茨城女子大生殺人事件は、2018年11月、東京都葛飾区で暮らしていた日本薬科大学1年の菊池捺未さん(当時18歳)が、茨城県神栖市周辺で廣瀬晃一に殺害された事件である。裁判では、廣瀬に殺意があったのかが大きな争点となる。弁護側は傷害致死にとどまると主張しましたが、東京地裁は「死亡しても構わない」という未必の殺意を認定。2020年10月19日、懲役20年の求刑に対して懲役14年を言い渡した。
- 菊池捺未さんが東京から茨城県へ向かった経緯
- 初対面だった廣瀬晃一との接点と事件当日の流れ
- 車内で殺害され、神栖市の土中へ遺棄された経緯
- 約2カ月後に遺体発見へ至った捜査の流れ
- 裁判で未必の殺意が認定された理由
- 懲役20年求刑に対して懲役14年となった判決内容
| 事件名 | 茨城女子大生殺人事件 |
|---|---|
| 別称 | 神栖市女子大生殺害事件、茨城女子大生殺害事件 |
| 発生日 | 2018年11月20日から21日にかけて |
| 主な場所 | 茨城県神栖市・鹿嶋市周辺 |
| 被害者 | 菊池捺未さん(当時18歳) |
| 被害者の立場 | 日本薬科大学1年生 |
| 加害者 | 廣瀬晃一 |
| 事件当時の年齢 | 35歳 |
| 2人の接点 | インターネットを通じて知り合い、事件当日に初対面 |
| 殺害方法 | 車内で鼻と口をふさぎ窒息死させた |
| 遺体遺棄 | 神栖市内の土中へ埋めた |
| 遺体発見 | 2019年1月31日 |
| 主な罪 | 殺人、死体遺棄 |
| 一審 | 2020年10月19日、東京地裁が懲役14年 |
| 求刑 | 懲役20年 |
| 現在 | 東京地裁の懲役14年判決を覆す公表上の上級審判断は確認されていない |
2018年11月20日、18歳の大学生が東京から茨城へ向かった
事件が起きたのは2018年11月20日だった。菊池捺未さんは日本薬科大学の1年生。当時は東京都葛飾区で生活していた。この日、菊池さんはインターネット上で連絡を取っていた廣瀬晃一に会うため、東京から茨城県方面へ移動する。
2人は長年の友人でも、交際相手でもない。捜査段階の報道では、インターネット上で知り合い、実際に顔を合わせるのはこの日が初めてだったとされている。菊池さんはJR鹿島神宮駅方面まで移動し、その後タクシーを利用。神栖市内のコンビニエンスストア周辺などを経て、廣瀬と接触した。
ネット上だけの知人と初対面|事件当日の接触
当時、廣瀬は神栖市内で生活していた。菊池さんは自宅から100キロ近く離れた地域まで一人で移動している。事件後、「なぜ会いに行ったのか」という点が強く注目された。裁判で認定された事件の発端には、廣瀬が菊池さんへ金を支払うという話をしながら、その支払いを免れようとしたことがあった。
一方、後年ネット上では「パパ活」「援助交際」などの言葉で事件が語られることがある。ただし、そうした俗称をそのまま確定事実として扱うのは適切ではない。刑事裁判で廣瀬が金銭をめぐって菊池さんをだまそうとし、その後のトラブルから殺害へ進んだと認定された点である。
支払いをめぐるトラブルから車内で殺害
廣瀬と菊池さんの間では、約束していた金銭をめぐってトラブルになった。2020年の東京地裁判決によると、廣瀬は2018年11月20日から21日にかけて、神栖市や鹿嶋市周辺の路上に止めた車内で菊池さんを殺害した。方法は、鼻と口を手でふさぎ続けるというものだ。
廣瀬は後の裁判で、殺すつもりはなかったと争った。しかし、窒息するまでには短くない時間がかかる。東京地裁は、廣瀬が小柄な菊池さんに対し、手加減せず力を込め、体重をかけるようにして鼻口部を少なくとも5〜6分間ふさいだと認定した。18歳の菊池さんは、逃げ場の限られた車内で窒息死した。
遺体を神栖市の土中へ埋め、事件発覚を免れようとした
菊池さんが死亡した後、廣瀬は警察へ届け出なかった。遺体を神栖市内へ運び、人目につきにくい場所の土中へ埋める。裁判所は、この行為について犯行の発覚を免れようとした死体遺棄と評価した。
菊池さんは家族や知人の前から突然姿を消した状態になる。生きているのか。どこかで助けを求めているのか。遺体が土中に隠されたことで、家族は娘の安否すら分からない時間を過ごすことになった。
菊池捺未さんの行方を追う警視庁|最後の足取りを解析
菊池さんと連絡が取れなくなった後、警視庁は行方を捜した。捜査では、携帯電話の通信状況、移動経路、交通機関、防犯カメラ、タクシー利用など、事件直前の足取りが調べられる。東京で暮らしていた大学生が、なぜ茨城県まで移動したのか。
その過程を追う中で、事件直前に接触していた人物として廣瀬が浮上した。廣瀬は当初からすべてを明らかにしたわけではありませんが、捜査が進むにつれ、菊池さんの死亡と遺棄場所に関する供述が得られる。
2019年1月31日、約2カ月ぶりに遺体発見
2019年1月31日未明、警視庁は神栖市内の土中から女性の遺体を発見した。その後、行方不明となっていた菊池捺未さんと確認される。2018年11月20日に消息を絶ってから、約2カ月。
家族が待ち続けた末の発見は、生存確認ではなかった。警視庁は同日、当時35歳だった廣瀬を死体遺棄容疑で逮捕した。ここで注意したいのは、最初から殺人罪で逮捕されたわけではない点である。まず遺体を埋めた行為について身柄を確保し、その後、殺害状況の捜査が進められた。
廣瀬晃一には事件前にも少女をめぐる検挙歴があった
逮捕後、廣瀬の過去も注目された。事件前には、少女をめぐる児童買春・児童ポルノ禁止法違反などで検挙された経歴が報じられている。2017年には、SNSを通じて知り合った女子高校生に現金を渡し、みだらな行為をした事件で有罪判決を受けたとされる。
さらに別件でも若い女性との接触をめぐって捜査対象となっていた。ただし、過去の性犯罪歴があることだけで、本件を性犯罪目的の殺人と断定することはできない。菊池さん殺害事件の裁判では、金銭の支払いを免れようとしたことから生じたトラブルが事件の発端として認定された。
殺人と死体遺棄で起訴|裁判の争点は「殺意」
捜査を経て、廣瀬は殺人と死体遺棄の罪で起訴された。2020年10月6日、東京地裁で裁判員裁判が始まる。廣瀬側は、菊池さんの鼻と口をふさいだ行為自体について全面的に否定したわけではない。
争われたのは、殺す意思があったかである。弁護側は、携帯電話をめぐってもみ合いになり、殺害するつもりはなかったとして、殺人罪ではなく傷害致死罪にとどまると主張した。検察側は、長時間にわたり鼻口部をふさぎ続けた行為から殺意は明らかだとして、懲役20年を求刑する。
東京地裁が認定した「未必の殺意」
刑法上の殺意は、「絶対に殺してやる」という確定的な意思だけではない。相手が死亡する危険を認識しながら、それでも構わないとして行為を続けた場合、未必の故意が認定されることがある。本件で東京地裁が重視したのは、次の事情だった。
- 廣瀬と菊池さんの間に大きな体格差があったこと
- 逃げ場の限られた車内で犯行に及んだこと
- 鼻と口を両手でふさいだこと
- 手加減せず力を込めたこと
- 少なくとも5〜6分間ふさぎ続けたこと
これらを踏まえ、裁判所は「死亡しても構わない」という認識があったと判断。傷害致死ではなく殺人罪を認定した。
2020年10月19日、懲役14年判決
2020年10月19日、東京地裁は廣瀬晃一に懲役14年を言い渡した。検察側の求刑は懲役20年である。裁判所は、廣瀬が被害者をだまして金銭の支払いを免れようとしたことが事件の発端であり、動機は身勝手だと指摘した。
さらに、殺害後に遺体を土中へ埋め、発覚を免れようとした行為も強く非難している。一方、殺害そのものが事前に周到に計画されていたとは認められず、確定的な殺意まであったとはされなかった。そうした事情を含めた結果が、懲役14年だった。
なぜ懲役14年だったのか|「殺人なら軽い」という単純比較はできない
判決後、「殺人と死体遺棄で14年は軽いのではないか」という疑問も出た。しかし殺人罪の量刑は、罪名だけで一律に決まらない。裁判所は、犯行の計画性、殺意の強さ、殺害方法、動機、被害者数、犯行後の行動、前科などを総合する。
本件では、鼻口部を数分間ふさぐ悪質な行為から殺意は認定された。その一方、当初から菊池さんを殺害する計画を立てて呼び出したとは認定されず、殺意も確定的ではなく未必の殺意と判断されている。東京地裁はその全体を評価し、求刑20年に対して14年を選択した。
現在の状況|東京地裁の懲役14年判決
現在も、公表された主要な司法判断として確認できるのは、2020年10月19日の東京地裁判決である。東京地裁は殺人と死体遺棄を認定し、廣瀬に懲役14年を言い渡した。その後、この懲役14年判決を変更・破棄した上級審判断は公表上確認されていない。
したがって、少なくとも「無罪になった」「死刑になった」「無期懲役が確定した」といった説明は正確ではない。
被害者の私生活を憶測で裁くべきではない
この事件では、菊池さんがなぜ東京から茨城まで会いに行ったのかをめぐり、多くの憶測が広がった。ネット上では「パパ活」「援助交際」といった言葉が断定的に使われ、被害者自身の行動を責める書き込みも見られる。しかし、金銭を伴う約束があったとしても、それは殺害される理由にはならない。
約束をめぐって争いになったとしても、相手の鼻と口をふさぎ続け、死亡させ、遺体を埋める行為が正当化されることはない。刑事裁判で責任を問われたのは、菊池さんではなく、殺害して遺体を隠した廣瀬である。被害者の行動を必要以上に詮索し、確定していない情報で人格まで評価することは、事件の本質を見失わせる。
茨城女子大生殺人事件が残したもの
2018年11月20日、18歳の大学生が東京を出た。向かった先は茨城県。会う相手は、インターネット上で知り合った35歳の男だった。菊池さんはその夜、家へ戻らなかった。
廣瀬は車内で菊池さんの鼻と口をふさぎ、死亡させる。その後、遺体を神栖市内へ運び、土の中へ埋めた。家族が安否を案じる中、約2カ月が過ぐ。2019年1月31日、菊池さんは遺体で発見された。
大学へ進学したばかりの18歳の生活は、初めて会った相手によって断ち切られた。裁判では殺意が争われましたが、東京地裁は未必の殺意を認定。廣瀬が被害者をだまして金銭の支払いを免れようとしたことが発端であり、動機は身勝手だと厳しく指摘している。同時に事件後は、被害者の私生活をめぐる憶測が大量に広がった。
茨城女子大生殺人事件は、ネット上だけで知り合った相手との接触が重大犯罪へつながった事件であると同時に、金銭トラブル、未必の殺意、遺体遺棄、そして被害者への二次加害を考えさせる事件である。
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