2003年、大学生らが参加するイベントサークル「スーパーフリー」をめぐる集団性暴力が表面化した。刑事裁判で明らかになったのは、単発の飲酒トラブルではない。代表者を中心とする関係者が、飲み会やイベントの二次会で女性に度数の高い酒を集中的に飲ませ、心神喪失や抗拒不能の状態にして複数人で性的暴行を加える行為を繰り返していた。
代表者は3件の準強姦で起訴され、東京地裁が2004年11月に懲役14年を言い渡した。東京高裁も量刑を維持し、2005年11月に最高裁が上告を棄却して確定。国会審議では、代表者以外の13人にも懲役2年4月から10年までの実刑が言い渡されたことが説明されている。後の法改正との関係まで含めて読むと、この事件の焦点は「大学サークルの不祥事」ではなく、集団で性暴力を反復する仕組みが形成されていた点にある。
| 主な犯行時期 | 2001年12月、2003年4月・5月 |
|---|---|
| 団体 | イベントサークル「スーパーフリー」 |
| 代表者の起訴 | 準強姦3件 |
| 一審 | 2004年11月2日・東京地裁・懲役14年 |
| 控訴審 | 2005年6月2日・東京高裁が控訴棄却 |
| 上告審 | 2005年11月1日・最高裁が上告棄却 |
| 有罪となった関係者 | 14人 |
| 代表者以外の刑 | 懲役2年4月~10年の実刑 |
| 2004年改正 | 集団強姦等罪・集団強姦等致死傷罪を新設 |
| 2017年改正 | 性犯罪規定の再編に伴い集団強姦等罪を削除 |
判決が認定したのは、女性3人に対する3件の準強姦
東京地裁判決は、代表者が他の関係者と共謀し、2001年12月に19歳、2003年4月に18歳、同年5月に20歳の女性をそれぞれ泥酔させ、複数人で順次性的暴行を加えたと認定した。いずれも当時の刑法上の準強姦に当たるとして処罰された。現在の不同意性交等罪とは条文も罪名も異なるため、後の法律用語をそのまま当時の判決へ置き換えることはできない。
3件はいずれも、女性が酔った結果に偶然便乗したという認定ではない。判決は、アルコール度数の高い酒を立て続けに飲ませて泥酔状態へ追い込み、人目につきにくい場所へ移した上で犯行に及んだ経過を認定している。飲酒した事実と性的行為への同意は別であり、裁判所は被害者側の行動を犯行の正当化材料とはしなかった。
小規模なサークルから、全国支部を持つ大規模イベント団体へ
判決によると、スーパーフリーは当初、大学生が設立した小規模なイベントサークルだった。代表者が就任した後に活動規模を拡大し、2003年当時には東京だけでなく全国各地に支部を置き、1回のイベントで千人規模の客を集めるまでになっていた。代表者は大学に在籍し続けながら長期間トップの地位にとどまり、イベント内容や全国展開の方法にも強い決定権を持った。
スタッフはチケット販売実績や活動への協力度などで格付けされ、代表者が昇格などを最終決定していたと認定された。団体が大きくなる一方、内部では年長の代表者と若いスタッフの力関係が開いた。裁判所は、この地位と影響力を、個々の犯行だけでなく集団内の行動様式が固定化していった背景として重視した。
1999年ごろから、二次会後の集団性暴力が反復されるようになった
東京地裁は、本件で起訴された3件より前の1999年ごろから、イベント後の飲み会で女性へ飲酒を強い、泥酔させて人目につかない場所へ連れ込み、複数の関係者が順次性的暴行に及ぶ行為が繰り返されていたと認定した。起訴された3件だけを見れば約1年半の間に起きた別々の犯罪だが、判決はそれらを同じ集団内で常習的に行われてきた行為の延長と捉えている。
内部では、この行為に独自の隠語が使われ、参加に積極的な者と消極的な者を区別する呼称まで存在した。犯罪行為に名前を付けて日常語のように扱うことは、個々人の責任を薄めるものではない。むしろ裁判所は、関係者が飲み会後の集団性暴力を当然視し、参加を期待する状況が形成されていたことを量刑上の重要事情とした。
代表者は「連帯感」を理由に参加を奨励したと認定された
弁護側は、代表者が他のスタッフへ参加を強制した事実はないと主張した。東京地裁も、命令に従わない者を明確に処罰する制度まで存在したとは認めていない。しかし、複数の関係者の供述や代表者本人の公判供述を踏まえ、代表者が集団性暴力を肯定し、参加を勧める発言を繰り返していたことは認定した。
裁判所が重視したのは、形式的な命令の有無だけではない。団体の代表として人事的な格付けやイベント運営を左右する人物が、犯罪行為を連帯感や活動意欲と結び付けて語ること自体が、周囲の行動へ強い影響を与える。判決は、そうした言動の積み重ねが、関係者に「飲み会の後には同様の行為がある」と受け止めさせる状況を作ったとした。
2001年12月の事件では、事務所が犯行場所になった
最初に起訴された事件は2001年12月19日夜から20日未明にかけて起きた。被害女性は当時19歳。判決によれば、代表者らは女性に度数の高い酒を多量に飲ませ、心神を喪失させた上、豊島区内の代表者宅兼サークル事務所で複数人が順次性的暴行を加えた。イベント活動の拠点だった場所が、閉鎖性の高い犯行場所としても使われていた。
この事務所では、起訴事件以外にも同様の行為がしばしば行われていたと判決は認定した。団体の通常活動と犯罪行為の場所が重なっていたことは、参加者が偶然同じ場所へ集まっただけではないことを示す。代表者は組織運営の中心にいると同時に、犯行現場となる拠点を支配する立場にもあった。
2003年4月と5月、六本木の二次会でも同じ手口が続いた
2003年4月27日の事件では18歳の女性、5月18日の事件では20歳の女性が被害を受けた。いずれも六本木の居酒屋で度数の高い酒を飲ませて泥酔させた後、人通りの少ない場所へ移し、複数人で性的暴行を加えたと認定された。4月の事件では共謀者が多数に及び、集団性がより明確に表れている。
3件の場所や被害者は異なるが、飲酒させて抵抗困難な状態を作り、閉鎖的な場所へ連れ出すという流れは共通する。裁判所は、この反復性と組織性を代表者の刑事責任を重くする事情とした。単独犯が衝動的に行った事件としてではなく、集団内で共有された手口による犯罪と評価された。
代表者への懲役14年は、当時として極めて重い量刑だった
2004年11月2日、東京地裁は代表者に懲役14年を言い渡した。判決は3件の被害だけでなく、団体内で長期間にわたり集団性暴力が繰り返され、代表者が強い影響力を持って参加・奨励してきた点を厳しく評価した。公判では起訴事実そのものを争うより、代表者がどの程度主導したのか、どこまで重い刑を科すべきかが大きな争点となった。
東京高裁は「悪質な犯罪集団と化した団体」の代表責任を重視
代表者側は控訴したが、東京高裁は2005年6月2日、一審の懲役14年を維持した。高裁は、団体が常習的な集団性暴力を行う状態へ変質し、その代表者が率先して犯行へ関与した責任を重く見た。代表者と他の共犯者との刑の差も争われたが、地位や関与の程度を踏まえれば14年が重過ぎるとはしなかった。
被害女性がイベントや飲み会へ参加していたことも、量刑を軽くする事情とはならなかった。参加者が交流や飲酒を目的に会場へ来たことと、泥酔させられた後に複数人から性的暴行を受けることへの同意は結び付かない。裁判は、被害者の「自己責任」に転化する主張を退けた。
2005年11月、最高裁が上告を棄却して懲役14年が確定
2005年11月1日、最高裁第二小法廷は代表者側の上告を棄却した。これにより、東京地裁と東京高裁が維持した懲役14年が確定した。The Japan Timesは、最高裁が代表者を首謀者と評価した下級審判断を覆さず、13人の共犯者についてもすでに実刑が確定していたと報じている。
刑事裁判の最終結果は、代表者だけが14年、残る13人もすべて有罪・実刑というものだった。事件の大きさは逮捕者数ではなく、裁判で確定した刑事責任を基準に見る必要がある。報道段階で名前が挙がった人物や、サークル参加者全体を、確定判決を受けた14人と同一視してはならない。
2004年刑法改正で「集団強姦等罪」が新設された
事件発覚の翌年、刑法等の一部を改正する法律が成立し、2人以上が現場で共同して強姦または準強姦を行う場合を処罰する「集団強姦等罪」が新設された。法定刑は4年以上の有期懲役。集団強姦等致死傷罪も新設され、性犯罪の法定刑そのものも引き上げられた。
この改正を「スーパーフリー事件だけが原因」と断定するのは正確ではない。法案は凶悪・重大犯罪全体の罰則見直しや公訴時効の延長を含む広い改正だった。ただし、衆議院法務委員会ではスーパーフリー事件が集団強姦の具体例として明示され、代表者への懲役14年や他13人の実刑判決まで紹介された。事件が立法審議の重要な背景の一つだったことは国会記録から確認できる。
新設された罪は事件へ遡って適用されたわけではない
代表者らの犯行は2001年から2003年で、集団強姦等罪が新設された2004年改正より前に起きている。刑罰法規は原則として行為時の法律で判断されるため、代表者らは新設罪ではなく、当時存在した準強姦罪などで裁かれた。後から重い罪ができたから過去の事件へさかのぼって適用した、という経過ではない。
この区別は、事件と法改正の関係を理解する上で重要になる。「事件を受けて法律が変わった」ことと、「変わった法律で事件を裁いた」ことは別である。スーパーフリー事件の確定判決は旧法下の準強姦罪によるもので、法改正はその後の同種事案に対応するための制度変更だった。
2017年改正で集団強姦等罪は削除、性犯罪規定は再編された
2017年の刑法改正では、強姦罪が強制性交等罪へ再編され、被害者・行為者の性別を問わない構成へ改められ、基本罪の法定刑も引き上げられた。この改正に伴い、2004年に新設された集団強姦等罪は独立した条文として削除された。集団性暴力が合法化されたわけではなく、基本罪の処罰体系が組み替えられた結果である。
さらに2023年には不同意性交等罪へ再編され、性犯罪規定はその後も更新されている。
事件の核心は、個々の犯行を支えた集団内の仕組みにある
東京地裁判決は、3件の被害だけでなく、代表者の強い影響力、スタッフの格付け、飲み会後に性暴力が繰り返される慣行、参加を肯定する発言などを一体として認定した。犯罪が繰り返された理由を、特定の「異常な人物」だけに還元せず、集団内で何が当然視されていたのかまで記録した判決だった。
一連の刑事裁判では14人の刑事責任が確定した。その後の国会では事件が具体例として示され、集団性暴力を独立して加重処罰する規定が設けられた。現在の刑法はさらに改正されているが、事件を理解するうえで残るのは、飲酒やサークル活動を口実にした行為ではなく、抵抗困難な状態を意図的に作り、複数人で反復した性犯罪だったという司法上の認定である。
参考資料・出典
- 東京地方裁判所「平成16年11月2日判決・準強姦被告事件」
- 衆議院法務委員会・第161回国会第5号(2004年11月9日)
- 衆議院法務委員会・第161回国会第6号(2004年11月10日)
- 衆議院「刑法等の一部を改正する法律案」
- 参議院「刑法等の一部を改正する法律案」
- 衆議院「平成29年刑法改正・法律案等概要」
- The Japan Times「High court upholds 14-year sentence for gang-rape leader」
- The Japan Times「Appeal by Super Free gang rapist rejected」
関連事件
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