤務先や実家の住所を言わせ、事件後の生活にも深刻な影響を残した点を重視した。2026年8月の報道では李は受刑者とされ、拘禁刑12年の確定が明記されている。
相馬は大阪事件に加え、西宮事件での関与も審理され、起訴内容を認めた。大阪地裁は同年4月24日、求刑18年に対して拘禁刑17年を言い渡した。判決は、女性を直接襲って拘束し、通報を妨げる脅迫までした一連の行為を重く評価した。相馬についても、その後の公判報道で判決確定が明記された。
共犯者2人の証言と映像が山下の説明を崩した
山下の公判では、相馬と李がそれぞれ法廷で山下から受けた指示を具体的に証言した。大阪事件で同居男性が帰宅した場面についても、2人は山下の電話指示に従って男性を制圧し、身分証の撮影や口止めを進めたと述べた。同居男性自身の証言や、犯行時に記録された映像・音声も審理され、山下の関与を検討する材料となった。
神戸地裁は、共犯者の供述だけを単独で採用したのではなく、募集の経緯、事前の打ち合わせ、準備された道具、現場での連絡、映像に残った状況を照らし合わせた。山下が「相馬が勝手にやった」「自分は男性には何もしていない」と責任を限定しようとした説明は、これらの証拠と整合しないと判断された。
3人の刑期は、審理された事件と役割の違いを反映
3人に言い渡された拘禁刑は、単純に上下関係だけで決まったものではない。李は主として大阪事件への関与が審理されて12年、相馬は大阪事件に加えて西宮事件で女性を直接襲った行為も審理され17年となった。山下は2件の計画、実行役の募集、方法の指示、道具の準備まで主導したとして22年が言い渡された。
2026年3月の李、4月の相馬、7月の山下と判決時期も分かれ、一連の事件でも刑事手続は別々に進んだ。3人の刑期の違いは、それぞれがどの事件・行為で起訴され、裁判所がどの役割を認定したかに対応している。
神戸地裁が山下を主導者と認定し、拘禁刑22年
山下の裁判では、2件の事件を誰が発案し、どこまで共犯者へ指示したかが重要な争点となった。神戸地裁は、山下が掲示板で実行役を募集し、現場や方法を示し、道具を準備した経過から、犯行を主導した立場だったと認定した。
2026年7月8日、中川綾子裁判長は山下に拘禁刑22年を言い渡した。検察側の求刑は25年だった。判決は、共犯者も主体的に加担したとしつつ、山下が計画と準備を進め、失敗後も人数を増やして再実行し、現場で指示を出したため刑事責任はより重いとした。共犯者へ責任を転嫁する不合理な説明を続けたことも、反省の評価で不利に扱われた。
拘禁刑施行直後に起きた事件
日本では2025年6月1日、従来の懲役と禁錮が拘禁刑へ一本化された。2件はいずれも施行後に起きたため、3人に言い渡された自由刑は「懲役」ではなく拘禁刑と表記されている。同じ一連の事件でも、担当した行為、審理対象、主導性に応じて李12年、相馬17年、山下22年と異なる刑が言い渡された。
2026年8月時点の刑事手続
山下の拘禁刑22年は、2026年7月8日の神戸地裁判決である。8月24日に掲載された公判報道では、相馬と李にはそれぞれ「判決確定」と明記されている一方、山下は一審判決を受けた被告として記載されており、山下について控訴審判決や判決確定は示されていない。
ネット上で集まった者同士が、役割と道具を決めて面識のない女性の生活圏へ入り込んだうえ、一度目的を遂げられなかった後も別の人物を加えて再実行した。2件の裁判経過は、現場での直接行為だけでなく、募集、計画、準備、指示といった主導行為が刑事責任の重さに直結した事例となった。
参考資料・出典
- 神戸地裁・ネット掲示板共謀性的暴行事件の判決概要(大阪事件)
- テレビ朝日「李博倫被告に拘禁刑12年」
- MBS「相馬崇司被告の初公判」
- MBS「相馬崇司被告に拘禁刑17年」
- MBS「大阪府内の集合住宅侵入事件・逮捕後の捜査」
- 読売テレビ「西宮市の事件で山下・相馬両容疑者を再逮捕」
- NEWSポストセブン「山下高志被告の判決公判と共犯者の証言」
- NEWSポストセブン「大阪事件の拘束・口止めと判決」
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