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東尋坊殺人事件|自殺に見せかけて20歳男性を死に追い込んだ集団リンチ殺人

事件概要

項目内容
事件名東尋坊殺人事件
発生2019年10月18日
発生場所福井県坂井市・東尋坊
被害者嶋田友輝さん(当時20歳)
主犯格上田徳人
共犯少年6人
犯行監禁、傷害、殺人
逮捕2019年10月
判決上田徳人:懲役10年
性質集団リンチ殺人事件

事件の注目ポイント

東尋坊殺人事件は、2019年10月に福井県坂井市の東尋坊で起きた集団殺人事件である。被害者の嶋田友輝さんは、知人グループから長時間にわたって暴行を受け、車のトランクに監禁されたうえで東尋坊まで連れて行かれた。そして崖の上で「はよ落ちろ」などと迫られ、飛び降りを強いられて死亡したと認定されている。

この事件が強い衝撃を与えたのは、単なる暴行致死ではなく、自殺に見せかけるために観光地の断崖を利用した点にある。加害側は被害者を極限まで追い詰め、直接突き落とさなくても死に至る状況を作り出していた。裁判でも、こうした一連の行為が殺人として扱われた。

事件の発生

事件の発端は、2019年10月中旬ごろから続いていた被害者への暴行だった。嶋田さんは、上田徳人らと面識があり、滋賀県内で断続的に暴行を受けていた。事件前日には、「嶋田さんが暴行されている」という通報も警察に入っていた。

その後、嶋田さんは車のトランク内に閉じ込められたまま福井県の東尋坊へ運ばれた。翌19日朝、東尋坊近くの海で嶋田さんの遺体が見つかり、事件は一気に重大化した。

犯行状況

捜査で明らかになったのは、嶋田さんが東尋坊へ到着する前からすでに深刻な暴行を受けていたという点だった。グループは滋賀県彦根市や長浜市などで嶋田さんに暴行を加え、その後もトランク監禁を続けていた。

東尋坊に着いた後も暴行は続き、嶋田さんは抵抗できない状態にまで追い込まれていた。そこで加害側は崖の上から飛び降りるよう強要し、嶋田さんは崖下に転落。死因は脳挫滅とされている。警察は、直接押していなくても、暴行と脅迫で死に追い込んだことから殺人と判断した。

捜査経過

警察は、遺体発見前日にあった暴行通報や、被害者の交友関係を手掛かりに捜査を進めた。その結果、上田徳人と少年6人の計7人が浮上し、まず監禁容疑で逮捕された。

その後の捜査で、東尋坊での飛び降りが自発的なものではなく、暴行と脅迫の末に強いられたものと判断され、7人は殺人容疑で再逮捕された。遺体発見から比較的早い段階でグループが一斉に摘発されたのは、事前通報が残っていたことが大きかった。

上田徳人の役割

上田徳人は事件当時39歳で、加害側の中で唯一の成人だった。公判では、上田が少年らと共に嶋田さんへの暴行を黙認・容認し、さらに東尋坊まで車で連れて行ったことが重く見られた。裁判所は、上田が殺害の意図を知りながら移動に加担したとして、傷害と殺人の共同正犯を認定した。

一方で、上田は公判で一部否認し、自らは従属的立場だったと主張した。しかし判決はそれを退け、被害者の自由を奪い極限まで追い詰めた一連の流れに責任があると判断した。

裁判

上田徳人の裁判員裁判は大津地裁で行われた。検察側は、上田が少年らと共謀し、被害者を死に追い込んだとして厳しい処罰を求めた。これに対し弁護側は、上田は現場で従属的だったと争った。

2021年6月16日、大津地裁は上田徳人に懲役10年を言い渡した。 判決は、上田が嶋田さんを殴るなどし、共犯の暴行を黙認したうえで、殺害の意図を認識しながら東尋坊まで連れて行ったと認定した。なお、少年6人についても家裁送致後に刑事処分相当とされ、全員が実刑判決を受けている。

事件背景

事件の背景には、若者グループ内部の支配関係と、暴力をエスカレートさせる集団心理があったとみられる。嶋田さんは単に一度襲われたのではなく、複数日にわたり断続的に暴行を受け、最後は集団の圧力で死に追い込まれた。

この事件は、観光地での転落死という外形だけを見れば自殺や事故にも見えうる。しかし実態は、監禁・暴行・脅迫を積み重ねて崖から飛び降りさせるという、極めて悪質な集団殺人だった。

社会的影響

東尋坊殺人事件は、「自殺の名所」を偽装工作に利用した事件として大きく報じられた。観光地の崖から転落したという結果だけでは真相が見えず、背後に長時間のリンチがあったことが社会に大きな衝撃を与えた。

また、加害側に少年が多く含まれていたことから、少年事件における重大犯罪への処分のあり方や、集団暴力の危険性も改めて議論された。

現在の位置づけ

東尋坊殺人事件は、自殺に見せかけた集団リンチ殺人として近年の重大事件の一つに数えられる。事件の本質は、東尋坊からの転落ではなく、その前段階にあった長時間の監禁と暴行、そして逃げ場を奪ったうえでの飛び降り強要にある。


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