品川製麺所夫婦強盗殺人事件|謝依俤の死刑と、紛失した同種ナイフをめぐる最高裁判断

公開日 2026年3月12日
最終更新 2026年8月28日
カテゴリー 2000年代 死刑

事件ステータス

発生年月日
2002年
都道府県
東京都
司法状況
確定
最終刑・処分
死刑

2002年8月31日午前0時過ぎごろ、東京都品川区の製麺所兼住宅に男が侵入した。建物は1階がラーメン店と製麺所、2・3階が居住部分で、そこで暮らしていた製麺所経営者の夫婦2人が相次いで殺害され、財布や貴金属類などが奪われた。強盗殺人などに問われたのは、被害者が大家を務めるアパートに住んでいた中国籍の謝依俤だった。

裁判では殺意や計画性が争われたほか、上告審では東京高裁で保管中に紛失したサバイバルナイフをめぐる主張も出た。最高裁は2012年10月19日、紛失したナイフは実際の凶器ではなく捜査機関が購入した同種品であり、他の証拠から殺意を認定できると判断して上告を棄却した。死刑判決が確定し、現在でも死刑確定者リストに謝は掲載されている。

発生日2002年8月31日午前0時過ぎごろ
場所東京都品川区の製麺所兼住宅
被害者ラーメン店・製麺所を経営する夫婦2人
被告人謝依俤
主な罪住居侵入、強盗殺人、出入国管理及び難民認定法違反
一審2006年10月2日、東京地裁が死刑
控訴審2008年10月9日、東京高裁が死刑を維持
最高裁2012年10月19日、上告棄却
法的結末死刑確定

製麺所の中で身を潜め、金品を奪う機会をうかがっていた

最高裁判決によると、謝は当時、日本に不法在留しており、思うような収入が得られず生活費や遊興費に窮していた。そこで、自分が住んでいたアパートの大家が経営するラーメン店・製麺所兼住宅に入り、金品を奪うことを考えた。

建物に侵入した謝は、1階の製麺所内に隠れて機会をうかがった。そこへ被害者の夫が来て謝の存在に気付き、逃げようとした。最高裁は、謝がこの男性をサバイバルナイフで襲い、殺害したと認定している。

1人目を殺害した後、1階を物色してから2階へ上がった

夫を殺害した後、謝は1階で金品を探した。それだけでは終わらず、2階へ上がり、その場にいた妻も襲って殺害した。さらに2階だけでなく1階と3階も物色し、現金などが入った財布や貴金属類を奪った。

判決が重視したのは、2人の死亡という結果だけではない。1人目の殺害後に金品を探し、次いで別の階にいた2人目まで殺害し、その後も建物内を物色して当初の金品奪取目的を遂げている。最高裁は、この一連の行動を量刑判断の重要な事情として挙げた。

殺意の有無は、攻撃の部位と回数から判断された

弁護側は殺意の認定を争った。しかし最高裁は、殺傷能力の高い鋭利なサバイバルナイフを使い、被害者の前頸部を強い力で切り、胸部を数回刺すなど、身体の重要部分へ強い攻撃を加えていると指摘した。もう1人に対しても背部などを多数回刺していた。

最高裁は、こうした犯行態様から被害者2人に対する強固な殺意があったと認定した。殺意は本人の言葉だけで決まるものではなく、どのような凶器を使い、身体のどこへ、どの程度の攻撃を加えたかという客観的な行為から判断された。

「紛失したナイフ」が最高裁で争点になった

この事件の上告審で特徴的なのが、証拠物のナイフをめぐる問題だった。弁護側は、押収されたサバイバルナイフ1本が東京高裁で保管中に紛失し、原審が現物を確認した形跡もないとして、殺意認定には審理不尽や事実誤認があると主張した。

最高裁も、裁判所で保管中の証拠物が紛失したこと自体については、管理態勢に問題があったと明言した。ただし、そのナイフは被害者夫婦の殺害に実際に使用された凶器そのものではなかった。捜査機関が同種品を購入し、証拠として取り調べを請求したものだった。

紛失したのは実際の凶器ではなく「同種品」だった

同種品については、写真撮影と計測をした報告書も証拠として取り調べられており、形状は記録から把握できた。最高裁は、同種品の現物が失われていても、他の証拠から謝の殺意を認定することは十分に可能だと判断した。

そのため、「凶器がなくなったのに死刑が維持された」とだけ説明すると正確ではない。紛失したのは犯行に使われた凶器そのものではなく、捜査側が比較・確認のために用意した同種品だった。この区別が、最高裁が弁護側の主張を退けた理由の一つになっている。

ナイフと覆面用ストッキングの準備から、計画性も認定

量刑判断では、犯行前の準備も重く見られた。最高裁判決によれば、謝はサバイバルナイフに加えて、覆面に使うストッキングなどを用意していた。裁判所は、単に盗みに入ったところ偶然殺人になったのではなく、被害者を殺害する可能性も考えていた計画的な犯行と評価した。

動機についても、思うような収入が得られず、生活費や遊興費に窮した末に金品を奪おうとしたもので、酌むべき事情はないとされた。経済的に困っていたこと自体ではなく、その解決方法として大家宅への侵入と強盗を選び、2人を殺害した点が量刑上評価された。

謝罪や日本での前科がない事情を考慮しても、死刑を維持

最高裁は、謝が被害者2人の遺族に謝罪の意思を示すなど反省の態度を見せていたこと、日本で前科がなかったことも、被告人に有利な事情として挙げた。それでも、夫婦2人を次々と殺害し、金品を奪った結果と犯行態様は極めて重大だとして、一審の死刑を維持した東京高裁の判断を是認した。

一審は2006年10月2日に東京地裁が死刑を言い渡し、東京高裁は2008年10月9日にこれを維持した。最高裁第二小法廷は2012年10月19日、上告理由を退けて上告を棄却した。

最高裁判決は事件名ではなく、匿名の「被害者A・B」で記録している

最高裁判決は被害者夫婦の氏名を掲載せず、「被害者A」「被害者B」と匿名化している。一方、夫婦がラーメン店と製麺所を経営し、謝が住んでいたアパートの大家だったことは判決に明記されている。

最高裁判決は氏名を示していないため、司法判断を扱う部分では「被害者A」「被害者B」という匿名表記を踏襲する。夫婦がラーメン店と製麺所を経営し、謝が住んでいたアパートの大家だったという関係は判決に明記されており、事件の経過と量刑判断はその記録から追うことができる。

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