2015年6月6日夜、北海道砂川市の国道を2台の車が高速度で走行していた。飲酒した運転者らは赤信号を無視し、1台が永桶弘一さん一家の車に衝突した。
弘一さん(44)、妻の文恵さん(44)、長女の恵さん(17)が死亡。車外へ投げ出された長男の昇太さん(16)は後続のもう1台にはねられ、約1.5キロ引きずられて死亡した。次女の光さん(13)は重傷を負った。裁判では、別々の車を運転していた2人に「共同正犯」を認められるかが最大の争点となった。
事件の基本情報
| 発生日 | 2015年6月6日 |
|---|---|
| 場所 | 北海道砂川市 |
| 被害 | 一家4人死亡、1人重傷 |
| 被告 | 谷越隆司、古味竜一 |
| 運転 | 飲酒、高速度、赤信号進入など |
| 争点 | 危険運転致死傷罪の共同正犯 |
| 一審 | 札幌地裁・両名懲役23年 |
| 最終結果 | 両名とも懲役23年が確定 |
2台は「競うように」100キロを超える速度で走った
札幌地裁判決は、2台が高速度で並走し、互いに競うような形で走行した状況を認定した。赤信号の交差点へ進入するまで、危険な走行が一連のものとして続いていた。
裁判所は、単に2人が飲酒していたことではなく、互いの車両を認識しながら高速度で競うように走行した経過を、危険運転を共同で実行した根拠として評価した。
一家の車に直接衝突したのは1台だった
永桶さん一家の車に最初に衝突したのは谷越側の車だった。衝撃で長男の昇太さんが車外へ投げ出され、その後、古味側の車にはねられた。
したがって「2台が同時に一家の車へ衝突した」という事故ではない。それでも検察は、交差点へ向けた危険な共同走行全体について2人が責任を負うと主張した。
共同正犯には、明示的な「事故の相談」は必要か
弁護側は、2人の間に危険運転を共同で行う意思の連絡はなく、それぞれ別の運転行為だと主張した。これに対し裁判所は、走行状況や互いの認識から、共通の危険運転を行う意思が形成されていたと認定した。
殺人などで典型的に語られる共同正犯を、複数車両による危険運転致死傷へどう適用するかが注目された。
札幌地裁は両名に懲役23年
2016年11月10日、札幌地裁は谷越隆司と古味竜一の双方に懲役23年を言い渡した。危険運転致死傷罪などについて共同正犯を認め、4人死亡・1人重傷という結果を重く評価した。
被告側は事実認定や共同正犯の成立を争って控訴した。
札幌高裁も共同正犯認定を維持した
札幌高裁は控訴を棄却した。判決は、2台が高速度で互いを意識しながら走った状況、赤信号の交差点へ進入した経緯などを踏まえ、一体の危険運転と評価した一審判断を維持した。
最終的に両名の懲役23年が確定した。共同危険運転をめぐる裁判例として、その後も参照される事件になった。
北海道は飲酒運転根絶条例を制定した
北海道では前年の小樽市の飲酒ひき逃げ事件に続いて砂川事故が起き、飲酒運転対策への圧力が強まった。2015年12月には「北海道飲酒運転の根絶に関する条例」が成立した。
条例は事業者や道民、行政それぞれに飲酒運転根絶への役割を求める。事故は刑事裁判だけでなく、地域全体の飲酒運転対策にも影響を残した。
別々の車を運転した2人に危険運転の共同正犯を認定
谷越と古味は別々の車を運転していた。裁判所が共同正犯を認めた根拠は、同乗や同一車両の操作ではなく、互いの走行を意識し、高速度で競うように赤信号交差点へ進入する危険な行為を共同して行ったと評価したことにある。
一家の車に直接衝突した車両は1台だったが、裁判所は危険運転という犯罪行為について2人の共同実行を認めた。
永桶一家5人のうち、4人が死亡した
死亡したのは父の弘一さん、母の文恵さん、長女の恵さん、長男の昇太さんだった。次女の光さんは重傷を負った。一家の車に最初の衝突があり、その後に車外へ投げ出された昇太さんを別の車がはねたことで、被害経過が二段階になった。
この経過が、二人の運転者を別々の事故として扱うのか、一連の共同危険運転として扱うのかという法的争点につながった。
参考資料・出典
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