1990年1月18日、長崎市役所の玄関付近で、当時の市長・本島等が拳銃で撃たれた。市長は重傷を負ったが、命を取り留めた。犯行の背景には、前年まで社会的な議論を呼んでいた昭和天皇の戦争責任をめぐる市長の発言があった。
この事件は、2007年に伊藤一長市長が殺害された事件とは別である。事件の被害者、発生年、犯行をめぐる事情を区別しなければならない。
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| 発生日 | 1990年1月18日 |
|---|---|
| 場所 | 長崎県 |
| 主な被害 | 本島等市長が重傷 |
| 裁判・調査 | 懲役12年が確定 |
1988年の市議会で戦争責任に言及
本島は1988年12月7日、長崎市議会で昭和天皇の戦争責任について問われ、自身の軍隊生活も踏まえて責任があるとの認識を述べた。発言後、その是非をめぐる議論や批判が続いた。
原爆被害を受けた長崎市の市長という公的な立場と、戦争責任をめぐる政治的・歴史的な見解が重なり、反発は強まった。市長自身の発言に対して威迫する行為が問題になった。
発言に反発した団体と脅迫の広がり
右翼団体「正気塾」は本島の発言に反発した。事件前後には、同団体の活動や言論機関への働き掛けも国会で取り上げられている。
ある歴史的・政治的見解に賛否があることと、その発言者を暴力で排除しようとすることは別である。銃撃事件の刑事上の評価は、発言の当否ではなく人の生命を狙った行為に向けられた。
1990年1月18日、市役所前で本島市長が撃たれた
身辺警護がいったん解除された後、本島は市役所玄関口で短銃によって狙撃された。負傷は約1か月の治療を要する程度とされ、生命の危険を伴う犯行だった。
本島は命を取り留め、事件後も天皇の戦争責任についての発言を撤回しなかった。被害者が公職者であったことから、政治的な言論の自由と安全の関係が強く意識された。
銃撃した田尻和美と「正気塾」
犯行に関与したのは正気塾の関係者、田尻和美だった。田尻は殺人未遂などの罪で起訴され、長崎地裁で審理された。
加害者が政治的・歴史的な理由を掲げたとしても、銃撃の法的性質は殺人未遂という重大な犯罪である。思想的背景と刑事責任を混同することはできない。
長崎地裁は懲役12年を言い渡した
1990年12月、長崎地裁は田尻に懲役12年の実刑判決を言い渡した。翌1991年3月の国会法務委員会でも、この判決と関係団体の活動が議論されている。
その後、控訴は棄却されて判決が確定した。銃撃された本島市長が死亡した事件ではなく、判決の罪名と結果は殺人未遂として整理される。
事件後の本島と市政
本島は事件後も長崎市長として活動を続けた。1995年には市長選挙で5選を目指したが落選した。
こうした政治家としてのその後を、銃撃の是非と結び付けて評価することは適切ではない。事件として重要なのは、公職者への暴力が起きた事実と、裁判が加害者の刑事責任を確定させたことである。
原爆被爆地の市長としての立場
長崎は原爆被害を受けた都市であり、市長の戦争をめぐる発言には国内外の関心が集まりやすかった。本島の発言は自身の軍隊経験も踏まえた見解として示されたが、歴史認識をめぐる論争が暴力に転じた。
市民の代表である市長が政治的な見解を述べることと、それを批判する自由はいずれも民主的な言論に属する。一方、銃撃はその枠を超えて人命に危険を生じさせる行為だった。
国会でも取り上げられた正気塾の活動
1991年3月の衆議院法務委員会では、本島市長の銃撃と正気塾の活動について質問が行われた。同じ質疑では同団体が新聞社への意見広告掲載を求め、訴訟を提起していた経緯も扱われている。
ただし、国会で論じられた別の事件や推測をそのまま田尻の刑事裁判上の認定へ置き換えることはできない。銃撃事件で確定した事実と、当時の社会・政治状況を分けて記録する必要がある。
市長は生き残り、発言を撤回しなかった
本島市長は銃撃後に回復し、政治活動を続けた。天皇の戦争責任についての見解も撤回せず、市長としての任期を継続した。
命を狙われた政治家が職務を続けたというその後の経過は、事件が殺人未遂であることを示すとともに、言論を暴力で押さえ込もうとした行為があったことを記録するうえで欠かせない。
2007年の別の長崎市長事件との違い
長崎では2007年4月、伊藤一長市長が銃撃され死亡する別事件が起きた。1990年は本島等に対する殺人未遂事件であり、2007年は伊藤一長が命を落とした事件だ。
同じ「長崎市長銃撃」という言葉が使われることがあるため、記事名だけで同一視しない注意が要る。両者の違いを押さえることが、長崎の政治史と事件記録を正確に読み解く入口になる。
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参考資料・出典
共同通信ニュース用語解説(コトバンク)
・当日の独自報道:長崎放送NBC・1990年1月18日当日のニュース映像と目撃証言アーカイブ
・事件前の背景:放送ライブラリー・NBC制作「JNN報道特集 市長の発言」
この事件に関連するテーマから、書籍・資料をまとめて確認できます。
