名古屋マッチングアプリ巨額結婚詐欺事件|女性6人から1億6244万円を詐取

公開日 2026年6月15日
最終更新 2026年8月14日

2021年9月から2024年3月にかけ、男女2人がマッチングアプリで知り合った女性6人に結婚を信じさせ、事業資金や工事代金などの名目で計1億6244万円をだまし取った。男は建設会社の社長、女は秘書や会社関係者を装い、説明の信用性を補った。

名古屋地裁は2025年8月、詐欺の罪で男に懲役7年、共犯の女に懲役4年を言い渡した。被害者は39歳から47歳で、結婚を前提とした関係だと信じ、貯蓄や借入金を渡していた。

事件名名古屋マッチングアプリ巨額結婚詐欺事件
犯行期間2021年9月~2024年3月
被害者女性6人
被害額計1億6244万円
被告男女2人
判決懲役7年・懲役4年

マッチングアプリで始まった交際

男はマッチングアプリに登録し、安定した会社を経営する人物として女性へ接触した。プロフィールや会話では高い収入、事業の成功、将来の結婚を示し、経済的に信用できる相手だと思わせた。

実際に会った後は、短期間で交際を申し込み、結婚後の住居や家族への紹介を話題にした。被害者ごとに連絡頻度や言葉を変え、相手が求める将来像に合わせて関係を作った。

複数の女性と同時に連絡を取りながら、互いの存在を知られないよう予定を調整していた。交際の証拠となる写真やメッセージが残り、被害者は通常の恋愛関係だと受け止めていた。

被告の男は、被害者の年齢、結婚希望、仕事、貯蓄状況を会話から把握し、相手ごとに将来の約束を調整した。早期に家族へ会わせる話や式の予定を出すことで、通常の交際にとどまらず具体的な婚約へ進んでいると思わせた。アプリ内の本人確認は実在する一人が登録していることを示しても、会社社長という肩書や資産、同時交際の有無を保証しない。被害者は現実に何度も会っていたため、オンラインだけの詐欺より疑いを持ちにくかった。

被害者ごとに別の名前や設定を使ったか、同一プロフィールを使い回したかも、アプリ運営会社の記録から確認された。

会社社長を装った男と秘書役の女

男は建設関連会社を経営していると説明し、工事現場や取引先に関する話を具体的に語った。高級車や事業資料を見せることもあり、資金力があるように装った。

共犯の女は秘書や経理担当者を名乗り、電話やメッセージで男の説明を裏付けた。第三者が会社の存在や支払い予定を説明することで、被害者の疑いを弱めた。

女は送金先の案内、返済日の説明、問題が解決したとの連絡にも関わった。単に男の交際相手として存在したのではなく、虚偽の事業を現実に見せる役割を担っていた。

秘書役が存在すると、会社に従業員と組織があるように見える。女は丁寧な業務連絡を行い、男が会議中、取引先へ出張中などの説明も補った。返済が遅れた際には、経理処理が終われば振り込まれると伝え、個人的な約束を企業間の手続のように見せた。2人の通信記録からは、被害者にどの説明をしたかを共有し、矛盾が出ないよう口裏を合わせていたことが確認された。

秘書役の女が被害者と直接会うことも、会社の実在感を高めた。複数人で同じ虚偽を語ることが詐欺の信用装置になった。

会社名や事務所が実在していても、語られた工事契約が実在するとは限らない。法人登記だけで事業内容まで信用しない確認が必要である。

工事代金や資金繰りを理由にした送金要求

信頼関係を作った後、男は工事代金の入金が遅れた、取引を続けるため一時的な資金が必要だなどと説明した。会社には資産があり、数日から数週間で返済できると約束した。

最初の金額を渡すと、追加工事、税金、口座の問題など別の理由が示された。既に貸した金を返してもらうには、さらに資金を出して事業を完成させる必要があると思わせる構造だった。

被害者の一部は貯蓄を使い果たし、金融機関や知人から借りて送金した。男は結婚後に一緒の財産になる、会社が軌道に乗れば返せると説明し、恋愛関係と事業上の貸付を結び付けた。

建設業では材料費や外注費を先に支払い、元請けからの入金が後になることがある。男はその一般的な資金繰りを利用し、短期の立替えなら不自然でないと思わせた。だが、示された工事名、取引先、入金日は実際の事業で確認できず、返済予定が来るたびに新しい障害が説明された。被害者が契約書や担保を求めても、結婚する相手なのに信用できないのかと感情へ話を移し、正式な貸付手続を避けた。

正規の会社が資金を必要とする場合、銀行融資や取引契約がある。交際相手個人へ無担保で急な振込を求める説明は不自然だった。

女性6人に繰り返された同じ説明

被害者は愛知県内外に住む39歳から47歳の女性6人で、それぞれ男と結婚を前提に交際していると考えていた。男は同じ時期に複数の相手へ類似した資金難を説明した。

送金額は被害者によって異なり、一人から数千万円を受け取った例もあった。返済を求められると、秘書役の女が入金予定や契約の進行を伝え、時間を稼いだ。

会う約束や結婚の準備が延期され、返済も行われない状態が続いた。被害者が強く問いただすと、男は連絡を減らしたり、別のトラブルが起きたと説明したりした。

一人の被害者だけを見れば、事業が失敗して返済できなかった可能性も考えられる。しかし、同じ期間に複数の女性へ結婚を約束し、似た工事話で金を求めていた事実は、当初からの詐欺意図を示した。受け取った金を別の被害者への一時返済に回し、信用を維持することもあった。被害者同士が警察捜査を通じて初めて存在を知ったことで、個別の恋愛トラブルではなく反復された計画だと分かった。

被害者の年齢層が近かったことから、結婚を急ぐ心理を狙って対象を選んだ可能性も捜査で検討された。

各被害者から得た金額と時期を一覧にすると、返済予定が重なり、男の収入では履行できない約束を同時にしていたことが明らかになった。

相談と口座記録から進んだ捜査

被害者の一人が不審に思い、警察へ相談したことで、同じ男から同様の被害を受けた女性が複数いることが分かった。アプリの登録情報、メッセージ、振込記録が共通していた。

警察は男と女の口座を調べ、被害金が事業には使われず、生活費や別の支払いへ回っていたことを確認した。架空の工事や入金予定を示す資料も、実際の取引と一致しなかった。

通信記録には、2人が被害者への説明内容や返済の先延ばしを相談するやり取りが残っていた。捜査機関は、当初から返済する意思や能力がないのに金を受け取ったとして、詐欺容疑で逮捕した。

被害者が保存していたメッセージには、結婚の約束と送金依頼が同じ流れで記録されていた。銀行の振込履歴を重ねると、各女性から入金された直後に生活費、遊興費、別口座への移転が行われ、説明された工事先へ支払われていないことが分かった。警察は会社登記、税務資料、取引先への照会も行い、社長として語った事業実態が乏しいことを確認した。女の口座や端末も、共謀を裏付ける資料となった。

アプリ運営会社への照会で、ログイン端末や登録情報が特定され、被告らがアカウントを管理していたことが裏付けられた。

共謀と被害額が審理された裁判

名古屋地裁の裁判で、男は交際や金銭の受領を認めつつ、事業を立て直して返す意思があったとの趣旨を主張した。女については、詐欺計画をどこまで理解していたかが争われた。

裁判所は、実在しない工事や入金予定を繰り返し説明し、複数の女性に同じ手口を使っていたことから、返済意思を欠いた計画的な詐欺と認定した。女も秘書役として虚偽説明を補強したと判断された。

2025年8月27日、男に懲役7年、女に懲役4年が言い渡された。被害額が1億円を超え、恋愛感情を利用して長期間送金させたことが重く評価された。

詐欺罪では、金を受け取った時点で返す意思や能力がなかったことを立証する必要がある。裁判所は、一部の返済や実際の交際があっても、虚偽の工事を理由に受領した金全体の性質は変わらないと判断した。女については、事務連絡だけにとどまらず、架空の入金予定を知りながら説明し、送金を継続させた点が共犯とされた。被害額、期間、被害者数に加え、結婚願望を利用した精神的影響も量刑で考慮された。

一部被害者への返済は、全体の詐欺を隠して追加金を得るための手段と認定され、返済意思の証明にはならなかった。

女が得た報酬や生活上の利益も調べられ、虚偽連絡を単に頼まれて行ったのではなく、犯行による利益を共有していたと判断された。

判決後に控訴があれば法的状況は変わり得るため、一審判決と確定判決を区別し、公開時点の上級審情報を更新する必要がある。

有罪判決とマッチングサービス上の注意点

事件では、アプリ上の本人確認が、職業や資産、結婚意思まで保証するものではないことが示された。第三者の秘書役が登場しても、その人物が説明を裏付ける共犯である可能性がある。

交際相手から事業資金を求められた場合は、会社の登記、契約相手、請求書、返済原資を本人から渡された資料とは別の経路で確認する必要がある。結婚の約束と送金を結び付ける要求は、特に慎重に判断すべき兆候となる。

男女2人には一審で有罪判決が言い渡された。刑事裁判とは別に、被害金の回復には資産の差押えや民事手続が必要となり、判決だけで全額が返還されるわけではない。

高額な貸付を求められた場合、交際期間の長さや対面回数より、資金使途を第三者が確認できるかが重要である。会社へ直接電話しても秘書役の共犯につながる可能性があるため、登記簿の本店所在地、代表者、決算情報、実在する取引先を独立して確認する必要がある。借用書があっても、相手に資産がなければ回収は困難である。刑事判決は詐欺責任を認定したが、被害者の生活再建には別の民事・支援手続が必要となった。

交際相手への貸付でも、金額、日付、使途、返済期限を文書化し、第三者へ相談することが被害の早期発見につながる。

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