2011年2月4日午前9時30分ごろ、北海道勇払郡厚真町字桜丘の山林で、林業作業中だった新渡戸勝彦さん(当時45歳)が銃弾を受けて死亡した。北海道警は現行の情報募集ページでも「業務上過失致死事件」として掲載し、現場付近で目撃された2人と青・水色系のRV車について情報を求めている。
事件発生から10年となった2021年2月、HTB北海道ニュースは業務上過失致死の公訴時効が成立したと報じた。ところが、北海道警の公式ページは2026年8月現在も「捜査中」と記し、情報提供フォームも残している。発砲した人物は特定されておらず、何を狙って撃ったのか、過失だったのかを含め、発砲の経緯そのものが解明されていない。
事件直後、北海道は公道から発砲された可能性や、人に危害を及ぼす恐れのある場所での発砲だった可能性に触れた。ただし、当時の知事会見も原因はまだ明らかではないと明記している。目撃された2人を、刑事裁判で犯行が認定された人物のように扱うことはできない。
| 発生 | 2011年2月4日 午前9時30分ごろ |
|---|---|
| 場所 | 北海道勇払郡厚真町字桜丘の山林 |
| 被害者 | 林業作業員・新渡戸勝彦さん(当時45歳) |
| 被害 | 林業作業中に銃弾を受け死亡 |
| 目撃人数 | 2人 |
| 服装 | 2人ともオレンジ色の上衣(ジャンパー・チョッキなど) |
| 目撃車両 | 青色・水色系のRV車両 |
| 警察の現行表記 | 業務上過失致死事件 |
| 現在 | 発砲者未特定・北海道警が情報提供を継続 |
林業作業中の新渡戸勝彦さんに、山林で銃弾が当たった
北海道警によれば、新渡戸さんが銃弾を受けたのは2月4日午前9時30分ごろ。場所は厚真町字桜丘の山林内で、新渡戸さんは林業作業の最中だった。銃を扱う側ではなく、山林で仕事をしていた側が被害を受けた事件である。
北海道が6日後の知事会見で説明したところでは、新渡戸さんは安平町早来栄町に住み、重機を使って作業していた。道はこの時点で「原因が明らかとなっていない」とした。発砲者が特定されていない以上、狩猟中の誤射だったという説明も、故意の発砲だったという説明も確定した事実ではない。
現場は厚真町中心部から約8キロ、行き止まりの町道沿いだった
北海道警が公開する現場説明は具体的だ。山林は新千歳空港から東へ約16キロ、厚真町市街地から北へ約8キロ。町道10号線や道道235号線から分かれた、行き止まりの町道「幌里本線」沿いに位置する。
町道沿いには知決辺川が流れ、一般住宅も点在している。人里から完全に隔絶した場所ではない一方、山林と道路が接する環境で、林業と狩猟の活動域が重なり得る場所だった。道が事件直後から狩猟者に「矢先」の確認など安全徹底を求めた背景には、こうした場所で銃弾が人へ向かった事実があった。
現場付近で目撃されたのは、オレンジ色の上衣を着た2人
北海道警が現在も公開している人物情報は限られている。目撃されたのは2人で、いずれもオレンジ色のジャンパーやチョッキなどの上衣を着用していた。年齢、氏名、住所といった個人を特定できる情報は掲載されていない。
公式ページは2人を「犯人に類似する人物」と表現しているが、目撃されたことと、発砲したことが証明されたことは同じではない。2人が銃を所持していたのか、発砲を目撃したのか、事件と無関係だったのかについても、公開されている捜査結果はない。
青色・水色系のRV車も、現在まで情報募集の対象に残る
人物とともに公開されているのが車両情報で、色は青色または水色系、車種の分類はRV車両とされている。ナンバー、メーカー、具体的な車名は公表されていない。
事件から15年以上が過ぎても、この車に関する情報は公式ページから外されていない。事件当日の午前9時半前後に現場周辺を走行していた車、同様の服装をした2人が乗っていた車、狩猟に出ていた知人の車など、後になって結び付く記憶が捜査対象になり得る。
北海道は「公道からの発砲」の可能性にも言及した
2011年2月10日の北海道知事会見では、公道から発砲されたのではないか、人への危害の恐れがある場所で発砲されたのではないかという可能性が示された。事実であれば鳥獣保護法上禁止された行為に当たる可能性があるとして、安全確認の徹底が呼びかけられた。
ただし、この発言は発射位置が確定したという発表ではない。会見では冒頭から原因未解明とされ、「公道から」という点も可能性として述べられている。発射位置を確定事実に変えてしまうと、当時の行政説明より強い意味になってしまう。
発砲者が名乗り出ていない状態で、道は狩猟者情報を捜査へ提供した
会見時点で、発砲した当事者は名乗り出ていなかった。北海道は、林業関係6団体から安全確保を求める緊急要請を受け、北海道猟友会に狩猟時の安全確認を徹底するよう要請した。市町村にも、有害鳥獣駆除を行う際の安全確認を周知した。
加えて道は、道警へ狩猟者に関する情報を提供するなど捜査へ協力すると表明した。ここから確認できるのは、狩猟活動との関連を念頭に広い照合が行われたという点までで、特定の猟師が発砲者として確定したわけではない。
安全周知は猟友会会員だけでなく、会員外の狩猟登録者にも広げられた
北海道は事件後、北海道猟友会の会員だけに注意を呼びかけたわけではない。知事会見では、道内・道外の猟友会会員以外の狩猟登録者に対しても、安全確認を徹底するよう文書で通知する予定だと説明している。
同時に、市町村が有害鳥獣駆除を実施する場合にも、従事する狩猟者へ安全確認を徹底するよう周知した。特定人物を名指しする捜査情報がない段階で、行政側は狩猟に関わる複数の経路へ安全対策を広げていたことが分かる。
「誤射事件」と断定できないまま、業務上過失致死として捜査された
北海道警のページ名は「勇払郡厚真町発生の業務上過失致死事件に関する情報提供のお願い」で、本文にも同罪の事件を捜査中と記されている。捜査機関が過失による死亡を想定して捜査してきたことは、現在の公式ページからも確認できる。
一方、発砲者が特定されていなければ、本人が何を狙っていたのか、対象を人と認識していたのか、発射前にどのような安全確認をしたのかを直接確かめることができない。「業務上過失致死として捜査された」ことと、「誤射だったことが裁判で確定した」ことは別である。
2021年2月、業務上過失致死については10年の節目を迎えた
事件から10年となった2021年2月、毎日新聞は「北海道厚真銃撃死10年、4日時効」と報じ、HTB北海道ニュースも業務上過失致死の時効が成立したと伝えた。過失犯としての刑事責任を問う時間的な限界が、事件発生から10年で現実の問題になった。
それでも「事件そのものが解決した」ことにはならない。発砲した人物は特定されず、遺族にとっては誰がどのような状況で新渡戸さんの命を奪う銃弾を放ったのかが分からないまま、法的な節目だけが先に訪れた。
現在の北海道警ページは、時効報道後も「捜査中」と記載している
2026年8月現在、北海道警の事件ページは削除されていない。見出しも業務上過失致死事件のままで、本文には「捜査中です」とあり、現場付近を通行した人や人物・車両の情報を求めている。専用の情報提供フォームも利用できる状態にある。
2021年の時効報道と、現行ページの「業務上過失致死事件を捜査中」という記載は、そのまま読むと食い違って見える。少なくとも公開情報上は、北海道警が事件に関する情報収集を終えていないことが明確である。
2人とRV車を「逃走した犯人」と決めつけることはできない
未解決事件では、公開写真や目撃情報に登場する人物が、年月の経過とともに「犯人」として語られることがある。本件でも北海道警のページは「犯人を探しています」という枠内に掲載されているが、2人の氏名は判明しておらず、逮捕・起訴・裁判もない。
そのため、公開された2人について確実に言えるのは、事件時間帯の現場周辺で目撃され、北海道警が情報を求める対象になっていることまでとなる。銃を撃った人物と同一であるかは、刑事司法によって認定されていない。
事件の核心は「誰が撃ったか」だけでなく「なぜ銃弾が人に向かったか」にある
新渡戸さんは銃弾を受けて死亡した。発砲者が判明すれば、使用した銃、発射位置、狙っていた対象、安全確認の有無、発砲後の行動など、現在空白になっている多くの点を検証できる可能性がある。
反対に、発砲者が分からないままでは、過失だったのか故意だったのかという最も基本的な評価にも決着がつかない。北海道警が現在も現場周辺の通行者、2人の人物、青・水色系RV車について情報を求めている理由は、その空白が残っているためである。
2026年8月現在も、北海道警が情報を受け付けている
北海道警は本部と苫小牧警察署の電話番号を掲載し、電子メールでも情報提供を受け付けている。匿名希望にも対応すると明記され、事件当時の記憶を現在から提供することも可能だ。
情報提供者の秘密は厳守するとされ、内容によっては謝礼が支払われる場合もある。ただし匿名希望では謝礼の対象外となり、捜査結果についても原則として連絡しないとしている。長い年月が過ぎた事件でも、当日の通行者や不審な人物・車に関する記憶が情報募集の対象から外れたわけではない。
新渡戸さんの死亡について、発砲者の逮捕や起訴、有罪判決はない。業務上過失致死の時効が報じられた後も、公式ページでは捜査と情報募集が続く。事件は「誤射で解決した事故」ではなく、銃弾を放った人物と発砲の経緯が明らかになっていないまま残されている。
参考資料・出典
- 北海道警察「勇払郡厚真町発生の業務上過失致死事件に関する情報提供のお願い」
- 北海道警察「捜査一課事件関係情報提供」
- 北海道「知事定例記者会見記録(平成23年2月10日)」
- 毎日新聞「北海道厚真銃撃死10年、4日時効」2021年2月3日
- HTB北海道ニュース「10年前の北海道厚真町の銃撃死亡事件 時効が成立」2021年2月
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