2006年5月19日、東京地裁八王子支部は渋谷博仁に懲役1年6月、執行猶予4年を言い渡した。複数の女性と暮らす生活が大きく取り上げられていた時期だが、裁判で問われたのは共同生活そのものではない。参加を拒んだ女性を脅し、同居を迫った強要未遂と脅迫だった。
それから17年後の2023年、渋谷は10代女性への性犯罪容疑で再び逮捕され、複数の事件で起訴された。東京地裁立川支部で公判が続き、2025年1月20日に判決が予定されていたが、その前夜に東大和市の自宅で倒れ、76歳で死亡した。2006年に確定した有罪判決と、判決に至らなかった後年の公判。二つの刑事手続が、約20年を隔てて同じ住宅を舞台に進んだ。
| 主な場所 | 東京都東大和市 |
|---|---|
| 2006年の起訴 | 強要未遂、脅迫 |
| 2006年判決 | 懲役1年6月、執行猶予4年 |
| 2023年2月 | 10代女性への準強制性交未遂容疑で逮捕 |
| 後年の公判 | 準強制性交罪などで東京地裁立川支部に係属 |
| 渋谷博仁の死亡 | 2025年1月19日、76歳 |
| 予定されていた判決 | 2025年1月20日 |
| 法的な結果 | 2006年事件は有罪。後年の起訴事件は判決前に被告人が死亡 |
2000年代初頭、東大和市で始まった複数女性との共同生活
渋谷は2000年代初頭から、東京都東大和市の住宅で複数の女性と暮らすようになった。婚姻と離婚を短期間に繰り返し、離婚後も元妻が同じ住宅で生活する形が続いたため、外からは一人の男性と多数の女性が暮らす世帯に見えた。
この生活は「一夫多妻」「ハーレム」と呼ばれたが、日本の戸籍上で複数の女性と同時に婚姻していたわけではない。2006年に警察と裁判所が扱ったのも、生活形態の是非ではなく、共同生活へ誘われた一人の女性に対する具体的な脅迫行為だった。
共同生活を断った21歳女性に、約2時間にわたり同居を要求
2005年10月、渋谷は自宅を訪れた21歳の女性に共同生活へ加わるよう求めた。女性が応じなかったため、危害を加えられる趣旨の言葉を重ねて脅し、約2時間にわたりその場にとどめたとして捜査を受けた。
翌2006年1月に逮捕され、強要未遂と脅迫の罪で起訴された。4月18日の初公判では起訴事実を認めた。検察側は、女性に生活費を稼がせながら共同生活の人数を増やそうとしていた経緯を主張し、女性を勧誘するため同居者に友人を連れてくるよう求めていたとした。
2006年5月、懲役1年6月・執行猶予4年
東京地裁八王子支部は2006年5月19日、渋谷に懲役1年6月、執行猶予4年を言い渡した。女性を脅して共同生活へ加わらせようとした行為について有罪としながら、反省や被害弁償なども考慮して実刑を猶予した。
判決時、渋谷は女性たちとの共同生活をやめる意向を口にしていた。しかし、住宅にはその後も複数の女性が残り、長い年月を経ても共同生活は続いた。2006年の刑事裁判は終わったが、東大和市の住宅を中心とする暮らしは終わらなかった。
妻・元妻らと暮らす生活は、2023年まで続いていた
2023年の逮捕時、渋谷は妻や複数の元妻、子どもたちと同じ住宅で生活していた。元妻8人、妻、子ども3人を含む計13人で暮らしていた時期もあり、2006年の判決から17年を経ても、多人数の共同生活という外形は残っていた。
同居する女性たちがどのような事情で生活を続けていたかは一様ではない。刑事事件で問題となったのは、共同生活の存在ではなく、特定の女性に対して行われた勧誘、脅迫、性的行為の成否だった。
2023年2月、10代女性への準強制性交未遂容疑で逮捕
2023年2月7日、警視庁は当時74歳の渋谷と元妻の渋谷千秋を準強制性交未遂容疑で逮捕した。千秋が勤務先で知り合った10代女性を「占い師がいる」などとして自宅へ誘い、渋谷が女性の将来に強い不安を抱かせる言葉を使い、性交を求めた疑いが持たれた。
渋谷は取調べで、性交しなければ助からないという趣旨の発言はしていないとして容疑の核心部分を否認し、千秋は黙秘したとされた。逮捕時には家宅捜索に入った捜査員へ催涙スプレーを噴射したとして、公務執行妨害の疑いも加わった。
同じ女性への別の行為でも再逮捕、捜査は複数の事件へ広がった
最初の逮捕から約1か月後の2023年3月20日、渋谷らは同じ10代女性に対する別の性的行為をめぐって再逮捕された。前年9月の行為に続き、10月にも女性を再び自宅へ誘い、性行為を続けるよう求めた疑いだった。
その後も別の10代女性を含む事件で捜査が続き、渋谷は複数回逮捕された。起訴された事件は東京地裁立川支部の公判へ進み、準強制性交罪などについて審理が続けられた。
公判は判決期日まで進み、2025年1月20日に結論が予定された
後年の事件は逮捕だけで終わらず、起訴後の審理が続いた。2025年1月20日午前、東京地裁立川支部で渋谷に対する判決が言い渡される予定となり、公判は結論の直前まで進んでいた。
2006年の事件では渋谷が起訴事実を認め、有罪判決が残った。2023年以降の事件では、捜査段階で否認した内容も含めて公判で審理されたが、裁判所が最終的にどの事実を認定するかは判決の日まで示されなかった。
判決前日の夜、自宅で倒れているのを同居女性が発見
2025年1月19日午後10時10分ごろ、東大和市の自宅で渋谷がぐったりしているのを同居女性が見つけ、119番した。渋谷は病院へ搬送されたが、約1時間後に死亡が確認された。警視庁は現場の状況から自殺とみている。
翌20日に予定されていた判決は言い渡されなかった。渋谷は準強制性交罪などで被告人として審理を受けていたが、有罪・無罪を示す判決が出る前に死亡した。
被告人死亡で、後年の起訴事件には有罪・無罪の判決が残らなかった
刑事訴訟法339条1項4号は、被告人が死亡した場合、裁判所が決定で公訴を棄却することを定めている。これは起訴された犯罪事実について無罪を認定する手続でも、有罪を認定して刑を言い渡す手続でもない。
渋谷について刑事裁判上の結論として残ったのは、2006年の強要未遂・脅迫事件に対する有罪判決である。2023年以降に起訴された性犯罪事件は、判決が予定される段階まで進みながら、実体判断を受けないまま終わった。
渋谷の死亡後も、東大和市の住宅には元妻らが残った
渋谷の死亡から約1年後も、東大和市の住宅では元妻らの一部が共同生活を続けていた。渋谷本人がいなくなったことで、約20年にわたり注目された生活が直ちに解消したわけではなかった。
一方、残った女性たちの生活と渋谷に対する刑事責任は別の問題である。渋谷の刑事手続は、2006年の有罪判決と、2025年に判決前の死亡で終わった後年の起訴事件という二つの結果を残した。
参考資料・出典
- 時事通信「多数女性との同居男が死亡=判決前日、自宅で発見―東京」(2025年1月20日)
- TBS NEWS DIG「事実上の『一夫多妻生活』送っていた元占い師、判決日の前日に死亡」(2025年1月20日)
- 週刊女性PRIME「一夫多妻男・渋谷博仁容疑者を性的暴行容疑で再逮捕」(2023年3月20日)
- News24「Polygamist gives up his harem」(2006年5月19日)
- 女性自身「東大和の一夫多妻男・判決直前の死亡からまもなく1年」(2025年12月25日)
- e-Gov法令検索「刑事訴訟法」
- 検察庁「公判について―公訴棄却」
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