沼津女性殺害・遺体切断事件|伊藤亜佑美さん殺害、土屋勇貴に懲役18年

公開日 2026年3月29日
最終更新 2026年8月28日

事件ステータス

発生年月日
2023年
都道府県
静岡県
事件分類
死体遺棄事件 / 殺人事件

2023年2月21日、静岡県磐田市に住む会社員・伊藤亜佑美さん(当時33歳)が行方不明になった。翌22日に家族が警察へ行方不明届を提出。捜査の結果、交際関係にあった土屋勇貴の動きが浮上し、23日、沼津市の土屋宅から切断された伊藤さんの遺体が見つかった。

土屋はまず死体遺棄容疑で逮捕され、その後殺人容疑でも再逮捕・起訴された。裁判で土屋は、伊藤さんの頭や顔を鉄製ハンマーで繰り返し殴り、スマートフォンの充電ケーブルで首を絞めて殺害し、翌日に電動のこぎりなどを購入して自宅で遺体を切断した事実を認めた。静岡地裁浜松支部は2024年6月14日、求刑どおり懲役18年を言い渡した。

発生2023年2月21日
被害者伊藤亜佑美さん(33歳)
被告人土屋勇貴
殺害場所静岡市内
殺害方法鉄製ハンマーによる殴打、充電ケーブルによる頸部圧迫
遺体処理翌日、電動のこぎり等で切断
発見場所土屋の沼津市の自宅・バルコニー等
最初の逮捕2023年2月23日・死体遺棄容疑
主な罪名殺人、死体損壊、死体遺棄
一審2024年6月14日・静岡地裁浜松支部、懲役18年
主な争点殺害の計画性

2月21日、伊藤亜佑美さんが行方不明に

伊藤さんは磐田市に住む33歳の会社員だった。2月21日に家族と連絡が取れなくなり、翌22日に家族が行方不明届を提出した。

行方不明事件として始まった捜査で、伊藤さんと最後に会っていた人物や車の動き、交友関係が調べられ、土屋が捜査線上に浮上した。

伊藤さんの家族が早い段階で届け出たことで、失踪直後の通信履歴や車の位置、最後に会った人物を追う捜査が可能になった。

失踪から遺体発見までが短期間だったため、事件当日の行動記録や住宅周辺の記憶も比較的新しい状態で集めることができた。

土屋と伊藤さんは交際関係にあった

裁判報道によると、土屋と伊藤さんは交際関係にあり、金銭をめぐるトラブルもあった。

2人は地域の青年会議所活動などを通じ接点があったと報じられている。関係が深まった後、別れ話や金銭をめぐるやり取りが続き、土屋は公判で精神的に追い詰められていたという趣旨を述べた。

ただし、交際上のトラブルが存在したことと、殺人の計画性があったことは同じではない。裁判所は、関係悪化そのものより、犯行前の準備や殺害時の行動を重視して計画性を判断した。

土屋には家庭があり、2人の関係は周囲から見れば単純な交際だけでは説明できない問題を抱えていた。しかし、人間関係の複雑さが殺害を正当化する事情になるわけではない。

静岡市内へ向かった後、伊藤さんの行動が途切れる

起訴内容と判決では、殺害は2月21日に静岡市内で行われたとされた。土屋は伊藤さんと車で移動し、その過程で暴行へ及んだ。

女性が自宅へ帰らず連絡も途絶えたため、家族の届出から警察が行動経路を追った。

起訴内容では、土屋が伊藤さんと会った後、静岡市内で犯行へ及び、遺体を沼津市の自宅へ運んだとされた。

殺害場所と遺体発見場所が異なるため、警察は車両移動と両地点のつながりを確認する必要があった。

鉄製ハンマーで頭や顔を繰り返し殴打

土屋は伊藤さんの頭や顔を鉄製ハンマーで複数回殴った。SBSとLOOKの判決報道では、頭蓋骨が損傷するほどの強い攻撃だったことが量刑で重視されている。

土屋は公判で殺害行為自体を否認せず、「衝動的に殴った」という趣旨の説明をした。争点は誰が殺したかではなく、どの程度事前に殺害を考えていたかという計画性へ移った。

被告人質問で土屋は、伊藤さんとのやり取りの中で感情が高ぶり、その場で殴ったという説明をした。

弁護側は、計画殺人なら自分との接点が残る車内や行動経路で犯行を行うのは不自然だと主張し、準備された犯行という検察側の見方へ反論した。

充電ケーブルで首を絞めた

ハンマーによる殴打の後、土屋はスマートフォンの充電ケーブルで伊藤さんの首を絞めたと認定された。

複数の方法で攻撃を続けたことから、裁判所は強い殺意があったと評価した。最初の殴打が衝動的だったとしても、その後に頸部圧迫まで続けた行為は量刑上重く見られた。

殺害の翌日、遺体処理の道具を購入

起訴内容では、土屋は翌22日に電動のこぎりなどを購入した。その後、沼津市の自宅へ遺体を運び、浴室などで切断した。

遺体損壊は殺人後の行為だが、裁判での計画性判断では、道具をいつ準備したかが重要だった。殺害前から切断道具まで準備していたのか、殺害後に発覚を防ぐため購入したのかで、殺害自体の事前計画性の評価が変わるためである。

裁判では、切断に使用した道具の多くを殺害後に購入した点が、殺害前から遺体処理まで綿密に計画していたという評価を弱める事情にもなった。

一方で、殺害後ただちに遺体を自宅へ運び、道具を調達して切断したことは、犯行発覚を避けるための強い隠蔽意思を示す行動として量刑上重く評価された。

遺体はバルコニーや車内などから発見

切断された遺体は袋などに入れられ、土屋宅のバルコニーなど複数の場所に隠されていた。

行方不明届から警察が短期間で土屋宅へたどり着いたことで、遺体の隠匿は長期化しなかった。発見された遺体と処理道具は、死体損壊・遺棄の直接的な証拠となった。

行方不明当夜、近隣住民が「ドンドン」という音を聞いた

LOOK静岡朝日テレビは、伊藤さんが行方不明になった2月21日夜、土屋宅付近から「ドンドン」「ドスンドスン」といった音が30分ほど続いたとの近隣住民の証言を報じた。

この音だけで何が行われていたかを特定することはできないが、遺体切断や運搬をめぐる捜査で、当夜から翌日にかけての住宅内の動きを確認する一資料となった。

近隣住民の音の証言は、裁判で殺害そのものを立証する中心証拠ではない。何時ごろ自宅で物音が続いたのかという周辺事情を、遺体運搬や切断の時間帯と照合するための情報だった。

目撃・聴取情報は、客観記録と一致するかを確認して初めて証拠価値が高まる。単独の近隣証言から犯行内容を推定することはできない。

2月23日、まず死体遺棄容疑で逮捕

土屋が最初に逮捕された容疑は殺人ではなく死体遺棄だった。警察は土屋宅に伊藤さんの遺体があることを確認し、まず遺体を隠した事実で身柄を確保した。

その後、司法解剖や現場鑑定、行動記録などから死亡経緯を調べ、殺人容疑で再逮捕した。捜査が死体遺棄から殺人へ進んだ典型的な段階を踏んでいる。

最初の逮捕段階では、伊藤さんを死亡させた具体的な方法や殺意まで公訴事実として固まっていたわけではない。

遺体の傷、土屋の説明、車両や移動の記録を検討した後、警察はハンマーによる殴打とケーブルによる頸部圧迫を殺害行為として捜査し、検察が殺人罪で起訴した。

殺人・死体損壊・死体遺棄で起訴

最終的に土屋は、伊藤さんを殺害した殺人、遺体を切断した死体損壊、切断遺体を隠した死体遺棄の3つの罪で裁判員裁判にかけられた。

殺害、切断、隠匿は時間的に連続しているが、刑法上は別々の犯罪として評価される。判決では一連の経過全体が量刑へ反映された。

裁判で最大の争点は「殺害の計画性」

土屋は起訴された行為の大枠を認めていた。そのため、公判で検察と弁護側が大きく争ったのは、伊藤さんに会う前から殺害を計画していたのかという点だった。

検察側は、事前のやり取りや行動から一定の計画性があり、ハンマーを用いた執拗な攻撃も強い殺意を示すと主張した。

弁護側は「追い詰められた末の衝動的犯行」と主張

弁護側は、伊藤さんとの金銭トラブルや言動で土屋が精神的に追い詰められ、車内で衝動的に犯行へ及んだと主張した。

また、犯行の痕跡が残りやすい車内で殺害していることなどを挙げ、事前に周到な計画を立てていた人物の行動とは考えにくいとして懲役13年以下を求めた。

被害者側の事情は、殺害責任を軽くする理由にはならない

弁護側は伊藤さんの言動や金銭要求を量刑事情として挙げたが、被害者側に人間関係上の問題があったとしても生命を奪うことが許されるわけではない。

刑事裁判で検討されるのは、被告人がどのような心理状態で犯罪へ至ったかという範囲であり、殺害された被害者へ犯罪責任を転嫁するものではない。

検察は懲役18年を求刑

検察側は、ハンマーで繰り返し殴り、首を絞めた攻撃を「強い殺意があって執拗で危険」と評価した。

さらに遺体を切断した行為が伊藤さんの尊厳を著しく害したとして、懲役18年を求刑した。伊藤さんの母親も法廷で厳しい処罰を求める意見を述べた。

裁判所は「まったく想定していなかったとはいえない」

2024年6月14日の判決で、來司直美裁判長は、土屋が伊藤さんを殺害することを全く想定していなかったとは考えにくく、完全に突発的な犯行ともいえないと判断した。

一方、判決報道からは、綿密に殺害計画を作り上げたとまで認定したわけではないことも読み取れる。計画性を限定的に認めながら、攻撃の激しさと殺害後の行動を重く評価した。

裁判所は、殺害を全く考えていなかったという弁護側の説明を採らなかった一方、周到な準備を整えた計画殺人と同じ程度の計画性までは認めなかった。

量刑ではこの中間的な認定を踏まえつつ、複数回の殴打と絞頸という危険な行為、遺体切断、遺族の被害感情を総合し、検察求刑と同じ18年を選んだ。

求刑どおり懲役18年

静岡地裁浜松支部は土屋に懲役18年を言い渡した。

一人の被害者を殺害した事件であることを前提に、強い殺意、複数回の殴打と頸部圧迫、遺体切断・隠匿、犯行後の反省などを総合した有期刑となった。

伊藤亜佑美さんの実名は事件当時から報道

被害者は事件当時、伊藤亜佑美さんと実名で報道された。33歳で会社員として働き、家族が行方不明届を出したことが事件発覚の出発点となった。

本人の私生活や家族関係については週刊誌などで多く報じられたが、殺害事件の司法経過を理解する上で必要なのは、交際関係と金銭トラブルが裁判で動機・計画性の背景として扱われた範囲までである。

2026年8月時点で確認できる中心的な司法判断は一審懲役18年

2026年8月26日時点で、主要報道から確認できる中心的な司法判断は2024年6月14日の静岡地裁浜松支部判決である。

その後に控訴審で刑が変更されたとの主要報道は確認できないが、判決確定日を示す公式資料が十分でないため、確定日を推測して記載することは避ける。現在確認できる確実な結論は、一審で懲役18年が言い渡されたという点である。

参考資料・出典

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