江戸川18歳女性殺害事件|野本結梨香さんの生存偽装と殺人否認、東京地裁が懲役22年

公開日 2026年3月18日
最終更新 2026年8月28日
カテゴリー 2020年代 有期刑 殺人事件

事件ステータス

発生年月日
2023年
都道府県
山梨県 / 東京都
事件分類
殺人事件

2023年6月7日、東京都江戸川区に住む野本結梨香さん(当時18歳)が自宅を出たまま帰らなくなった。ところが、その後も通信アプリには既読や返信が続き、家族や知人からは生きているように見える状態が数か月続いた。11月に父親が行方不明者届を出し、警視庁の捜査が本格化する。

11月27日、山梨県小菅村の山林から野本さんの遺体が見つかった。交際相手だった渥美遼馬は死体遺棄などで逮捕・起訴され、さらに殺人罪で裁判員裁判にかけられた。渥美は遺体遺棄への関与は認めた一方、「自分は刺していない」と殺人を否認した。東京地裁は2026年3月16日、その説明を退けて殺害を認定し、懲役22年を言い渡した。

失踪2023年6月7日
被害者野本結梨香さん(当時18歳)
遺体発見2023年11月27日・山梨県小菅村の山林
被告人渥美遼馬
殺害場所の認定東京都内またはその周辺に駐車した乗用車内
主な争点渥美が野本さんを刺したか
検察側求刑懲役25年
一審2026年3月16日・東京地裁、懲役22年
現在2026年8月時点で控訴審判決は確認できない

6月7日、野本さんは誰かからの連絡を受けて外出

テレビ朝日が初公判で伝えた経過では、野本さんは2023年6月7日午後7時ごろ、誰かから連絡を受けて自宅を出た。渥美との関係はそれ以前から悪化しており、友人や職場の同僚に「連絡を無視している」「別れ話をしている」と相談していたと検察側は主張した。

検察側によると、渥美は殺害前日、「しばらく出張へ行くので借りていた金を返したい」と連絡し、野本さんと会う約束をした。2人は千葉県市川市のラーメン店で食事をし、駐車場を出発。その後に野本さんが生きている姿は確認されなかったとされた。

失踪後も、通信アプリには返信や既読が続いた

野本さんが帰宅しなくなった後も、10月下旬ごろまで通信アプリで返信があったり、既読が付いたりしていた。家族や周囲から見れば、本人がどこかで生活を続けているようにも見える状態だった。

判決では、渥美が野本さんのスマートフォンを使い、生存しているように見せる連絡を続けたと認定された。実際には死亡している人物の端末を操作し、発覚を遅らせた行動は、殺害後の隠蔽を示す事情として量刑でも重く見られた。

11月、父親の行方不明者届から捜査が動いた

10月下旬以降、返信や既読も途絶えた。11月に父親が行方不明者届を提出し、警視庁は野本さんの交友関係や最後の行動を調べた。

捜査の過程で、渥美と、その友人である男性が浮上した。友人の男性への聴取を通じて山梨県小菅村の山林が捜索され、11月27日に野本さんの遺体が発見された。友人は渥美と共謀して遺体を遺棄したとして別に有罪判決を受け、その判決は確定していると2026年の初公判報道は伝えている。

渥美が使っていたワンボックス車は中古車販売店から借りたまま返却されず、別件の横領容疑で捜査対象になった。検察側の冒頭陳述では、この車の後部座席から後に野本さんのものと確認される血痕が見つかったとされた。

失踪者本人の端末から返信が続く一方、本人の血痕が交際相手の使用車両から見つかる。この二つが矛盾したことで、単なる家出や連絡断絶では説明できない状況が強まった。車両の痕跡と友人の供述が、山梨の遺棄現場へつながった。

遺体発見まで約5か月半

遺体は失踪から約5か月半後に見つかった。白骨化が進んでおり、凶器そのものも発見されていなかったため、殺人の犯人性を直接示す証拠には限界があった。

このため渥美の裁判では、遺体遺棄を認めていることとは別に、「野本さんを実際に刺したのは誰か」が中心争点となった。遺体を運び捨てた人物だからといって、殺害者であることが自動的に決まるわけではない。

渥美は初公判で「刺していません」と否認

2026年2月18日の初公判で、渥美は死体遺棄などについては認めたが、殺人について「刺していません」と無罪を主張した。

弁護側の説明は、車内には渥美、野本さん、友人の3人がおり、野本さんがバッグからナイフを出した際、友人が取り上げようとして刺さったというものだった。渥美はその後、友人から助けを求められたため遺体遺棄に協力しただけだと主張した。

検察側は「車内では渥美と野本さんの2人だった」と主張

検察側は弁護側とは正反対の事件像を示した。野本さんが殺害された時、車内には渥美と野本さんの2人しかおらず、渥美がナイフで胸部などを刺したと主張した。

そのうえで、渥美が後から友人を呼び出し、金を貸す約束をするなどして遺体運搬に協力させたとした。友人が殺害現場にいたかどうかは、殺人の犯人性を左右する大きな争点となった。

スマートフォンに残っていた、血痕の付いた野本さんの動画

検察側が重視した証拠の一つが、渥美のスマートフォンに残っていた動画だった。動画には、血の付いたシャツを着た野本さんが写り込んでいたとされる。

判決では、この動画の撮影時刻と、弁護側が殺害に関与したと主張した友人の行動時間が比較された。裁判所は、友人がまだ野本さんと会っていない時間帯に動画が撮られていたことを重視し、友人が刺したという説明と整合しないと判断した。

判決理由を伝えた記事では、渥美側が動画の時刻設定を変更して撮影していたことも検討された。裁判所は、動画の見かけの時刻だけでなく、友人が現場に合流した時間との関係を確かめ、殺害時に友人が車内にいたという弁護側の説明を採用しなかった。

刑事裁判では、スマートフォンのデータも内容だけでなく作成時刻、設定変更、他の行動記録との整合性が問題になる。本件では映像そのものと時間情報が、渥美と野本さんが死亡直前にどのような状況にあったかを推認する材料になった。

ブラジャーの傷は表から裏へ貫通していた

判決理由を伝えた裁判傍聴記事では、遺棄現場で見つかった野本さんのブラジャーに刃物による傷があり、表側から裏側へ貫いていたことが指摘された。

白骨化により身体の刺創を完全な形で確認できない中でも、着衣に残る損傷は攻撃方向を考える客観資料になった。裁判所は、こうした物証と動画、事件前後の行動を組み合わせて殺人の犯人性を判断した。

「救急車を呼ばなかった」ことを裁判所はどう見たか

被告人質問で渥美は、血を流す野本さんに「救急車いるか」と聞いたものの、言葉にならない返事しかなく、「もう駄目だ」と思って119番しなかったと説明した。

さらに、まだ息がある状態の野本さんを車内のフロアマットに横たえたことも認めた。裁判所は、交際相手が死亡しかけているのに傷や呼吸を確認せず、救命措置も取らず動画を撮影した行動は、友人をかばうためだったという説明では不自然だと評価した。

友人の関与を示す証拠は、殺害の核心部分では認められなかった

弁護側は友人がナイフを取り上げた際に刺さったと主張したが、東京地裁は殺害の核心部分に友人が関与したとみる証拠はないと判断した。

友人がブルーシートなどを購入し、遺体運搬に協力したことは死体遺棄の証拠になる。しかし、その行動から殺害まで友人が行ったと推認することはできず、裁判所は渥美の説明を退けた。

男女関係の悪化は「動機になり得る事情」とされた

3月2日の公判では、検察側が2人の関係悪化を動機に結び付けた。野本さんが連絡を避け、別れを考えていたことから、渥美には殺害へ向かう動機となり得る事情があったと主張した。

弁護側は、男女間に問題があったことだけでは殺人の証明にならず、検察側の証人や推論には信用できない部分があると反論した。動機は犯人性を補強する事情にはなっても、それだけで殺害者を決める証拠にはならない。

検察は懲役25年を求刑

3月11日の論告で検察側は、胸部にナイフを深く突き刺したとして強固な殺意を指摘した。さらに、死亡後にスマートフォンを操作して生存を偽装し、遺体を山林へ遺棄した行動を悪質と評価した。

求刑は懲役25年。弁護側は殺人について無罪を維持し、認めている死体遺棄などについては同種事件の中で特に悪質とはいえないとして、執行猶予付きの刑が相当と主張した。

2026年3月16日、東京地裁は殺人を認定

東京地裁の島戸純裁判長は3月16日、渥美による殺害を認定した。共同通信は、裁判所が「女性に落ち度はなく、身勝手な犯行」と評価し、懲役22年を言い渡したと伝えている。

殺人の直接目撃証言や凶器がなくても、動画の時刻、着衣の損傷、救命行為を取らなかったこと、友人の関与を裏付ける証拠がないこと、殺害後の偽装・遺棄などを総合し、渥美の犯行と認定した。

遺体遺棄と殺人は、認否も証拠も分けて判断された

渥美が遺体遺棄を認めていたため、事件全体を最初から「すべて自白した事件」と捉えることはできない。本人は最も重い殺人について否認し、別人が刺したという具体的な反論をしていた。

裁判所は、その反論と客観証拠を照らし合わせたうえで殺害を認定した。死体遺棄への関与から自動的に殺人を推定したのではなく、殺害時の人物関係と事件後の行動を別々に検討した点が、この裁判の中心だった。

友人の男性が遺体運搬へ加わったことは確定しているが、東京地裁はその事実を「友人が殺害した」という方向には評価しなかった。ブルーシートの購入や車の提供は、死亡後の遺棄行為への協力として説明できるとした。

一方、渥美には、野本さんと2人で最後に行動したこと、血痕のある車両、動画、救命措置を取らない行動、生存偽装が重なった。直接証拠が限定された事件で、複数の間接事実が一つの説明へ収束するかが判断された。

2026年8月時点で確認できる司法判断は一審の懲役22年

2026年8月26日時点で、東京高裁の控訴審判決を伝える主要報道は確認できない。少なくとも公表された最新の司法判断は、2026年3月16日の東京地裁による懲役22年判決である。

したがって、現時点で「懲役22年が確定した」とまでは断定できない。一審で殺人が認定され懲役22年が言い渡されたことと、その判決が上級審を経ず確定したかどうかは別の問題になる。

参考資料・出典

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