宇都宮宝石店放火強盗殺人事件|女性従業員6人を拘束・放火、篠沢一男の死刑執行

公開日 2026年7月31日
最終更新 2026年8月28日

事件ステータス

発生年月日
2000年
都道府県
栃木県
事件分類
大量殺人事件 / 放火事件
司法状況
確定
最終刑・処分
死刑

2000年6月11日夜、栃木県宇都宮市中心部の宝石店で、店長を含む女性従業員6人が手足を縛られ、目隠しをされた状態で店の奥へ押し込められた。男は店内にガソリンをまいて火をつけ、1億4000万円強の宝飾品を持ち去った。6人は火傷死または焼死した。

強盗殺人と現住建造物等放火の罪に問われたのは篠沢一男だった。裁判で最大の争点となったのは、篠沢に従業員6人を殺す意思があったのかという点である。篠沢側は意図的な殺害を否定したが、裁判所は女性従業員だけの店舗を狙い、拘束と放火まで周到に準備した計画的な強盗殺人と認定した。

事件名宇都宮宝石店放火強盗殺人事件
発生2000年6月11日夜
場所栃木県宇都宮市の宝石店
被害女性従業員6人が死亡
被告人篠沢一男
被害品宝飾品1億4000万円強
一審2002年3月19日・宇都宮地裁、死刑
控訴審2003年4月23日・東京高裁、控訴棄却
上告審2007年2月20日・最高裁第三小法廷、上告棄却
死刑執行2010年7月28日・東京拘置所

女性従業員だけの店舗を狙った強盗計画

最高裁判決は、篠沢が「女性従業員ばかりの高級宝飾品店」を狙い、従業員を殺害して高額な宝飾品を奪うことを企てたと認定している。偶然の成り行きで店に火が付いたという事件ではなく、ガソリンを用意して店舗へ持ち込むところまで準備された計画だった。

後年の報道では、篠沢は事件前から同店に客として出入りし、5月下旬にも高額取引を持ち掛けて店長を店外へ誘い出そうとしていた。このときは男性社員が同行することになったため計画を断念し、6月に改めて店を訪れて商談を持ち掛けたとされる。

「多額の現金で買う」という商談が閉店後まで続いた

事件当日、篠沢は高額な宝飾品を現金で購入する客を装って来店した。店側は取引に応じるため商品をそろえ、閉店後も商談を続けた。高額商品を一か所に集めさせること自体が、強盗計画の一部として利用された。

閉店後、篠沢は従業員6人を制圧した。最高裁判決によると、全員の手足を縛り、目隠しをした上で店内奥の休憩室へ押し込めた。そのうえで出入口付近などに持参したガソリンを散布し、ライターで点火した。店は全焼し、6人全員が死亡した。

奪われた宝飾品は1億4000万円を超えた

篠沢が持ち去った宝飾品は、最高裁判決で1億4000万円強と認定された。事件当時の報道では、指輪など約293点と伝えられている。犯行は、従業員を拘束して金庫だけを奪うといったものではなく、大量の商品を集めさせたうえで持ち出す形だった。

放火後、篠沢自身も火傷を負った。警察は現場から立ち去った人物や店との取引関係を追い、事件翌日の6月12日に篠沢を発見して事情を聴いた。所持品から奪われたとみられる貴金属が見つかり、13日未明、強盗殺人と放火の疑いで逮捕したと当時報じられた。

裁判の中心は「殺すつもりで火をつけたのか」

篠沢は宝飾品を奪ったこと自体は争わなかったが、公判では殺意を否定した。ライターの火は脅しのためで、気化したガソリンへ予期せず引火したという趣旨の主張を展開し、強盗殺人の成立を争った。

一方、検察側は、女性だけの店舗を選んだこと、拘束用具とガソリンを事前に準備したこと、6人を逃げにくい休憩室へ集めたうえで点火したことなどから、当初から口封じのため殺害する計画だったと主張した。裁判所はこの見方を採用した。

宇都宮地裁は2002年、求刑どおり死刑

2002年3月19日、宇都宮地裁は篠沢に死刑を言い渡した。ガソリンをまいた行為を単なる脅迫とみることはできず、6人全員を殺害して宝飾品を奪う目的で放火したと判断した。弁護側は判決を不服として控訴した。

東京高裁は2003年4月23日に控訴を棄却した。殺意を否定する主張は二審でも退けられ、一審の死刑判断が維持された。篠沢側はさらに最高裁へ上告し、量刑や事実認定を争った。

最高裁が重視したのは、拘束から点火までの一連の準備

最高裁第三小法廷は2007年2月20日、上告を棄却した。判決は、従業員を殺害して一挙に大金を得るため周到に準備し、計画どおり犯行へ及んだと認定。6人全員を縛り、目隠しをして奥の部屋へ押し込み、ガソリンを散布して点火した一連の行為から、強い殺意を認めた。

被害者が6人に及んだ結果の重大さに加え、金品を得る目的で殺害まで計画した経緯も量刑上重く評価された。最高裁は、一、二審が選択した死刑を是認し、篠沢の死刑判決は確定した。

2010年7月28日、東京拘置所で死刑執行

死刑確定から約3年後の2010年7月28日、篠沢の死刑が東京拘置所で執行された。同日には別の死刑確定者にも刑が執行され、民主党政権発足後では初めての死刑執行となった。

当時の千葉景子法務大臣は、自ら発した執行命令に基づく刑の執行に立ち会った。政府答弁書でも、7月28日の執行について、関係記録を精査し、刑の執行停止や再審などの事由がないと判断した上で執行命令を発したことが説明されている。

事件から裁判までを貫いたのは、殺意の認定だった

この事件では、店舗放火と6人死亡という結果だけでなく、火をつける前に何が準備され、従業員をどのような状態に置いたのかが判決の核心となった。商談を装って高額商品を集めさせ、全員を拘束し、逃げ場を限定したうえでガソリンを使ったという順序が、偶発的な出火という弁護側の説明を退ける根拠になった。

強盗目的、殺意、放火という三つの要素が別々に存在したのではない。裁判所は、宝飾品を奪い、目撃者となる従業員を殺害する一つの計画として評価し、強盗殺人と放火について最も重い刑を選択した。

事件の約2週間前にも、高額取引を利用した計画があった

後年の取材記事によると、篠沢は5月29日にも高額な宝飾品を購入する客を装い、店長を店外へ連れ出して商品を奪う計画を立てていた。しかし、店側の男性社員が同行することになったため実行を断念した。女性従業員だけの状況を作れなかったことが、計画を止める要因になった。

6月1日、篠沢は再び店を訪れ、前回の件を謝罪したうえで後日の購入を持ち掛けた。11日の取引は突然生まれたものではなく、数回の来店を通じて店側に大口客として対応させた末に実行された。最高裁が「周到に準備し、計画どおりの犯行」と評価した背景には、この事前行動がある。

火傷を負った篠沢と、持ち出された宝飾品

放火の際、篠沢自身も火傷を負った。警察は、出火直後に店を離れた人物の目撃情報や、事件前に大口取引を持ち掛けていた客の情報をたどり、篠沢を捜査対象とした。翌12日、宇都宮市内で身柄を確保して任意同行を求めた。

当時報道では、篠沢が所持していたバッグに、店から奪われたとみられる貴金属類が入っていたとされる。事件発生から約1日後の13日未明に逮捕され、現場の状況、持参したガソリン、拘束に使った粘着テープ、奪われた商品などが捜査で結び付けられていった。

初公判で殺意を否定し、捜査段階の説明から転じた

篠沢は捜査段階では、金品を奪う計画と放火について供述していた。ところが2000年10月の初公判では、従業員を殺害するつもりはなかったと主張し、強盗殺人の成立を争う姿勢へ転じた。

このため、裁判は「宝飾品を奪ったか」よりも「放火を殺害手段として選んだか」に重点が移った。ガソリンを大量に持ち込んだこと、6人全員を拘束して一つの部屋へ集めたこと、出口付近にもガソリンをまいたことなど、点火前の行動が殺意を判断する材料になった。

死刑執行は、刑場公開と制度検討の契機にもなった

2010年7月28日の執行では、千葉景子法相が執行状況を自ら確認するため東京拘置所で立ち会った。政府は国会答弁で、執行停止、再審、非常上告、恩赦に関する事情を検討したうえで執行命令を発したと説明している。

その後、東京拘置所の刑場が報道機関に公開され、法務省では死刑制度のあり方を検討する場も設けられた。篠沢ら2人への執行は、一つの刑事事件の刑執行にとどまらず、死刑執行の情報公開と制度議論が動く契機の一つになった。

死亡した6人は、閉店後も商談に対応していた従業員だった

事件当時、店内に残っていたのは店長を含む女性従業員6人で、年齢は22歳から51歳だったと後年の報道で伝えられている。高額な現金取引を希望する客への対応として、系列店などから商品を集め、閉店後まで商談を続けていた。

最高裁は6人について、犯行を招くような落ち度はなかったと述べた。篠沢は、店側が大口の買い物客として応対することを利用し、従業員と大量の商品が同じ店内に集まる時間帯を作った。通常の接客手順そのものが犯行に悪用された形だった。

「約7リットルのガソリン」と拘束用具を持ち込んだ

一審判決を伝えた当時の報道によると、篠沢が持ち込んだガソリンは計約7リットルとされた。従業員の手足を縛る粘着テープも準備されており、強盗に着手した後で偶然手近な物を使ったのではない。

店内にいた6人を順に拘束し、一か所に集め、目隠しをしたうえで火を放つまでの行動は、殺意の認定と直接結び付いた。最高裁も、こうした準備と実行の連続性を示し、死刑を維持した原判決に量刑上の誤りはないとした。

篠沢の死刑確定は、最高裁が上告を棄却した2007年2月の後に確定手続を経て確定した。事件発生から約7年、逮捕から死刑確定まで、宝飾品を奪った事実そのものよりも、従業員6人を殺害する意思があったかが一貫して裁判の中心に置かれた。

参考資料・出典

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