京王線刺傷事件|刺傷と車内放火、殺人未遂の成立人数を分けた懲役23年判決

公開日 2026年9月18日
最終更新 2026年8月31日

事件ステータス

都道府県
東京都
事件分類
放火事件

2021年10月31日夜、走行中の京王線特急で服部恭太が72歳の男性をナイフで刺し、その後、別の車両でライター用オイルをまいて火を放った。男性は約3か月の治療を要する重傷を負い、火災から逃げる乗客の一部は国領駅で車両の窓からホームへ脱出した。

東京地裁立川支部は2023年7月31日、服部に懲役23年を言い渡した。放火時に周辺にいた12人全員への殺人未遂が成立するかが争われ、判決は10人について成立を認定、2人については認めなかった。刺傷被害者1人を合わせ、判決上の殺人未遂は計11人となった。

事件の基本情報

発生日2021年10月31日
場所京王線特急・調布―国領駅周辺
被告人服部恭太
主な被害70代男性が刺され重傷、車内で放火
起訴殺人未遂、現住建造物等放火など
一審2023年7月31日 東京地裁立川支部・懲役23年
求刑懲役25年
確定双方が控訴せず一審判決が確定

ハロウィーンの夜、特急車内で72歳男性を刺した

事件は衆議院選挙の投開票日でもあった10月31日午後7時55分ごろから始まった。服部は走行中の特急3号車で72歳男性の胸を刃長約29.6センチのナイフで刺し、右外傷性血気胸など約3か月の治療を要する傷害を負わせた。

判決によれば、服部は交際関係や職場での出来事から自殺を考え、死刑になるため複数人を殺害しようと計画した。ナイフのほか、ライター、ライター用オイル、殺虫剤スプレーなどを持ち込んでいた。

乗客が滞留した連結部付近へオイルをまき、火を放った

服部は車内を移動し、5号車と6号車の連結部付近に多数の乗客が集まっているのを見て、ライター用オイルを乗客方向へまいた。判決では、合計約2.5リットルのオイルが使われたと認定されている。

点火したライターを投げて床面のオイルに引火させ、車内に炎と黒煙が生じた。乗客は6号車側へ退避し、放火による死者・負傷者は出なかったが、火災そのものには具体的な生命侵害の危険があったと判断された。

国領駅では列車ドアがすぐ開かず、乗客が窓から避難した

列車は国領駅に緊急停車したが、停止位置とホームドアの位置が合わず、通常のドアから直ちに避難できない状況が生じた。乗客の一部が車両の窓を開け、ホームへ脱出する映像が広く伝えられた。

事件後、鉄道各社は車内事件時の停止位置、ホームドアとの連携、緊急時の乗客誘導などを改めて検証した。

12人への殺人未遂起訴に対し、判決は10人について成立を認めた

放火部分で検察側は、車内にいた12人全員について殺人未遂罪が成立すると主張した。裁判では、ライターに点火した時点で生命侵害の現実的・具体的危険が生じていたか、服部に各乗客を殺害する故意があったかが争点となった。

地裁は連結部付近にいた10人について殺人未遂を認定した一方、2人については、服部がその位置・存在を認識し、死亡の危険を認容していたと合理的疑いなく認めるには足りないとした。

刺傷1人と放火対象10人を合わせ、殺人未遂は計11人と認定された

最初に刺された男性1人に対する殺人未遂は別に成立している。放火部分で成立した10人分と合わせ、判決上、殺人未遂罪の対象となった被害者は計11人だった。

列車内で火を放った危険性が重大でも、起訴された全員について殺人未遂が自動的に成立するわけではない。各被害者との位置関係と被告の認識が個別に判断された。

懲役25年求刑に対し23年判決、双方が控訴せず確定した

検察側は懲役25年を求刑した。東京地裁立川支部は、無差別に乗客を狙い刃物と火を用いた危険性を厳しく評価しつつ、放火部分の殺人未遂の一部を認めなかったことなども踏まえ、懲役23年を言い渡した。

判決後、検察・被告側の双方が控訴期限までに控訴せず、2023年8月に一審判決が確定した。東京高裁や最高裁が量刑を判断した事件ではない。

判決は、服部が当初から多数の乗客を焼き殺す計画を立てていたと認定した

東京地裁立川支部の判決によれば、服部は走行中の特急列車へ放火し、多数の乗客を殺害する計画を立てた上で、ナイフ、複数のライター、ライター用オイル、殺虫剤スプレーなどを準備して乗車した。

刺傷後、乗客を先頭車両へ追い込む計画だったが、5号車と6号車の連結部付近に人だまりができているのを見て、その場で火を付けて殺害する計画へ変更したと認定された。

殺人未遂の「実行着手」と「殺意」が、放火部分の二つの争点だった

弁護側は現住建造物等放火罪の成立自体は争わなかった一方、12人に対する殺人未遂について、殺人の実行行為が始まっていたといえるか、各乗客への殺意があったかを争った。

裁判所は、オイルが乗客の身体や床に付着し、逃げる乗客が連結部で混乱していた状況から、ライターへ点火した時点で生命侵害の現実的・具体的危険が生じたと判断した。

火災の焼損面積が小さくても、殺人未遂の危険性は否定されなかった

実際に焼損した床面積は約0.09平方メートルだったが、判決は結果として火が大きく広がらなかったことだけで行為の危険性を判断しなかった。ライター用オイルの引火性、乗客との距離、混雑状況を重視した。

未遂罪では、死亡結果が発生しなかったことと、死亡させる具体的危険が生じていたかは別に判断される。本件では10人についてその危険と殺意が認定された。

参考資料・出典

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