明石父親ミイラ化遺体事件|2015年の死亡を6年間届けず、年金約920万円を詐取

公開日 2026年6月26日
最終更新 2026年8月28日

事件ステータス

発生年月日
2015年
都道府県
兵庫県
事件分類
死体遺棄事件

2021年12月、兵庫県明石市の民家で、1階和室に置かれた男性のミイラ化遺体が見つかった。発見のきっかけは、何度訪ねても高齢の父親本人に会えないことを不審に思った福祉担当者からの連絡だった。

裁判で認定された死亡時期は2015年12月下旬。父親は74歳で死亡し、同居していた次男は遺体を約6年間そのままにしながら死亡届を出さず、父親が生存しているように装って老齢年金を受け取り続けた。入金は37回、合計約920万円に及んだ。

場所兵庫県明石市の民家
父親の死亡2015年12月下旬・74歳
遺体発見2021年12月22日
同居父親、長男、次男の3人世帯
発見場所1階和室
次男逮捕時42歳、判決時43歳
起訴罪名死体遺棄、詐欺
年金入金37回・合計約920万円
判決2022年4月18日、神戸地裁・懲役2年8月
求刑懲役4年

福祉担当者が「本人に会えない」と警察へ相談した

父親は高齢者として行政の確認対象になっていたが、担当者が自宅を訪ねても本人と直接会えない状態が続いた。家族からは不在を理由に面会できないとされるなど、安否を確かめられない状況が重なった。

2021年12月22日、福祉担当者から連絡を受けた警察が住宅を確認し、1階の和室でミイラ化した男性の遺体を発見した。住宅では父親と40代の息子2人が同居していたとみられていたため、長期間にわたり死亡が外部へ伝わっていなかったことが直ちに捜査対象となった。

発見直後は「80歳前後、死後2〜3年」とみられていた

遺体発見直後の段階では、男性は当時80歳だった住人とみられ、死後2〜3年程度が経過しているとの見方も伝えられた。遺体の状態だけから正確な死亡時期を判断することは難しく、警察は身元や生活状況、年金の動きなどを調べた。

ところが、その後の捜査と裁判で示された死亡時期はさらに古かった。神戸地裁が認定したのは2015年12月下旬。父親は当時74歳で、発見まで約6年間が経過していた。初報の推定と最終的な裁判認定には大きな差がある。

この修正は放置期間だけの問題ではなかった。死亡時期を2015年末まで遡ることで、父親の死亡後に口座へ入った年金の回数と金額も追えるようになった。金融記録と年金支給記録が、遺体だけでは確定しにくい長期間の経過を具体的な数字で示す材料になった。

同居していた息子2人が死体遺棄容疑で逮捕された

警察は、父親の死亡を知りながら遺体を自宅に置き続けた疑いで、同居していた長男と次男を死体遺棄容疑で逮捕した。次男は父親が死亡したことを認識していたとされ、後の公判では自らの起訴事実を認めた。

長男は逮捕当初、父親が死亡しているとは知らなかったとして容疑を否認した。一方、次男は父親の年金を頼りに生活していたため死亡を届けなかった趣旨を述べ、神戸地裁の公判でも死体遺棄と詐欺の起訴事実を認めた。2022年4月に実刑判決を受けたのは次男だった。

父親が死亡した後も、死亡届を出さなかった

次男は2015年12月下旬に父親が死亡したことを知りながら、遺体を和室に放置した。死亡届を出さず、年金の停止に必要な手続も行わなかったため、父親名義の口座には死亡後も老齢年金が振り込まれ続けた。

日本年金機構では、年金受給者が死亡した場合、死亡に伴う手続が必要となる。死亡月までに支給されるべき未支給年金を一定の遺族が請求できる制度はあるが、死亡後も本人の受給権がそのまま継続するわけではない。届け出が遅れて死亡後の期間に対応する年金を受け取れば、過払い分は返還の対象になる。

年金受給者が亡くなった時点ですでに支給期を迎えていない分については、「未支給年金」として一定の遺族が請求できる場合がある。これは死亡した本人が生きているように扱って受給を続ける制度ではなく、死亡月までに本人へ支給されるはずだった年金を遺族が適法に請求する仕組みである。

今回の事件では、単に死亡手続が遅れたという扱いでは終わらなかった。次男は父親が死亡したことを知りながら生存しているように装い、年金の振込を継続させたと認定された。父親の死亡を隠した目的と金銭の取得が結び付き、詐欺罪として起訴された。

37回にわたり、合計約920万円の年金が振り込まれた

父親の死亡後、口座には老齢年金が37回振り込まれ、その合計は約920万円となった。次男はこの金を生活費などとして使い、父親が死亡した事実を外部へ知らせない状態を続けた。

37回という入金回数は、一時的な過払いではなく、数年にわたり同じ状態が続いたことを示している。次男は受け取った年金を生活に使い、判決時点でも被害弁償はされていなかった。

公判で次男は起訴内容を認め、父親の年金に頼って生活していたため死亡を言い出せなかった趣旨を述べた。父親の死亡を隠すことと、年金を得続けることが約6年間並行して続いていた。

問われたのは父親の死亡そのものではなく、死亡後の二つの行為だった

この事件で次男が裁かれた罪は死体遺棄と詐欺である。父親を殺害したとして起訴された事件ではなく、父親が死亡した後、遺体を長期間放置したことと、生存を装って年金を受け取ったことが刑事責任の対象となった。

長期間遺体が自宅にあったという事実から、死亡原因まで犯罪と結び付けて考えることはできない。神戸地裁の判決が認定した犯罪行為は、2015年末以降の遺体放置と年金の詐取だった。

死体遺棄罪で問題となったのは、通常期待される葬送・届出につなげず、遺体を自宅内に置いたままにした行為である。詐欺罪では、死亡によって本来停止されるべき父親の年金について、生存しているように装って支給を継続させた行為が別個に評価された。二つは同じ「死亡を隠した」経過から生じたが、保護する法益も犯罪の内容も異なる。

検察は懲役4年を求刑し、弁護側は反省などを主張した

神戸地裁の公判で、検察側は死体を約6年間放置した期間の長さと、年金約920万円をだまし取った結果を重視し、懲役4年を求刑した。詐取した金銭について被害弁償が行われていないことも指摘された。

次男は起訴事実を認めたうえで、年金に依存していた事情や反省を述べた。裁判では、遺体を長期間放置した行為が死者の尊厳を大きく損ねたこと、年金を得続けるため死亡を隠した動機に酌むべき事情が乏しいことが量刑判断の中心となった。

2022年4月18日、神戸地裁は懲役2年8月の実刑を言い渡した

2022年4月18日、神戸地裁は次男に懲役2年8月を言い渡した。求刑は懲役4年だった。裁判所は、父親の遺体を約6年間も放置した行為について、死者の尊厳を害する程度が大きいと評価した。

年金詐欺についても、37回にわたり約920万円を受け取り、被害弁償がされていないことを重く見た。生活を年金に頼っていたため死亡を届け出なかったという動機は自己中心的だとされ、実刑が相当と判断された。

一方で、裁判所は求刑4年をそのまま採用したわけではなく、次男が公判で起訴事実を認めていた事情なども踏まえて懲役2年8月とした。判決の中心は、約6年という放置期間の長さと、年金取得を続けるため死亡を隠した動機、被害額と弁償状況の組み合わせにあった。

高齢者への訪問が、6年間表面化しなかった死亡を明らかにした

事件が発覚した直接のきっかけは、刑事事件とは別に行われていた高齢者への安否確認だった。担当者が父親本人に会えない状態を不自然とみて警察へ連絡し、自宅への確認につながった。家族から説明を受けるだけで終わらず、本人との接触を求めたことが発見に直結した。

発見直後には死後2〜3年とみられていた遺体が、捜査によって2015年末の死亡まで遡った。そこに年金の入金記録を重ねることで、6年間に起きていたことが刑事裁判で具体化された。遺体の放置期間、37回の入金、約920万円という金額は、それぞれ別の証拠から組み立てられた事実だった。

父親の死亡から遺体発見まで約6年。その間、父親の口座には年金が継続して入金されていた。最終的な刑事裁判では、遺体の存在だけでなく、死亡を隠した状態が公的年金の受給継続と結び付いていたことが、死体遺棄と詐欺という二つの罪として認定された。

参考資料・出典

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