2024年12月14日午後8時25分ごろ、北九州市小倉南区のマクドナルド322徳力店で、中学3年の男女2人が刃物で相次いで刺された。中島咲彩さん(当時15歳)が死亡し、一緒にいた男子生徒(当時15歳)も約1か月の治療を要する重傷を負った。2人は店で注文を待っていただけで、襲った男との面識はなかったとされる。
福岡県警は周辺の防犯カメラや100台を超えるドライブレコーダー映像をつなぐ「リレー捜査」を進め、5日後の12月19日、現場近くに住む平原政徳容疑者を男子生徒への殺人未遂容疑で逮捕した。2025年1月には中島さんへの殺人容疑で再逮捕。約8か月の鑑定留置を経て、同年9月26日に殺人、殺人未遂、銃刀法違反の罪で起訴されている。
| 発生日 | 2024年12月14日午後8時25分ごろ |
|---|---|
| 場所 | 福岡県北九州市小倉南区・マクドナルド322徳力店 |
| 被害者 | 中島咲彩さん(15歳)死亡、男子生徒(15歳)重傷 |
| 最初の逮捕 | 2024年12月19日・男子生徒への殺人未遂容疑 |
| 再逮捕 | 2025年1月9日・中島さんへの殺人容疑 |
| 被告人 | 平原政徳被告 |
| 鑑定留置 | 2025年1月以降、2回・計約8カ月 |
| 起訴 | 2025年9月26日 |
| 起訴罪名 | 殺人、殺人未遂、銃刀法違反 |
| 現在の法的状態 | 起訴された被告人。刑は確定していない |
塾帰りの2人は、店内で注文の列に並んでいた
中島さんと男子生徒は同じ中学校の3年生だった。報道によると、2人は学習塾の帰りに店へ立ち寄り、レジ付近で注文を待っていた。そこへ男が入り、ほかの客の間を進んで2人へ近づいた。
襲撃から男が店外へ出るまでの時間は十数秒ほどだったと捜査関係者が説明している。中島さんは腹部を刺されて死亡し、男子生徒も腰付近を刺された。男子生徒は後に「全く知らない人に刺された」と話しており、平原被告との間に事件前の面識は確認されていない。
男は車で現場へ来て、犯行後も車で離れた
店舗の防犯カメラなどから、男は車で現場へ来て、短時間で店内を出た後、その車で立ち去ったとみられた。FBSの後の報道では、平原容疑者の車とみられる黒いワンボックスカーが事件前に店舗周辺を複数回周回する様子も映像に残っていたとされる。
さらに捜査関係者は、車が事件前の十数分間、駐車場の店内を見通せる位置に止まっていたと説明した。事件発生直後には「通り魔的」との見方が報じられたものの、後の捜査では、店へ入る前から2人を一方的に認識し、狙っていた可能性も検討された。
5日間の「リレー捜査」で、車の移動を追った
現場で男を取り逃がした県警は、防犯カメラ映像だけでなく周辺を走行した車両のドライブレコーダーも大量に集めた。12月19日の逮捕会見で県警は、100台を超えるドラレコ映像を分析したと説明している。
一つのカメラで自宅まで追えたわけではない。ある地点の車両映像を別の地点の映像へつなぎ、移動経路を連続させる捜査によって対象車両を絞り込んだ。防犯カメラの映像を事件直後に一般公開しなかったのも、捜査対象に逃走を察知させないためだったと県警側は説明している。
容疑者が見つからない5日間、学校や繁華街の警戒が強化された
男が刃物を持ったまま逃走した可能性がある中、逮捕までの5日間は地域の警戒も続いた。福岡県警は現場周辺だけでなく、小倉駅や繁華街など人が集まる場所へ警戒範囲を広げ、通常より増員した警察官によるパトロールを実施した。
FBSによると、逮捕前日の12月18日からは警戒要員を最大250人増員し、北九州市も19日から市職員約1000人規模で登下校時の見守りを始めていた。事件そのものは店内の十数秒で起きたが、犯人像が分からないまま逃走が続いたことで、周辺の子どもや保護者の日常にも影響が広がった。
12月19日、まず男子生徒への殺人未遂容疑で逮捕した
事件から5日後の12月19日午前、県警は平原政徳容疑者を男子生徒への殺人未遂容疑で逮捕した。逮捕時43歳で、現場から近い北九州市小倉南区に住んでいた。
この段階で平原容疑者は「確かにその行為をしました」と話し、男子生徒を刺した行為自体は認めたと警察が発表した。一方、動機について詳しい供述はなく、凶器も逮捕発表の時点では特定されていなかった。中島さんの死亡については別に捜査を続ける形だった。
車と自宅から複数の刃物が見つかり、DNA型も捜査対象になった
逮捕後の捜索で、平原容疑者の自宅と車から複数の刃物が押収された。FBSは、その中に負傷した男子生徒が説明した特徴と一致する刃物があったと報じている。自宅からは、事件時の映像に映っていた人物が履いていたとみられる黄色いサンダルも押収された。
2025年1月の再逮捕時には、車から押収された血の付いた刃物から、中学生2人のものとみられるDNA型が検出されたと捜査関係者が説明した。これらは捜査段階で集められた証拠であり、刑事裁判では証拠能力や具体的な意味を含めて改めて審理される。
1月9日の再逮捕では、中島さん殺害について「認めない」と否認した
2025年1月9日、県警は中島さんを殺害した疑いで平原容疑者を再逮捕した。警察によると、再逮捕時の認否は「認めない」というものだった。また、男子生徒への事件についても、行為を認める一方で「殺すつもりはなかった」と殺意を否定していたと報じられている。
ここでも「刺した行為を認めた」「殺意を認めた」「殺人罪が成立する」は別の問題になる。殺人・殺人未遂では、実際の行為だけでなく、行為時に死亡させる意思があったと認められるかが重要な争点になるためだ。
「無差別殺傷事件」と一言で決められない捜査経過がある
事件直後、被害者と男に面識がなかったことから、警察は通り魔的な犯行の可能性を視野に入れていた。一方、2025年1月のFBS報道では、平原容疑者が店の周囲を車で回り、駐車場から店内を見ていた状況などから、捜査関係者は「無差別的ではなく、一方的な理由で2人を狙った可能性が高い」とみているとされた。
つまり、面識がなかったことと、店内にいた誰でもよかったことは同じではない。後の捜査では、平原被告が事件直前に2人を認識し、後を追うように駐車場へ入った可能性も報じられた。記事上は、初期の「通り魔的」という見方と、その後の「特定の2人を一方的に狙った可能性」を時系列で分ける必要がある。
「笑われ、ばかにされたと思った」は被告側の認識であり、被害者の行為ではない
起訴前後の捜査関係者への取材では、平原被告が「2人と目が合って笑われ、ばかにされたと思った」という趣旨の供述をしたと報じられた。2025年12月のRKB毎日放送の面会取材でも、平原被告は同様の認識を語っている。
ただし、男子生徒は平原被告を全く知らなかったと説明しており、警察も被害者側に落ち度はないと明言している。「笑われた」というのは平原被告がそう受け取ったという供述であり、2人が実際に平原被告を見て笑った、挑発したという確認事実ではない。この区別は動機を扱う際に欠かせない。
刑事責任能力を調べるため、鑑定留置は計約8カ月に及んだ
福岡地検小倉支部は2025年1月から平原容疑者を鑑定留置し、犯行時の精神状態と刑事責任能力を調べた。鑑定は一度で終わらず、2回にわたり、合計で約8か月という長期間になった。
精神的な問題があることと、刑事責任を問えないことは同義ではない。刑法上は、行為の善悪を判断したり、その判断に従って行動を制御したりする能力がどの程度あったかが問題となる。検察は鑑定結果を踏まえ、刑事責任を問えると判断したとみられている。
2025年9月26日、殺人・殺人未遂・銃刀法違反で起訴された
福岡地検小倉支部は2025年9月26日、平原政徳被告を殺人、殺人未遂、銃刀法違反の罪で起訴した。起訴状によると、凶器は刃渡り約11.4センチの狩猟用ナイフとされ、中島さんを死亡させ、男子生徒には約1か月のけがを負わせたとされている。
起訴によって、捜査段階の「容疑者」から刑事裁判の「被告人」へ法的段階が変わった。だが、起訴は有罪判決ではない。殺意、責任能力、動機、押収品と事件の関係などは、裁判所が証拠に基づいて判断する対象となる。
事件から1年後も、平原被告は殺意を否定していた
2025年12月、RKB毎日放送の記者が平原被告と面会した。平原被告は2人を刺した行為について語る一方、「殺害しようとは思っていない」「死亡するとは思わなかった」という趣旨で殺意を否定した。被害者や遺族への問いには明確な謝罪を述べなかったと報じられている。
面会での発言は被告本人の主張であり、そのまま裁判上の認定にはならない。今後の刑事裁判では、店へ向かうまでの行動、凶器の準備、刺した部位や態様、事件後の行動、精神鑑定などを総合して故意や責任能力が審理されることになる。
現在は「起訴された被告人」であり、有罪・刑はまだ確定していない
2026年8月26日時点で、平原政徳被告について確認できる法的な到達点は2025年9月の起訴である。有罪判決が確定した人物として扱う段階ではなく、刑事裁判で事実認定と法的責任が判断される被告人という位置づけになる。
この事件では、被害者2人に面識がなかったことから「無差別」という言葉が先行した一方、捜査が進むにつれて、被告が事件前に2人を認識して一方的に狙った可能性も示された。事件直後の見立てと後の捜査結果、被告の供述と確認事実を分けることが、現在の段階では最も重要となる。
参考資料・出典
- 福岡TNCニュース「平原政徳被告を起訴、約8カ月の鑑定留置」
- 日テレNEWS NNN/福岡放送「12月19日逮捕、防犯カメラとドラレコ捜査」
- FBS NEWS NNN「車と自宅から複数の刃物を押収」
- FBS NEWS NNN「中島咲彩さんへの殺人容疑で再逮捕」
- RKB毎日放送NEWS「事件から1年・平原被告への面会取材」
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