堺市連続強盗殺人事件|田村武子さん・尾崎宗秀さんを狙った2件の計画的強盗殺人

公開日 2026年2月19日
最終更新 2026年8月28日

事件ステータス

発生年月日
2011年
都道府県
大阪府
事件分類
強盗・監禁・暴行事件
最終刑・処分
死刑

2011年12月1日、堺市内の住宅で、象印マホービン元副社長の尾崎宗秀さん(84)が金品を奪われたうえで殺害された。捜査線上には、約1カ月前から行方が分からなくなっていた田村武子さん(67)の事件と結びつく一人の男が浮かび上がった。

西口宗宏は、田村さんを買い物先の駐車場から連れ去り、尾崎さん宅には宅配便の配達員を装って侵入した。最高裁が後に重視したのは、2件が偶発的に死へ転じた事件ではなく、別々の機会に殺害用のラップフィルムをあらかじめ準備して実行された点だった。

西口は仕事をしていないのに、内妻へ「仕事で金が入る」などと話していた。その嘘が露見することを恐れ、まとまった金を手に入れようとしたことが、確定判決で認定された犯行の出発点である。

事件名堺市連続強盗殺人事件
発生日2011年11月5日、12月1日
主な場所大阪府堺市・河内長野市
被害者田村武子さん(67)、尾崎宗秀さん(84)
死亡者数2人
被告人西口宗宏
主な罪強盗殺人、営利・生命身体加害略取、逮捕・監禁、死体損壊・遺棄、窃盗、住居侵入、窃盗未遂
一審2014年3月10日 大阪地裁堺支部・死刑
控訴審2016年9月14日 大阪高裁・控訴棄却
上告審2019年2月12日 最高裁第三小法廷・上告棄却
確定刑死刑

11月5日、買い物帰りの田村武子さんが駐車場で襲われた

最初の被害者は堺市に住む田村武子さんだった。最高裁判決によると、西口は買い物帰りの客から金品を奪った後に殺害しようと企て、堺市内の駐車場で自動車に乗り込もうとしていた田村さんを車内へ押し込んだ。

田村さんは目や口、手首、足首を粘着テープで拘束され、車ごと連れ去られた。西口が奪ったのは現金約31万円、キャッシュカードなどで、車はそのまま河内長野市方面へ移動した。

最高裁判決の犯罪事実では、西口が狙ったのは特定の企業関係者だけではない。田村さんについては、買い物を終えて駐車場へ戻る客から金品を奪い、殺害する計画を立てたとされる。田村さんはその日常の途中で標的にされた。

奪われた車は移動手段として使われ、田村さん自身も車内に拘束されたまま運ばれた。強盗、略取、逮捕・監禁が切れ目なく続き、その先で暗証番号の聞き出しと殺害が実行されたというのが確定判決の認定である。

暗証番号を聞き出した後、田村さんを殺害して遺体を焼却

西口は停車させた車内で田村さんからキャッシュカードの暗証番号を聞き出し、顔に食品包装用のラップフィルムを密着させて窒息死させた。さらに河内長野市内の山林で遺体を焼却し、骨片などを投棄したと認定されている。

奪ったカードからは現金5万円が引き出された。田村さんの事件では、金品の強奪、殺害だけでなく、遺体の損壊・遺棄とカードを使った窃盗までが一連の犯罪として審理された。

田村さんの遺体を山林で焼いた行為については、死体損壊・遺棄も成立した。殺害後に遺体を隠すだけではなく、焼却して骨片を投棄するところまで行われており、後の捜査では山中から骨片が見つかることになる。

キャッシュカードから引き出された5万円も別個の窃盗として問題となった。強盗殺人で得たカードを使った現金引き出しまで含め、西口の一連の行動が証拠化され、田村さんの失踪事件を追う捜査の重要な手掛かりとなった。

26日後、尾崎宗秀さん宅へ宅配便の配達員を装って侵入

次の犯行は11月5日から26日後の12月1日だった。被害者の尾崎宗秀さんは西口の知人で、企業の元役員でもあった。西口は宅配便の配達員を装って堺市内の尾崎さん宅へ入り、目や口を粘着テープでふさぎ、手足を結束バンドで拘束した。

現金約80万円とクレジットカードなどを奪い、暗証番号を聞き出した後、田村さんの場合と同じく食品包装用ラップフィルムを顔に密着させて殺害した。カードで現金を引き出そうとしたが、この窃盗は未遂に終わっている。

尾崎さんへの犯行は、田村さんの事件と方法が重なる一方、接近の仕方は異なっていた。西口は面識のない買い物客を駐車場で襲った前件に対し、後件では知人関係を利用し、配達員を装って住宅内へ入っている。

奪った金額も約80万円と大きく、さらにカードの暗証番号を聞き出して現金を得ようとした。ATMでの引き出しは成功しなかったが、確定判決では住居侵入、強盗殺人に加え、このカードを使った窃盗未遂も処罰対象に含まれた。

田村さんの口座から5万円が引き出され、捜査が西口へ向かった

田村さんの行方不明事件では、本人名義の口座から5万円が引き出されていた。2011年12月6日、西口はこの現金を引き出した窃盗容疑で逮捕され、尾崎さん殺害との関連についても捜査を受けることになった。

その後、河内長野市の山中から田村さんのものとみられる骨片が見つかり、2件は同じ被告人による連続強盗殺人として起訴・審理された。最初から「象印元副社長殺害」だけの事件だったわけではなく、田村さんの失踪と金銭被害を追う捜査がもう一つの殺人へつながった。

犯行の出発点は、内妻へついた仕事と収入の嘘だった

最高裁判決は動機を具体的に記している。西口は実際には仕事をしていなかったにもかかわらず、内妻に対して仕事で金が入るなどと話しており、その嘘が露見することを恐れていた。そこで、まとまった金を手に入れようとして2件の犯行に及んだ。

裁判所はこの経緯に酌量の余地を認めなかった。生活上の窮状が偶然重なったという説明ではなく、自らの嘘を維持するために他人の財産と生命を奪う選択をしたことが量刑上重く評価された。

2件とも「奪った後に殺す」準備をしていた

死刑判断で重要だったのは、被害者が2人だったという結果だけではない。最高裁は、2件の強盗殺人が別々の機会に行われながら、いずれも被害者殺害に使うためのラップフィルムを事前に用意していたと指摘した。

つまり、拘束して金品や暗証番号を奪う途中で突発的に殺意が生じたのではない。財物を奪い、その後に被害者を殺害するまでが計画に組み込まれていた。最高裁はこれを「強固な殺意及び財物奪取の意思に基づく計画的なもの」と評価している。

2件の被害者、場所、接近方法は同一ではない。それでも最高裁が共通項として挙げたのが、殺害に使うラップフィルムの事前準備だった。西口は各犯行ごとに同種の道具を準備しており、金品を奪った後に口封じとして殺害する流れが計画段階に含まれていたと評価された。

量刑判断では、死者が2人という結果だけを機械的に取り上げたわけではない。金銭目的の強盗殺人を別々の機会に繰り返したこと、被害者に落ち度がないこと、殺害方法をあらかじめ用意していたこと、動機に酌むべき事情が乏しいことが重ねて検討された。

一審と大阪高裁はいずれも死刑を選択

大阪地裁堺支部は2014年3月10日、西口に死刑を言い渡した。西口側は控訴したが、2016年9月14日、大阪高裁は一審判決を維持して控訴を棄却した。

刑事裁判では、2人の生命が奪われた結果、金銭目的、事前準備、拘束から殺害に至る態様、犯行後の行動などが総合的に検討された。反省の態度など被告人側に有利な事情も考慮されたが、死刑を回避するまでの事情とは評価されなかった。

一審の大阪地裁堺支部が死刑を言い渡したのは2014年3月10日。西口側は判決を不服として控訴したが、2016年9月14日に大阪高裁が棄却し、死刑判断を維持した。さらに上告したため、最終的な量刑判断は最高裁へ移った。

上告審では、死刑制度そのものが憲法に違反するという主張も出された。最高裁は従来の判例を踏まえてこの主張を退けたうえで、本件固有の犯情と被告人に有利な事情を改めて検討し、原判決を破棄する理由はないと判断した。

最高裁は「死刑はやむを得ない」として上告を棄却

2019年2月12日、最高裁第三小法廷は西口側の上告を棄却した。上告趣意には死刑制度の憲法適合性を争う主張も含まれていたが、最高裁は従来の判例を踏まえて退け、記録を調べても刑事訴訟法411条による破棄を要する事情はないとした。

量刑については、2件とも計画的で殺意と財物奪取の意思が強固だったこと、被害者らに落ち度がないこと、平穏に生活していた2人の生命を奪った結果が重大であること、動機が身勝手であることを挙げた。そのうえで、反省の態度などを十分考慮しても死刑はやむを得ないと結論づけている。

「元副社長殺害事件」だけでは見えない、田村武子さんの被害

尾崎さんが著名企業の元副社長だったことから、事件はその肩書とともに伝えられることが多かった。しかし確定判決が扱ったのは、田村武子さんと尾崎宗秀さんという2人への別個の強盗殺人である。

田村さんは買い物帰りに駐車場で突然拘束され、車ごと連れ去られた。尾崎さんは自宅へ配達員を装って入ってきた知人に襲われた。被害者との関係や犯行場所は異なっても、西口は金品を奪った後に殺害する準備をしていた。そこに連続事件としての共通性がある。

2019年に死刑確定、現在も死刑確定者として扱われている

最高裁の上告棄却後、死刑判決は確定した。2026年8月にも西口を死刑囚として扱う取材記事が公開されており、死刑確定後の身分が続いていることが確認できる。

死刑執行の予定は事前に公表されず、個々の収容状況も限定的にしか明らかにならない。公開資料から追える確かな司法上の到達点は、2019年2月の上告棄却によって死刑が確定したことにある。

参考資料・出典

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