堺・父弟殺害事件は、2018年に大阪府堺市で、足立朱美が実父に多量のインスリンを投与して重度の低血糖状態に陥らせ、その後死亡させたほか、実弟には睡眠薬などを服用させ、トイレ内で練炭を燃焼させて一酸化炭素中毒死させた事件である。
足立は裁判で全面的に無罪を主張しましたが、2022年11月29日、大阪地裁は無期懲役を言い渡した。検察側は死刑を求刑し、弁護側は無罪を求め、双方が控訴しましたが、2024年4月に大阪高裁がいずれも棄却。さらに同年12月9日付で最高裁第三小法廷が足立側の上告を棄却し、無期懲役が確定した。
- 父・足立富夫さんが2度の低血糖状態に陥り、約5カ月後に死亡した経緯
- 弟・足立聖光さんを睡眠薬と練炭で殺害し、自殺を装った手口
- 弟名義の偽造遺書に「父へインスリンを打った」と記した意味
- 検察が死刑を求刑しながら大阪地裁が無期懲役を選択した理由
- 2024年の最高裁上告棄却と現在の刑確定状況
堺・父弟殺害事件の概要
| 事件名 | 堺・父弟殺害事件 |
|---|---|
| 発生場所 | 大阪府堺市中区の実家など |
| 被害 | 足立富夫さん(当時67歳)弟の |
| 被告人等 | 足立朱美父親の |
| 裁判・捜査状況 | 2022年11月29日、大阪地裁が無期懲役/2024年4月、大阪高裁が検察・弁護側双方の控訴を棄却/2024年12月9日付、最高裁第三小法廷が上告棄却/無期懲役現在の状況現在も無期懲役が確定済み 父・足立富夫さんは末期がんと糖尿病を患っていた 最初の |
| 現在の状況 | 足立は裁判で全面的に無罪を主張しましたが、2022年11月29日、大阪地裁は無期懲役を言い渡した。検察側は死刑を求刑し、弁護側は無罪を求め、双方が控訴しましたが、2024年4月に大阪高裁がいずれも棄却。さらに同年12月9日付で最高裁第三小法廷が足立側の上告を棄却し、無期懲役が確定した。 |
父・足立富夫さんが2度の低血糖状態に陥り、約5カ月後に死亡した経緯
富夫さんは大腸がんから転移した肺がんや肝臓がんを患い、糖尿病の治療も受けていた。過去には抗がん剤治療を受けていましたが、副作用が強く、自ら治療を中止した時期もあった。この事情は後の裁判で極めて重要になる。富夫さんは重いがん患者だったため、最終的な死亡ががんの自然な進行によるものなのか、それともインスリン投与による低血糖脳症が死亡へ影響したのかが争われたためである。
弁護側は、富夫さんは末期がんによって死亡したのであり、足立の行為と死亡には刑法上の因果関係がないと主張した。しかし大阪地裁は、医師らの証言や入院後の経過を詳細に検討し、最終的に足立のインスリン投与と富夫さんの死亡との因果関係を認めた。
2018年1月、父親に対する最初のインスリン投与
大阪地裁判決によると、富夫さんは2018年1月、短期間に2度、深刻な低血糖状態に陥った。最初の犯行は1月19日夕方ごろから20日午前2時ごろまでの間に行われたと認定されている。足立は富夫さんの身体へインスリン製剤を注射。富夫さんは低血糖による意識障害に陥り、救急搬送された。
ただし、この最初の投与について裁判所は重要な区別をしている。大阪地裁は、足立がこの時点ですでに父親を殺害する意思を持っていたと認定する一方、最初のインスリン投与自体については死亡させる具体的危険性が殺人罪の実行行為といえる程度まで立証されていないとして、傷害罪の実行行為にとどまると判断した。
つまり「1回目も殺意はあったが、刑法上の殺人の実行行為性は認めない」という細かな司法判断が示されている。
退院したその日の夜、再び多量のインスリンを投与
最初の低血糖状態から治療を受けた富夫さんは、2018年1月25日に退院した。ところが裁判所の認定では、足立はその日の昼ごろから翌26日午前10時ごろまでの間に、再び富夫さんへ多量のインスリンを投与した。2回目はさらに深刻だった。
富夫さんの血糖値は極端に低下し、搬送時には15という著しい低値を示した。判決は、午前2時48分ごろから搬送まで少なくとも7時間以上、血糖値20前後の危険な低血糖状態が続いていたと認定している。しかも足立は、富夫さんの血糖値が21であることを認識しながら、直ちに救急車を呼ばなかった。
その間にもインターネットで「低血糖が続くと」「低血糖死亡」「低血糖突然死」などを検索し、最終的に家族から指示されるまで救急要請をしなかったと認定されている。
「低血糖死亡」「インスリン注射 服の上から」検索履歴の意味
足立の犯人性と殺意を判断するうえで、大きな証拠となったのが端末の検索履歴だった。裁判所は、1回目の低血糖が起きる以前から、足立が低血糖と死亡の関係について繰り返し検索していたと認定している。
- 低血糖死亡
- 低血糖突然死
- 低血糖が続くと
- インスリン注射 痛い
- インスリン注射 服の上から
弁護側は、低血糖を改善するための検索も存在し、「殺す」という言葉を検索していない以上、殺意は認められないと主張した。しかし大阪地裁は、改善方法に関する検索は少数であり、死亡に関する検索が多数あったことを重視した。さらに富夫さん自身は長年インスリン注射を経験していたため、足立が「服の上から注射できるか」などを調べる必要性は乏しいとして、父親に気づかれず注射する方法を探していたとみるのが自然と判断した。
父親は重度の低血糖脳症で意識を回復しなかった
2回目の低血糖によって、富夫さんは低血糖脳症による遷延性意識障害に陥った。一時的に意識を失った後で回復したのではない。富夫さんは重い意識障害が続き、最後まで元の生活へ戻ることができなかった。入院後は経鼻胃管などによる栄養管理が行われた。その後、2018年4月21日に誤嚥性肺炎を起こす。
家族はその後、栄養投与の減量について相談。4月25日以降、栄養量が減らされ、やがて輸液中心となった。そして2018年6月28日、富夫さんは死亡した。
父親は「インスリンの直接作用」で死亡したわけではない
本件で特に誤解されやすいのが、富夫さんの死因である。足立がインスリンを過剰投与し、そのまま直ちに低血糖死させたという単純な事件ではない。大阪地裁が認定した因果経過は、より複雑だった。
- 多量のインスリン投与
- 極度の低血糖
- 低血糖脳症による遷延性意識障害
- 寝たきり状態
- 誤嚥性肺炎
- 家族による栄養減量の相談
- 栄養量低下
- もともとの進行がんと相まって死亡
裁判所は、富夫さんが「がんの進行だけ」で死亡したとは認めなかった。インスリン投与によって生じた低血糖脳症と遷延性意識障害が、その後の誤嚥性肺炎や栄養減量へつながり、がんの進行と相まって死亡結果を生じさせたとして、足立の行為と死亡との刑法上の因果関係を認定した。
父親殺害の動機は最後まで明確に認定されなかった
父・富夫さん殺害について、インターネット上では「遺産目的」「会社を奪うため」「金銭トラブル」と断定する記述がある。しかし大阪地裁判決は、そこまで認定していない。検察側は、足立が父親名義の口座から預貯金を引き出していたことや、偽造された借用書を所持していたことなどから、金銭への関心が動機としてうかがわれると主張した。
裁判所も何らかの金銭トラブルがあった可能性は認めている。しかし、金銭目的で父親を殺害したことが間違いないといえるほどの確実な事実はないと判断した。この「父親殺害の動機が不明」という点は、後に死刑ではなく無期懲役が選択された理由の一つにもなる。
父親が意識不明の中、次の標的は弟・足立聖光さん
父親が低血糖脳症による重い意識障害で入院している間に、2件目の殺人が起きた。被害者は足立朱美の実弟、足立聖光さん(当時40歳)である。聖光さんは建築会社を経営していた。姉の足立朱美も父親から引き継いだ水道工事会社の経営に携わっており、姉弟には仕事上の接点があった。
報道では会社承継や経営をめぐる対立も伝えられた。ただし、確定判決上で最も重要な弟殺害の動機は、単なる姉弟げんかや会社経営の対立ではない。大阪地裁は、足立が父親へのインスリン投与の責任を弟になすり付けるため、弟を自殺したように装って殺害したと認定した。
事件前から「練炭」「一酸化炭素中毒」「死亡」を検索
弟殺害は、その場で突然思いついた犯行ではなかった。裁判所の認定によると、足立は2018年3月5日、パソコンで「練炭からいつ一酸化炭素が出るのか」「練炭」などを入力した。3月8日には自宅のパソコンで「一酸化炭素中毒」「一酸化炭素」「死亡」などを検索。その後も3月27日の事件当日まで、一酸化炭素中毒に関するウェブページを調べていた。
さらに3月5日には、足立の氏名や住所を注文者情報として、インターネットショップで練炭が注文された。練炭は3月9日ごろ、足立側へ配送されている。裁判所は、こうした検索と購入履歴を、計画的な自殺偽装殺人を示す重要な状況証拠とした。
弟名義の偽造遺書|「俺はおとんにインスリンを打った」
事件の核心となったのが、聖光さん名義の遺書である。大阪地裁判決によると、足立は弟が作成したように見せかけた文書を用意した。文書には、弟が夜中に実家へ行き、父親へインスリンを打ったという趣旨の内容が記されていた。
さらに、低血糖昏睡について調べ、がんで苦しむより脳死のほうが楽だと思ったという趣旨や、父親への嫉妬、罪悪感、家族への別れを思わせる内容も盛り込まれていた。この遺書どおりに事件が受け取られれば、父親へインスリンを投与したのは弟であり、その罪悪感から弟が練炭自殺したという筋書きが成立する。
裁判所はパソコンの作成履歴などを検討し、遺書は足立朱美が作成したと認定した。
2018年3月27日、虚偽の用件で弟を実家へ呼び出す
犯行が実行されたのは2018年3月27日である。前日の26日、足立は弟の妻を介して聖光さんへ、翌日に母親が保証協会の件で話したいので実家へ寄ってほしいという趣旨の連絡をした。しかし裁判所は、この呼び出し理由を虚偽と認定している。
聖光さんは27日午後、自ら車を運転して実家を訪れた。同じ日の夕方には仕事の予定もあり、別の人物からの依頼を引き受けていたことが認定されている。この事情は、聖光さんがあらかじめ自殺を決意して実家へ来たという事件像と整合しにくいものだった。
母親も足立朱美が渡した抹茶ラテを飲んだ後に眠った
3月27日の実家には、足立の母親もった。大阪地裁判決によると、母親は病院へ向かう予定でしたが、足立から手渡された抹茶ラテを飲んだ後、弟が到着する前に眠ってしまった。この母親の状況も裁判で検討された。
ただし本記事では、母親に対する行為を独立した殺人未遂事件だったとは扱わない。確定した罪名と、裁判で認定された周辺事実は分けて整理する必要があるためである。一方、聖光さんの遺体からは複数の薬物成分が検出された。
弟の遺体から睡眠薬・抗うつ剤成分を検出
聖光さんの遺体からは、睡眠薬の成分であるブロチゾラムとクアゼパム、さらに抗うつ剤のトラゾドンが検出された。裁判所の認定では、当時、聖光さん本人や同居家族には、これらの薬はいずれも処方されていなかった。一方、足立には3種類すべての成分を含む薬が処方されていた。
この薬物状況は、足立が弟へ睡眠薬などを服用させ、抵抗や逃走が難しい状態にしたという検察側の事件像を裏付ける重要な事情となった。大阪地裁は、弟が自ら薬を入手して服用し、自殺したという可能性を退けた。
2階トイレで練炭を燃焼|弟を一酸化炭素中毒死させた
裁判所が認定した犯行は、睡眠薬を飲ませるだけでは終わらなかった。足立は聖光さんを眠らせたうえ、実家2階のトイレ内で練炭を燃焼させた。午後6時41分ごろ、足立は弟の妻へ電話をかけ、「弟と話していたら眠ってしまい、起きたら遺書のような物が置かれていた」という趣旨を伝えた。
弟の妻が実家へ到着すると、足立から遺書を渡された。その後、2階へ行き、トイレ内で聖光さんを発見する。トイレ内には火のついた練炭があり、聖光さんは毛布にくるまれた状態で壁にもたれて座っていた。救命措置と救急搬送が行われましたが、聖光さんは同日、一酸化炭素中毒により死亡した。
自殺現場として不自然だったトイレの状況
現場状況にも不自然な点があった。裁判記録によると、トイレのドアと周囲の枠の隙間にはボンドのような物が付着していた。一方、トイレ内には練炭の着火器具や、隙間を塞ぐために使ったとみられるボンド類が残されていなかった。
さらにドアは施錠されていなかった。こうした現場状況、薬物成分、練炭の購入履歴、一酸化炭素中毒に関する検索、偽造遺書、弟を虚偽の用件で呼び出した経緯などが積み重なり、大阪地裁は足立による計画的な殺人と認定した。
なぜ弟を殺害したのか|父親事件の罪をなすり付ける目的
弟殺害の動機について、大阪地裁は明確な認定を示した。偽造された遺書の内容から、足立は少なくとも父親へのインスリン投与の罪を聖光さんになすり付ける目的で犯行に及んだと判断されている。父親は当時まだ死亡していませんでしたが、足立によるインスリン投与後、重度の意識障害が続いていた。
その状況で「弟が父にインスリンを打った」とする遺書を作り、弟自身も自殺したように見せかければ、父親事件の責任を死亡した弟へ向けることが可能になる。大阪地裁は、この動機を自己保身のための自己中心的なものと厳しく評価した。
弟殺害後、義妹らへの中傷と器物損壊にも及んだ
事件は父親と弟の殺害だけでは終わらなかった。大阪地裁判決は、弟の死から約1カ月後、足立が弟の妻らを中傷する文書を作成・散布し、自動車などを汚損した行為も認定している。2018年4月27日には中傷文書を周辺へ撒き、自動車などを汚損。さらに5月14日には取引先会社へ中傷文書を郵送したとされた。
大阪地裁は量刑理由の中で、これらを夫や父を亡くした遺族へ追い打ちをかける卑劣な犯罪と厳しく非難している。ただし裁判所は、殺人そのものとは別の行為であるため、死刑選択における重みは限定的だとも整理した。
2018年6月20日、まず弟殺害容疑で逮捕
警察は当初、聖光さんの死亡を自殺の可能性も含めて調べた。しかし遺書の作成状況、薬物成分、練炭購入履歴、現場の不自然さなどから捜査は足立へ向かう。2018年6月20日、大阪府警は足立朱美を弟に対する殺人容疑で逮捕した。当時44歳だった。
足立は容疑を否認した。同年7月11日、大阪地検は弟に対する殺人罪で起訴。その後、名誉毀損や器物損壊をめぐる捜査も進む。そして捜査の焦点は、すでに6月28日に死亡していた父・富夫さんの低血糖事件へ広がった。
2018年10月、父親への殺人容疑でも再逮捕
父親事件では、1月に起きた2度の異常な低血糖、インスリンの状況、検索履歴、足立の行動などが調べられた。2018年10月17日、大阪府警は足立を父親に対する殺人と殺人未遂の疑いで再逮捕した。その後、大阪地検は11月、父親に対する殺人罪などで追起訴した。
こうして2018年1月のインスリン投与と、同年3月の練炭自殺偽装事件が、一人の被告人による2件の殺人事件として刑事裁判へ進む。
初公判まで約4年|足立朱美は全面的に争う

足立の裁判は、逮捕から短期間で始まったわけではない。事件には医療上の因果関係、薬物鑑定、デジタル証拠、偽造文書、2件の犯人性など多数の争点があり、公判前整理手続が長期化した。2022年8月22日、大阪地裁で裁判員裁判の初公判が開かれた。
足立本人は起訴内容について明確な認否をせず、黙秘する姿勢を示した。一方、弁護側は全面無罪を主張した。
- 父親は末期がんで死亡した
- 足立がインスリンを投与した証拠はない
- 弟は自殺だった可能性がある
- 状況証拠だけでは足立を犯人と認定できない
これに対し検察側は、膨大な検索履歴、購入記録、薬物、パソコンデータ、現場状況などを積み上げ、足立による連続殺人だと主張した。
検察は死刑求刑|弁護側は無罪を要求
2022年11月7日、検察側は足立朱美被告に死刑を求刑した。死亡者は父親と弟の2人である。検察側は、複数の機会に家族2人の生命を奪ったこと、弟事件の計画性、偽装工作、犯行後の中傷行為などを重視した。一方、弁護側は一貫して無罪を求めた。
通常の量刑裁判のように「犯行を認めたうえで刑を軽くしてほしい」という対立ではない。検察は死刑、弁護側は2件とも無罪という、結論が正面から対立する裁判だった。
2022年11月29日、大阪地裁が無期懲役判決
2022年11月29日、大阪地裁は足立朱美被告に無期懲役を言い渡した。判決は、父親への多量のインスリン投与と弟への練炭自殺偽装殺人について、いずれも足立を犯人と認定した。父親事件では、2回目のインスリン投与が死亡させる危険性のある殺人の実行行為に当たり、低血糖脳症から死亡へ至る因果関係も認定。
弟事件では、事前検索、練炭注文、薬物成分、虚偽の呼び出し、偽造遺書、現場状況などから、足立が自殺を装って殺害したと判断した。しかし検察側が求めた死刑は選択しなかった。
なぜ死亡者2人でも死刑ではなく無期懲役だったのか
大阪地裁は、死刑を選択すべきかについて慎重な検討を行った。弟殺害については極めて厳しく評価されている。
- 父親事件の責任を弟へなすり付ける自己保身的動機
- 事件前から弟名義の遺書を準備
- 一酸化炭素中毒について検索
- 練炭を事前購入
- 睡眠薬などを準備
- 虚偽の用件で弟を呼び出した
- 密室で練炭を燃焼させる危険性の高い方法
- 自殺に見せかける偽装工作
裁判所は、弟事件の悪質性について、他の死刑判決事案と比べても遜色がないほど重大と評価した。一方、父親事件には死刑判断上、異なる事情があった。
- 父親殺害の動機が明確に認定できない
- 利欲目的と断定できない
- インスリン投与が直接の死因ではない
- もともとの進行がんと相まって死亡した
- 犯行計画が極めて緻密だったとはいえない
大阪地裁は、2人が死亡した結果は極めて重大としながらも、過去の死刑判決との公平性を考慮し、死刑が真にやむを得ない事件とまではいえないとして無期懲役を選択した。
検察側も弁護側も控訴した異例の展開
一審判決に対し、双方が不服を申し立てた。足立側は、そもそも2件の殺人を行っていないとして無罪を主張。一方、検察側は無期懲役では軽すぎ、死刑が相当だと主張した。このため控訴審では、犯人性だけでなく、仮に有罪だとして死刑を選択すべきかという問題も改めて審理された。
2024年4月、大阪高裁は検察側と弁護側、双方の控訴を棄却した。これにより、一審の無期懲役が維持された。
2024年12月、最高裁が上告棄却|無期懲役確定
足立側はさらに最高裁へ上告した。2024年12月9日付で、最高裁第三小法廷は上告を棄却する決定をした。これにより、大阪地裁が言い渡し、大阪高裁が維持した無期懲役が確定した。
したがって本件の現在の法的状況は明確である。足立朱美は「容疑者」や「一審で有罪判決を受けた被告人」という段階ではない。父親と弟に対する殺人罪などで有罪となり、無期懲役の確定判決を受けた人物である。
現在の状況|足立朱美の無期懲役は確定済み
現在も、足立朱美の刑は無期懲役で確定している。本件は未解決事件ではない。2024年12月の最高裁上告棄却によって、通常の上訴手続は終了した。事件の特徴は、単に「姉が父と弟を殺害した」という家族内殺人にとどまらない。
父親事件では、インスリンという医療用製剤を使い、低血糖脳症から長期の意識障害へ陥らせた。その後、父親がまだ生存している間に弟を殺害し、父親へインスリンを打ったのは弟だったとする偽造遺書を作成した。弟には睡眠薬などを服用させ、トイレという閉鎖空間で練炭を燃焼させ、一酸化炭素中毒死を自殺へ偽装。さらに弟の死後には遺族への中傷や器物損壊にも及んだと認定されている。
一方、裁判は感情的な「家族を2人殺したから死刑」という判断を取らなかった。父親死亡との複雑な因果関係、父親殺害の動機が不明であること、他の死刑事件との公平性まで検討し、最終的に無期懲役を選択した。検索履歴、薬物成分、購入記録、パソコンデータ、偽造遺書、現場状況という多数の状況証拠から2件の殺人を認定しながら、死刑と無期懲役の境界も厳しく問われた事件として、堺・父弟殺害事件は刑事裁判上も注目され続けている。
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