旭川女子中学生いじめ凍死事案|廣瀬爽彩さん死亡、再調査が認定した7件のいじめと2026年和解

公開日 2026年3月3日
最終更新 2026年8月28日

事件ステータス

発生年月日
2021年
都道府県
北海道
事件分類
マッチングアプリ・SNS関連 / 少年犯罪 / 性犯罪

最初の第三者調査は複数のいじめを認定したものの、廣瀬爽彩さんの死亡との因果関係を明らかにできなかった。ところが旭川市が設けた再調査委員会は2024年、7件のいじめを認定し、いじめ被害がなければ爽彩さんの自殺は起こらなかったと判断した。

爽彩さんは北海道旭川市の中学2年生で、14歳だった。2021年2月13日に自宅を出た後に行方不明となり、3月23日に市内の公園で死亡しているのが見つかった。学校と市教育委員会が2019年の段階で事態を重大ないじめとして扱わなかったことは、その後の二つの調査と民事訴訟で大きな問題となった。

被害生徒廣瀬爽彩さん(14)
いじめが始まった時期2019年・中学入学後
行方不明2021年2月13日
発見2021年3月23日、旭川市内の公園
最初の調査2022年9月、6件のいじめを認定
再調査2024年、7件のいじめを認定
再調査の結論いじめが自殺の主たる原因であった高度の蓋然性を認定
民事訴訟遺族が2025年2月に旭川市を提訴
和解2026年3月26日、損害額7000万円で成立

2019年の中学入学後、教室内のからかいと孤立が始まった

爽彩さんは2019年4月に中学校へ入学した。再調査では、教室内で動作をまねされる、からかわれるといった扱いを受け、周囲との関係が次第に崩れていったことが確認された。最初の第三者調査で十分に扱われなかった学校内の行為も、再調査ではいじめの一つとして認定された。

教室で孤立する中、爽彩さんは校外で上級生らと接点を持つようになる。そこで性的な画像・動画を求められるなどの行為を受け、本人にとって強い負担となる出来事が重なった。再調査委員会は、学校内外の出来事を切り離さず、被害が連続していた過程として検討した。

校外では性的ないじめが繰り返され、2019年6月には川へ入った

2019年春から初夏にかけ、爽彩さんは複数の関係生徒から性的な内容を伴う要求や行為を受けた。再調査は、本人の意思に反して性的な画像等を求められたことを含め、複数の行為をいじめと認定している。

同年6月、爽彩さんは川へ入る出来事を起こし、救助された。この時点で本人の心身に深刻な変化が表れていたが、学校側は一連の出来事を重大事態として直ちに調査する対応を取らなかった。後の検証では、この初動が重要な分岐点として扱われる。

学校と市教委は、重大事態としての組織的対応を取らなかった

いじめ防止対策推進法では、生命・心身に重大な被害が生じた疑いがある場合などに「重大事態」として調査する枠組みがある。爽彩さんの事案では、2019年の段階で学校や市教委が重大事態として扱わず、関係生徒への事実確認や本人への継続的支援が不十分なまま推移した。

再調査報告書は、爽彩さんの行動を本人側の「問題行動」として捉える傾向があり、背景にあるいじめ被害を中心に据えた対応ができなかったと指摘した。学校だけで抱えず、市教委が専門的・組織的に支える体制も機能しなかった。

被害後、爽彩さんには長期にわたる心理的影響が残った

再調査委員会は医療記録や関係者の聴取などを検討し、爽彩さんがいじめによってPTSDを発症していたと判断した。恐怖感、自己評価の低下、自責感などが長く続き、その後の生活や対人関係に影響していたとされた。

重要なのは、個々の出来事を「その時点で終わったトラブル」とせず、被害の影響が後まで継続したと評価した点にある。再調査では、2019年のいじめと2021年の死亡との間に時間が空いていても、心理的影響が途切れていたとは認めなかった。

2021年2月13日に行方不明となり、3月23日に公園で見つかった

爽彩さんは2021年2月13日に自宅を出た後、行方が分からなくなった。警察や家族らによる捜索が続き、約1か月後の3月23日、旭川市内の公園で死亡しているのが発見された。死因は低体温症だった。

中学生の死亡と過去のいじめ被害が広く知られるようになり、学校と市教委が2019年に何を把握し、どのような対応をしていたのかが問われた。旭川市は、いじめ防止等対策委員会による重大事態調査を進めることになる。

2022年の最初の調査は6件をいじめと認定したが、因果関係を特定しなかった

最初の第三者委員会は2022年9月に最終報告をまとめた。性的な内容を含む行為など6件をいじめと認定し、学校や市教委の対応上の問題も検討した一方、いじめと爽彩さんの自殺との因果関係については明確な結論を出さなかった。

最初の重大事態調査は2021年6月4日に第三者委員会へ諮問され、1年以上の調査を経て2022年9月12日に答申された。報告書は20項目の再発防止策を示したが、遺族側は、事実認定や因果関係の検討が不十分だとして再調査を求めた。

旭川市は2022年12月7日に再調査委員会を設置し、同月22日に諮問した。委員5人による調査は、最初の委員会が集めた資料を読むだけでなく、追加の聴取や医療・心理面の検討を重ね、2024年9月1日の答申まで約1年9か月続いた。

再調査は学校内の行為を加え、いじめを7件と認定した

再調査委員会は資料の再検討と追加聴取を進め、2024年に報告書を提出した。最初の調査で認定された校外の行為だけでなく、教室内でのからかいや孤立につながる行為も加え、計7件をいじめと判断した。

また、いじめを受けた経緯、PTSD、長期的な心理状態を連続して検討した。単に「いじめが存在した」という認定にとどまらず、それが爽彩さんの死亡へどの程度影響したのかを中心課題として結論を示した。

「いじめ被害がなければ自殺は起こらなかった」と結論付けた

再調査報告書は、いじめ被害が爽彩さんの自殺の主たる原因であった高度の蓋然性があると判断した。旭川市長も2024年8月の会見で、報告書の趣旨として「いじめ被害が存在しなければ、当該生徒の自殺は起こらなかった」と説明している。

これは2022年の最初の調査から大きく踏み込んだ結論だった。学校内外で受けた被害、PTSD、その後も続いた心理的影響を一連の経過として評価し、死亡との因果関係を認めたためである。

再調査は学校・市教委の対応を検証し、29項目を提言した

再調査では、学校が爽彩さんの行動を中心に捉え、被害を受けている生徒として十分に支援できなかったこと、市教委が学校へ必要な助言や組織的支援を行えなかったことなどが検証された。

最初の調査報告書には20項目の再発防止策が盛り込まれていたが、再調査委員会はさらに29項目の提言をまとめた。重大事態の早期把握、被害生徒を中心にした支援、学校と教育委員会の情報共有や専門職の活用など、初動から検証体制まで広い範囲を対象としている。

遺族は2025年に旭川市を提訴し、2026年3月に和解した

遺族は2025年2月、学校と市教委の対応に法的責任があるとして旭川市へ損害賠償を求める訴訟を起こした。市側は、校外のいじめを重大事態として認識すべきだった点は認めつつ、教室内のいじめを把握できたか、死亡を予見できたかなど一部を争っていた。

裁判所は2026年1月26日に和解案を示し、市議会は2月26日に関連議案を可決。3月26日に和解が成立した。損害額は7000万円とされ、日本スポーツ振興センターから既に支払われていた死亡見舞金3000万円を充当し、旭川市が残る4000万円を支払う内容となった。

裁判所は和解勧告の中で、仮に市の注意義務違反と死亡との因果関係を判決で認めた場合、支払額が1億82万5611円になり得るとの見通しも示した。市は長期化を避け、再発防止の取組を遺族側が評価していることなども踏まえて和解を受け入れた。

再調査後、旭川市は49項目の提言を基に対策を進めた

旭川市は、最初の第三者委員会の20項目と再調査委員会の29項目、計49項目の提言を再発防止策の基礎にした。2025年度には精神科医をいじめ防止対策アドバイザーとして委嘱し、警察官OBを青少年育成支援員として配置するなど、専門職を加えた支援体制を整えている。

校内教育支援センターの設置や、フリースクール・学生ボランティアと連携した不登校支援、情報モラル教育なども進められた。事案の検証は、個々のいじめ認定だけでなく、学校が重大事態を見落としたときに自治体全体でどう介入するかという制度面の見直しへつながっている。

7000万円の民事和解と、再調査によるいじめ認定が現在の到達点となっている

旭川市による4000万円の支払いは、保険金2000万円と一般財源2000万円で賄われた。市は和解成立後、調査報告書で示された学校・市教委の対応上の問題を重く受け止め、再発防止を進める方針を示している。

この事案で公的に積み上がったのは、二度の第三者調査、2024年再調査による7件のいじめと死亡との因果関係の認定、そして2026年の民事和解である。特定の関係生徒に対する殺人などの刑事有罪判決によって結論付けられた事件ではなく、いじめ防止行政と学校の安全配慮をめぐる検証が中心となった。

参考資料・出典

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