大津いじめ自殺事件|第三者委・市との和解・大阪高裁判決がそれぞれ認定したこと

公開日 2026年3月5日
最終更新 2026年8月28日
カテゴリー 2010年代 少年犯罪

事件ステータス

発生年月日
2011年
都道府県
滋賀県
事件分類
少年犯罪

2011年10月11日、大津市立中学校2年の男子生徒(13)が自宅で亡くなった。学校で何が起きていたのかをめぐり、その後、大津市の第三者調査委員会、遺族と市の民事訴訟、元同級生らを相手にした民事訴訟が別々に進んだ。

大阪高裁は2020年2月27日、元同級生らによる複数の行為を一連のいじめとして評価し、自死による損害との因果関係を認めた。一方、損害額については家庭環境などを理由に4割を減額した。因果関係の認定と損害分担の調整は、同じ判断ではない。

発生2011年10月11日
被害生徒大津市立中学校2年の男子生徒(13)
第三者委員会設置2012年8月
第三者委報告2013年1月31日
大津市との訴訟2015年3月17日 和解
元同級生らへの民事訴訟大阪高裁が2020年2月27日判決

友人関係は短期間で「いじめる側・いじめられる側」へ変わった

大阪高裁判決は、生徒と元同級生らがもともと友人関係にあり、当初はふざけ合いに近い場面もあったと認定している。しかし9月中旬以降、関係は次第に一方向へ変化した。

身体を押さえ付ける、殴る、所持品を汚す・壊す、体育祭で罰ゲームを強いる、自宅へ突然訪れて物を隠す・持ち去るなどの行為が重なった。高裁は個々の出来事だけでなく、短期間に繰り返された行為と関係性の固定化を一連のいじめとして評価した。

自死後の学校調査と情報公開も検証対象になった

生徒の死亡後、学校は生徒アンケートを実施した。ところが、いじめの状況や自死との関係をどこまで把握し、どう公表したかをめぐって批判が強まった。

学校内で起きた行為だけではなく、学校と教育委員会が自死後にどう調査し、遺族へ説明したかも事件の主要な検証対象となった。大津市は学校内部だけに任せず、外部委員による第三者調査へ進む。

2012年8月、外部専門家による第三者調査委員会が発足

第三者調査委員会は2012年8月に設置され、生徒が亡くなるまでの事実、自死の背景、学校・教育委員会の対応、事件後の調査、再発防止策を検討した。

2013年1月31日に提出された報告書は、自死に至るまでの事実、事後対応、提言の三部で構成された。大津市は現在も提言部分などを公開し、全編は市政資料コーナーや担当部署で閲覧できる。

第三者委員会の認定と、裁判所の判断は同じものではない

第三者委員会は行政・教育上の検証機関であり、有罪・無罪や損害賠償を決める裁判所ではない。報告書が事実関係を整理した後も、誰がどの範囲で法的責任を負うかは別の民事訴訟で判断された。

この事件では、第三者委員会が認定したこと、大津市が和解で認めたこと、大阪高裁が判決で認定したことを分けて記録する必要がある。

大津市との訴訟は2015年に和解した

遺族は大津市と元同級生らに損害賠償を求めた。大津市との間では、大津地裁が2015年2月18日に和解を勧告し、市議会の議決を経て3月17日に和解が成立した。

市は、学校が安全配慮義務を十分に尽くさず、自死を具体的に予見し得たにもかかわらず適切な対応を取れなかったことや、自死後の事後対応にも問題があったことについて遺族へ謝罪する経過をたどった。

元同級生らへの民事訴訟は市との和解後も続いた

市との和解によって元同級生らの責任まで確定したわけではない。元同級生らへの請求では、各行為が不法行為に当たるか、自死との法的な因果関係があるか、損害をどう分担するかが争われた。

一審の大津地裁は元同級生2人の責任を認めた。元同級生側が控訴し、2020年2月27日に大阪高裁が判決を言い渡した。

大阪高裁はいじめと自死による損害の因果関係を認めた

大阪高裁は、家庭上の事情など他の要因も検討した。それでも、元同級生らによる悪質・執拗ないじめと関係性の悪化がなければ、生徒が自死に至ったとは認められないと判断した。

当時すでに、いじめが子どもの自殺の危険因子となり得ることは文部科学省資料や国内外の研究で知られていたことも踏まえ、自死という結果が法的に全く予見不能だったとはいえないとした。

高裁は因果関係を認めた上で、損害額を4割減額した

高裁は、いじめと自死の関係を認める一方、損害額の算定では過失相殺の規定を適用・類推適用し、4割を減額した。

判決は、生徒本人や家庭側の事情として、家庭内で精神的な支えを得にくかったことなどを検討した。これは『いじめが自死と無関係だった』という判断ではなく、損害の公平な分担という民事法上の段階で考慮された事情である。

「いじめを相談しなかった」ことは減額理由にしなかった

元同級生側は、生徒がいじめを担任や両親へ相談せず、『大丈夫』などと答えていた点も本人側の落ち度とすべきだと主張した。

高裁はこの主張を退けた。いじめを受けて苦悩する生徒が直ちに教師や親へ相談しなかったことを責めるのはためらわれる上、加害側との関係で、相談しなかったことを理由に責任を軽くするのは公平な損害分担の考え方にも合わないとした。

一部で遊びに参加していたことも、後のいじめを正当化しなかった

元同級生側は、体育祭の場面などで生徒自身が遊びへ参加した事情も主張した。

高裁は、一部に本人が参加した場面があっても、それがその後繰り返された一連のいじめを正当化するものではなく、自死との関係で過失相殺の事情とすることもできないとした。

大津市は第三者委員会の提言を現在も公開している

大津市は第三者調査報告書の提言を現在も公開し、いじめ対策を専門に扱う部署や『大津の子どもをいじめから守る委員会』を設置している。令和8年度の委員会開催結果も市のウェブサイトで公表されている。

事件は一つの民事判決で終わった出来事ではない。学校での早期把握、教育委員会の危機対応、自死後の調査の独立性という課題が、その後の市の制度へ引き継がれた。

三つの手続を分けると、事件の法的な輪郭が見える

第三者委員会は学校と教育委員会を検証した。大津市は遺族との訴訟で和解した。大阪高裁は元同級生らのいじめと自死による損害との因果関係を認めた。

三つは同じ結論の繰り返しではない。それぞれ目的と権限が異なり、事件の事実関係、行政側の責任、個人の民事責任を別々の角度から明らかにしていった。

参考資料・出典

・大津市「大津市立中学校におけるいじめに関する第三者調査委員会の調査報告書について」
・大津市「いじめの防止に関する行動計画」
・大津市「男子生徒自死事件にかかる損害賠償訴訟の和解について」
・大阪高等裁判所 平成31年(ネ)第784号判決 2020年2月27日
・大津市「附属機関等(委員会など)」

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