新宿タワマン刺殺事件|平澤俊乃さん殺害、和久井学被告は一審懲役15年・控訴

公開日 2026年6月14日
最終更新 2026年8月28日

事件ステータス

発生年月日
2024年
都道府県
東京都
事件分類
ストーカー事件 / 殺人事件

2024年5月8日午前3時すぎ、東京都新宿区西新宿のタワーマンション敷地内で、平澤俊乃さん(当時25歳)が果物ナイフで繰り返し刺され、死亡した。現場で確保された和久井学は殺人未遂の現行犯で逮捕され、その後、殺人などの罪で起訴された。

2人は平澤さんが働いていた店の客と店側の立場で知り合い、多額の金銭をめぐって関係が悪化していた。和久井は2022年に平澤さんへのつきまといをめぐりストーカー規制法違反容疑で逮捕され、接近禁止命令も受けていた。東京地裁は2025年7月14日、和久井に懲役15年を言い渡した。被告側は判決を不服として控訴した。

事件名新宿タワマン刺殺事件
発生日2024年5月8日
発生場所東京都新宿区西新宿
被害者平澤俊乃さん(25)
被告和久井学
起訴罪名殺人、銃刀法違反
一審2025年7月14日 東京地裁・懲役15年(求刑17年)
控訴被告側が2025年7月28日付で控訴
控訴審2025年11月26日 東京高裁で結審

5月8日午前3時すぎ|マンション敷地内で平澤俊乃さんを襲う

事件が起きたのは2024年5月8日午前3時すぎだった。「女性が刺されている」と110番通報を受けた警察官が現場へ到着すると、平澤さんが血を流して倒れており、近くに和久井がいた。平澤さんは病院へ搬送されたが死亡が確認された。

和久井は果物ナイフ2本を所持し、前夜からマンション付近で平澤さんが現れるのを待っていた。平澤さんが逃げると追いかけ、胸や腹などを多数回刺した。裁判では15回以上突き刺したと認定され、途中で1本のナイフが使えなくなった後も別のナイフで攻撃を続けた経過が示された。

店の客として知り合い、金銭をめぐる認識が大きく食い違う

和久井はインターネット配信を通じて平澤さんを知り、のちに平澤さんが関係する店へ通うようになった。裁判で示されたやり取りでは、和久井は結婚を期待し、所有していた車や大型バイクを売却して得た資金を含め、店で多額の支払いをした。総額は1600万円規模に達したとされた。

一方、刑事裁判で問題となったのは、この金銭関係が殺害をどこまで量刑上の背景事情として評価できるかだった。和久井側は、平澤さんの言葉を信じて結婚を期待し、経済的に追い詰められたと主張した。検察側は、2人の関係は店の売り上げにつながる客と店側の関係で、殺害の動機に酌量の余地は乏しいと主張した。

2022年、つきまといをめぐって逮捕・接近禁止命令

金銭をめぐる関係が崩れた後、和久井は平澤さんへの接触を繰り返した。2022年にはストーカー規制法違反容疑で逮捕され、釈放後には接近や連絡を禁じる命令が出された。FNNなどの報道では、平澤さん側が警察へ相談し、和久井の接近を警戒していた経過が伝えられている。

接近禁止命令はその後終了したが、和久井は平澤さんに渡した金が返ってこないとの不満を持ち続けた。事件直前には平澤さんのライブ配信を視聴し、自分について語られた内容に強い怒りを抱いたことが、2025年の公判で犯行直前の心理的経過として扱われた。

前夜から待ち伏せ|2本のナイフを持って現場へ

和久井は5月7日夜から西新宿のマンション周辺にとどまり、翌未明まで長時間待機した。偶然出会った場面で突発的に刃物を取り出したのではなく、2本の果物ナイフを持参して被害者が現れるのを待っていた。

平澤さんが現れると追跡し、助けを求めながら逃げる平澤さんへ攻撃を続けた。公判では、平澤さんが「やめて」と求めても攻撃が止まらず、最初のナイフが破損した後も次のナイフへ持ち替えた事情が、殺意の強さと犯行の執拗さを示すものとして重視された。

殺人などで起訴|犯人性ではなく量刑が中心争点に

和久井は現場で身柄を確保され、捜査段階から自分が刺したこと自体は大きく争われなかった。東京地検は2024年5月28日、殺人などの罪で和久井を起訴した。裁判員裁判でも公訴事実を認め、審理の中心は刑の重さと犯行に至る経緯の評価となった。

検察側は、被害者への執着を背景に待ち伏せして多数回刺したことから、強い殺意に基づく悪質な犯行だとして懲役17年を求刑した。弁護側は、金銭を渡して経済的に困窮した経緯や、直前のライブ配信を見て感情を爆発させた事情を挙げ、懲役11年が相当だと主張した。

東京地裁が懲役15年|金銭関係を考慮しても殺害は正当化されない

東京地裁は2025年7月14日、和久井に懲役15年を言い渡した。判決は、果物ナイフ2本で15回以上突き刺した犯行を執拗で重大なものと評価した一方、和久井が結婚を期待して多額の支払いをし、借金を抱えるまで経済的に追い詰められた経緯も量刑判断の背景として検討した。

ただし、背景事情があることと、殺人に正当な理由があることは別である。裁判所は、平澤さんが助けを求めるなかで攻撃を繰り返した結果の重大性を踏まえ、実刑は避けられないと判断した。求刑17年に対し、判決は懲役15年だった。

被告側が控訴|東京高裁では量刑不当を主張

和久井側は一審判決を不服として、2025年7月28日付で東京高裁へ控訴した。控訴審は同年11月26日に東京高裁第1刑事部で開かれ、弁護側は量刑不当を主張した。検察側は控訴を棄却すべきだと答弁し、新たな事実取調べは請求されず、その日のうちに結審した。

控訴審で争われたのも、和久井が犯行を行ったかどうかではなく、一審の懲役15年という刑が重すぎるかという点だった。事件では、過去のストーカー規制法上の対応、長時間の待ち伏せ、複数の刃物の準備、金銭関係が一つの時系列の中で審理されている。

事件を理解する鍵は、金銭トラブルと継続的な接近行動を分けて見ること

この事件は、多額の金銭をめぐる争いが大きく報じられた。しかし刑事事件としての中心は、金銭の返還請求ではなく、過去に接近禁止命令を受けた相手の住居付近で待ち伏せし、逃げる相手を刃物で多数回刺して死亡させた行為である。

裁判所は金銭関係を量刑上の背景として検討しながらも、それを殺害の免責理由とはしていない。被害者の生命を奪った結果、犯行の準備と執拗さ、被告の置かれていた事情をそれぞれ分けて評価したうえで、一審は懲役15年を選択した。

事件直前まで続いた怒りの蓄積とライブ配信

一審判決が量刑判断で取り上げたのは、和久井が長期間抱いていた金銭的不満だけではない。事件直前、和久井は平澤さんのライブ配信を視聴し、自分について語られた内容を侮辱だと受け止めた。公判で和久井は、その配信を見て怒りが強まった趣旨を述べている。

ただ、犯行は配信を見た直後に偶然出会って起きたものではなかった。和久井は刃物を2本用意して平澤さんの住居付近へ向かい、前夜から待ち続けていた。裁判所は、直前の怒りと、それ以前から続く執着や金銭への不満、現場での具体的行動を合わせて犯行経緯を評価した。

過去のストーカー規制法上の対応があった後も接点を求めた

2022年の逮捕は、事件当日の殺人とは別の過去の手続である。和久井は平澤さんへの接触をめぐりストーカー規制法違反容疑で逮捕され、その後に接近禁止命令を受けた。命令によって一定期間の接触は制限されたが、金銭を返してほしいという和久井の考え自体は残った。

事件が起きた2024年5月には、過去の命令はすでに終了していた。それでも、以前に警察が介入するほど接触が問題化していた相手の住居付近へ刃物を持って行き、長時間待ち伏せしたという経過は、犯行を単発の口論としてではなく、継続した関係悪化の末に起きた殺人として捉えるうえで重要だった。

「1600万円」の意味そのものより、殺害へ至った行動が審理された

公判では約1600万円という金額が大きく取り上げられた。和久井側は、結婚を期待して車やバイクまで売却し、平澤さん側へ多額の金を渡したと主張した。検察側は、店舗での売り上げを伴う関係であり、和久井が一方的に結婚への期待を強めた面を指摘した。

刑事裁判は、金銭返還請求の民事訴訟ではない。東京地裁が判断したのは、金銭をめぐる経緯が和久井の心理や量刑にどの程度影響するかと、実際の殺害行為に対してどの刑を科すべきかだった。多額の支払いがあったとしても、待ち伏せや多数回の刺突が許されるわけではないという区別が判決の前提にある。

ナイフが1本使えなくなっても攻撃をやめなかった

犯行態様では、凶器を2本持参していたことが重要だった。攻撃の途中で最初のナイフが壊れるなどして使えなくなった後、和久井は別のナイフを使って刺し続けた。被害者が逃げ、助けを求めても攻撃をやめなかったことから、東京地裁は強い殺意と執拗さを認定した。

犯行後に逃走して長期間行方をくらませた事件ではなく、和久井は現場で警察官に確保された。このため裁判の争点は犯人性ではなく、犯行に至る経緯をどこまで酌むか、そして殺人1件に対してどの程度の有期刑が相当かという量刑へ集中した。

一審判決後、被告側が量刑不当を理由に東京高裁へ

東京地裁判決から2週間後の2025年7月28日、和久井側は控訴した。控訴審では新たに犯行事実を否定するのではなく、一審の懲役15年が重すぎるという量刑不当が主張された。2025年11月26日の東京高裁では、新たな証拠調べの請求はなく、弁論は短時間で終了した。

一審で公訴事実を認めた事件であるため、控訴審でも焦点は刑の重さだった。過去の接近行動、金銭をめぐる双方の認識、事件直前の配信、2本の刃物を用意した待ち伏せ、多数回の刺突という事情が、量刑を考える材料として積み重ねられている。

参考資料・出典

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