茨城女子大生殺人事件|菊池捺未さん殺害、東京地裁が廣瀬晃一に懲役14年

公開日 2026年3月9日
最終更新 2026年8月28日

事件ステータス

発生年月日
2018年
都道府県
茨城県
事件分類
マッチングアプリ・SNS関連 / 殺人事件

2018年11月20日、東京都葛飾区で暮らしていた日本薬科大学1年の菊池捺未さん(当時18歳)は、インターネットを通じて連絡を取っていた廣瀬晃一に会うため茨城県へ向かった。2人が実際に顔を合わせたのはこの日が初めてだった。

菊池さんはその夜から消息を絶ち、約2か月後の2019年1月31日、茨城県神栖市内の土中から遺体で発見された。警視庁は廣瀬を死体遺棄容疑で逮捕し、その後、殺人容疑でも立件した。裁判では鼻と口をふさいだ行為による殺意の有無が争われ、東京地裁は未必の殺意を認定して懲役14年を言い渡した。

事件名茨城女子大生殺人事件
発生2018年11月20日~21日ごろ
主な場所茨城県神栖市・鹿嶋市周辺
被害者菊池捺未さん(当時18歳、日本薬科大学1年)
被告人廣瀬晃一
罪名殺人、死体遺棄
遺体発見2019年1月31日
一審2020年10月19日、東京地裁が懲役14年
求刑懲役20年

東京から鹿島神宮駅方面へ向かった菊池捺未さん

菊池さんは11月20日、東京都内から茨城県鹿嶋市の鹿島神宮駅方面まで移動した。報道では、駅からタクシーを利用し、神栖市内のコンビニエンスストア付近まで向かったことが確認されている。廣瀬とはインターネット上で知り合い、直接会うのは初めてだった。

2人の間には会うことをめぐる金銭の約束があり、後の裁判では、廣瀬がその支払いを免れようとしたことが事件の発端として認定された。事件後には被害者側の私生活をめぐる様々な呼称や憶測が広がったが、判決で刑事責任を問われたのは、廣瀬が金銭をめぐるトラブルの後に菊池さんを死亡させ、遺体を隠した行為だった。

車内で鼻と口をふさぎ、菊池さんを窒息死させた

東京地裁が認定したところによると、廣瀬は神栖市や鹿嶋市周辺の車内で菊池さんの鼻と口を手でふさいだ。廣瀬は体格で勝る立場から、小柄な菊池さんに対して手加減せず、体重をかけるようにして鼻口部を少なくとも5~6分間ふさいだとされた。

弁護側は、携帯電話をめぐるもみ合いの中で起きた行為で、殺害する意思はなかったとして傷害致死にとどまると主張した。検察側は、呼吸を妨げる行為を長時間続ければ死亡する危険を認識できたとして殺人罪の成立を求めた。

裁判所は、廣瀬に最初から確定的な殺害意思があったとまでは認定しなかった。一方、鼻と口をふさぎ続ける行為の危険性から、菊池さんが死亡しても構わないという認識があったと判断し、未必の殺意を認定した。

殺害後、神栖市内の土中へ遺体を埋めた

菊池さんが死亡した後、廣瀬は遺体を警察や救急へ届け出ず、神栖市内の人目につきにくい場所へ運んで土中に埋めた。殺害と死体遺棄によって菊池さんの所在は分からなくなり、家族は長期間にわたり安否を確認できない状態に置かれた。

警視庁は、菊池さんの携帯電話の通信状況、交通機関の利用、防犯カメラ、タクシーの移動などを調べ、最後に接触した人物を追った。東京で生活していた大学生が茨城県まで移動した足取りをたどる中で、廣瀬との接点が捜査の中心になった。

2019年1月31日、約2か月後に遺体を発見

2019年1月31日未明、警視庁は神栖市内の土中から女性の遺体を発見した。遺体は行方不明となっていた菊池捺未さんと確認され、同日、当時35歳だった廣瀬が死体遺棄容疑で逮捕された。

逮捕当初は遺体を埋めた行為についての死体遺棄容疑だった。警察は発見された遺体の状況、廣瀬の供述、事件当日の移動などを調べ、菊池さんがどのように死亡したかを捜査した。その結果、鼻と口をふさいで窒息死させたとして殺人容疑でも立件され、殺人と死体遺棄の罪で起訴された。

2020年の裁判員裁判|争点は「殺意があったか」

廣瀬の裁判員裁判は2020年10月、東京地裁で開かれた。廣瀬側は、鼻と口をふさいだ行為そのものを全面的に否定するのではなく、死亡させる意思があったかを争った。弁護側は傷害致死罪の成立を主張し、検察側は殺人罪として懲役20年を求刑した。

殺人罪の故意は、相手を確実に死亡させようとする意思だけに限られない。死亡する危険を認識しながら、その結果が生じても構わないとして行為を続けた場合には未必の故意が成立する。東京地裁は、鼻口部をふさいだ時間、力の加え方、両者の体格差などを重視した。

判決では、体格で勝る廣瀬が小柄な菊池さんへ手加減せず力を加え続けたことを悪質と評価した。死亡する危険を理解しながら行為を継続したとして殺意を認定し、傷害致死ではなく殺人罪を成立させた。

2020年10月19日、懲役14年判決

2020年10月19日、東京地裁は廣瀬晃一に懲役14年を言い渡した。検察側の求刑は懲役20年だった。裁判所は、廣瀬が金銭の支払いを免れようとしたことが事件の発端となった点を身勝手な動機として非難し、殺害後に遺体を埋めて発覚を免れようとした行為も不利な事情として評価した。

一方で、菊池さんを当初から殺害するため周到な計画を立てて呼び出したとまでは認定されず、殺意も確定的なものではなく未必の殺意とされた。こうした事情を含め、裁判所は求刑20年に対して懲役14年を選択した。

18歳の被害者と、初対面の相手との一日

菊池さんは大学へ進学したばかりで、事件当日はインターネットで連絡を取っていた相手と初めて会うため遠方まで移動した。その日のうちに車内で命を奪われ、遺体は土中へ隠された。家族が行方を捜す中、発見まで約2か月を要した。

判決が認定した事件の中心は、会うまでの経緯そのものではなく、金銭をめぐるトラブルの後に廣瀬が呼吸を妨げる行為を続け、菊池さんを死亡させたことにある。東京地裁は未必の殺意を認定し、殺人と死体遺棄について刑事責任を認めた。

公表されている司法判断は東京地裁の懲役14年

2026年8月までに確認できる主要な公表資料では、2020年10月19日の東京地裁判決が本件の量刑判断として示されている。上級審で懲役14年を変更した判決は確認できず、記事上は東京地裁が殺人と死体遺棄を認定して懲役14年を言い渡した経過を基準に整理できる。

事件では、被害者の行動やインターネット上の出会い方が注目されたが、刑事裁判で具体的に審理されたのは廣瀬の殺意、殺害方法、遺体を埋めた行為、動機と量刑だった。被害者の人物像を憶測で補うのではなく、判決と確認可能な捜査経過から事件の骨格をたどることができる。

行方不明事件から死体遺棄事件、殺人事件へ

菊池さんが帰宅せず連絡も取れなくなった当初、捜査は行方不明者の足取りを確認するところから始まった。東京都内から鉄道で茨城県へ移動し、鹿島神宮駅付近からタクシーを利用した経路を追うことで、最後に接触した廣瀬との関係が浮かび上がった。

遺体が発見された2019年1月31日、警視庁がまず適用したのは死体遺棄容疑だった。遺体を埋めた事実と遺棄場所に関する捜査を先行させ、その後、司法解剖や供述、事件当日の行動を重ねて殺害方法を特定し、殺人容疑へ捜査を進めた。

この逮捕の順序は、殺害と遺体遺棄が別の犯罪として捜査・立件されたことを示している。最終的には殺人と死体遺棄の双方が起訴され、裁判員裁判で一括して審理された。

未必の殺意を認定した理由

東京地裁が殺意の判断で重視したのは、鼻と口をふさいだという行為の性質と継続時間だった。呼吸を完全に妨げる状態が数分間続けば生命に重大な危険が生じる。判決は、廣瀬が体格差のある菊池さんに対して手加減せず力を加え続けた点を具体的に評価した。

弁護側が主張した傷害致死と、裁判所が認定した殺人の違いは、死亡結果をどこまで認識していたかにある。裁判所は、最初から積極的に死亡させようとした確定的殺意までは認めなかったが、死亡する危険を認識しながら行為を続けたとして未必の故意を認定した。

量刑では、金銭をめぐるトラブルから犯行に至った身勝手さ、呼吸を奪う方法の悪質性、死亡後に遺体を埋めて発覚を遅らせた行為が不利に評価された。一方、殺害のために事前から周到な準備を整えていた事件とは区別され、懲役20年の求刑に対して懲役14年となった。

遺体発見までの約2か月が残したもの

菊池さんが消息を絶った2018年11月20日から、遺体が見つかった2019年1月31日まで約2か月が経過した。遺体を土中へ埋めたことで、家族は生存しているのか、どこにいるのかも分からない状態で捜索結果を待つことになった。

事件の報道では、2人がどのように知り合ったかや金銭の約束が注目された。しかし確定した一審判断で中心となったのは、廣瀬が菊池さんの呼吸を妨げて死亡させ、遺体を埋めた事実と、その行為に殺意が認められるかという点だった。

懲役14年という量刑で考慮された事情

東京地裁は、死亡結果の重大さだけで刑を決めたわけではない。鼻口部を長時間ふさいだ行為、金銭をめぐる身勝手な動機、死亡後に遺体を土中へ隠した行為を重く評価する一方、当初から殺害を目的として周到に準備した事件ではないこと、殺意が確定的ではなく未必の故意と認定されたことも量刑に反映した。

検察側は懲役20年を求刑していたが、裁判所は殺人の計画性や殺意の強さを区別し、懲役14年を選択した。殺人罪が成立したから直ちに無期懲役や死刑になるのではなく、被害者数、犯行方法、動機、計画性、前科、犯行後の行動などを総合して刑が決められる。

本件では、菊池さんを窒息死させた行為と遺体遺棄の双方が有罪とされ、廣瀬の刑事責任は重いと判断された。そのうえで、裁判所が認定した殺意の程度と事件発生までの経緯が、求刑との差に表れた。

参考資料・出典

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