フィリピン特殊詐欺「JPドラゴン」|約9億円の被害把握と、送還組ごとに分かれる公判

公開日 2026年2月17日
最終更新 2026年8月1日

フィリピンを拠点とする日本人集団「JPドラゴン」は、日本国内の高齢者へ警察官や金融機関職員を装う電話をかけ、キャッシュカードや現金をだまし取る特殊詐欺へ関与したとされる。福岡県警は、関連する被害が20都府県、約250人、総額約9億円に上る可能性を示している。

構成員はフィリピン当局に拘束され、複数回に分けて日本へ強制送還された。全員が同じ事件で同時に裁かれているわけではなく、送還時期、役割、起訴された被害、認否が異なる。2026年には、起訴内容を認める被告人、否認する被告人、認否を留保する被告人の公判が福岡地裁で進んでいる。

事件名フィリピン特殊詐欺「JPドラゴン」事件
主な時期2020年代
拠点フィリピン
被害地域日本の20都府県など
被害規模警察把握で約250人、約9億円の可能性
主な手口警察官等を装う電話、カード窃取、現金引出し
現在の状況送還された関係者の公判が被告人ごとに進行

フィリピンから日本へ電話をかける拠点

海外拠点型の特殊詐欺では、電話をかける者、名簿を準備する者、送金や暗号資産を管理する者、日本国内でカードや現金を受け取る者が分かれている。拠点にいる全員が被害者と直接話すとは限らないが、犯罪だと知りながら通信環境や資金移動を支えれば、共謀や幇助の成否が問題になる。各被告人の担当期間と具体的な指示が、公判ごとに確認される。

グループはフィリピン国内の住宅や施設を拠点とし、日本語で高齢者へ電話をかける「かけ子」を集めたとされる。日本の警察官、銀行協会、自治体職員などを名乗り、口座が犯罪に使われている、カードを確認する必要があるなどと告げた。

電話役は台本に沿って被害者の不安を高め、日本国内の受け子や回収役へ住所と訪問時刻を伝える。海外拠点と国内実行役が分かれることで、被害者と直接会わない指示役の特定が難しくなる。

JPドラゴンは暴力団系の日本人集団と報じられ、別の詐欺グループを取り込む形で規模を広げたとの検察主張もある。ただし、組織の成立経緯や全構成員の地位は各公判で立証中の部分がある。

警察官を装ってカードを盗む手口

電話では口座が犯罪に使われている、カードを確認する必要があるなどと告げ、被害者を不安にさせる。その後、日本国内の受け子が警察官や金融機関職員を装って訪問し、封筒へカードを入れさせ、隙を見て別の封筒と交換する。暗証番号を聞き出した上で現金を引き出すため、被害はカードの窃取と預金払戻しの複数段階に及ぶ。

起訴された事件では、高齢者へ警察官を装って電話し、偽札が混じっている、指紋を調べるなどと説明して現金やキャッシュカードを用意させたとされる。

国内の実行役は被害者宅を訪れ、カードを封筒に入れさせ、隙を見て別のカードと入れ替える。その後、暗証番号を聞き出してATMから現金を引き出した。被害者がカードを渡した意思があっても、虚偽説明によるため窃盗や詐欺が成立する。

回収された現金の一部は送金や運搬でフィリピンへ移されたと検察は主張している。被害金がどの階層へ渡り、誰が利益を得たかは、組織犯罪の役割と量刑を判断するうえで重要となる。

約9億円という被害把握の意味

被害金は複数の口座や暗号資産、現金運搬を経て移されるため、最終的な利益の所在を追うには金融機関と各国当局の協力が必要になる。口座名義人が組織の中心とは限らず、報酬を得て口座を譲った者、資金を別口座へ移した者の認識も個別に捜査される。被害回復では口座凍結や押収資産が重要だが、全額が被害者へ戻るとは限らない。

グループ名は報道や捜査で組織を識別するために使われるが、固定された法人のような名簿があるとは限らない。離合集散するメンバー、他グループとの協力、国内の実行役を含め、どこまでをJPドラゴンと呼ぶかで人数や被害額が変わり得る。記事では警察が発表した範囲と、各起訴状で認定を求めている範囲を明示する必要がある。

被害者の多くは高齢者で、警察や金融機関を名乗る電話を信じてカードを渡した。巧妙な台本と複数人の連絡で判断を急がせる手口であり、被害に遭ったことを本人の注意不足だけで説明できない。捜査と並行して、カードを預からない、暗証番号を聞かないという原則を金融機関と地域で共有することが再発防止となる。

約9億円は、捜査でグループとの関連が確認された被害の集計であり、全ての事件が同じ起訴状で一度に審理されるわけではない。被害者、電話担当、受け子、送金先が特定できた事件から順に立件されるため、公判中の被害額と組織全体の推計額は一致しない場合がある。数字を示す際は、判決で認定済みか、警察が把握した段階かを区別する必要がある。

福岡県警は、JPドラゴンが関与したとみられる特殊詐欺について、20都府県の約250人、合計約9億円の被害を把握していると説明している。これは捜査上関連が疑われる全体規模であり、一人の被告人が全額について起訴されたという意味ではない。

刑事裁判では、被告人ごとに具体的な被害者、日時、共謀、役割を立証する。組織名が同じでも、参加時期が異なり、別グループへ離脱したとされる者もいるため、約9億円を全員の確定犯罪として一括表示できない。

被害額には、カードから引き出された現金、直接だまし取られた現金などが含まれる。被害者が金融機関から補償を受けた場合でも、犯行時の財産被害がなくなるわけではない。

フィリピン当局の拘束と強制送還

日本の逮捕状があっても、捜査員が外国で直接逮捕することはできない。フィリピン当局が現地法に基づいて拘束し、在留資格や退去手続を進め、日本側が送還時に逮捕した。収容中の訴訟や手続によって送還時期が分かれたため、同じグループの被告人でも起訴・初公判が別々になった。国際捜査では、証拠の取得方法と翻訳、本人確認も公判の前提となる。

日本の警察は関係者の逮捕状を取り、フィリピン当局と連携して所在を追った。現地で在留資格の問題などにより拘束された者は、退去手続きを経て日本へ送還され、空港到着時に逮捕された。

送還は一度に全員ではなく、2025年から2026年にかけて複数の組に分かれた。現地で別の刑事事件や手続きがある場合、直ちに日本へ移せないこともある。

日本へ到着した後は、各県警が担当する事件について逮捕、勾留、再逮捕を行い、検察が起訴する。報道で「JPドラゴンのメンバー」とされても、起訴された罪と組織内の地位は被告人ごとに確認する必要がある。

2026年1月の5人の初公判

初公判では、検察が組織内の役割、担当した電話、被害者とのやり取り、送金経路を示し、被告人ごとに認否が確認された。グループ名が同じでも、全員が約9億円の全被害へ刑事責任を負うとは限らない。共謀した範囲、離脱時期、得た報酬を個別に立証する必要があり、判決の時期や刑は被告人ごとに異なる。

2026年1月、福岡地裁で三本竹朗被告ら5人の初公判が開かれた。起訴状では、高齢女性宅へ警察官を装う電話をかけ、カードを盗み、現金150万円を引き出した事件などが対象となった。

5人のうち4人は起訴内容を認めたと報じられた。検察は、三本竹被告がかけ子の取りまとめ役で、他の被告人が電話役を担当したと説明した。

起訴内容を認めても、組織全体の被害額、指示役との関係、報酬、反省、被害弁償などは量刑審理の対象になる。認めた時点で刑期が確定したわけではない。

2026年4月送還組と7月の別公判

後に送還されたメンバーは、先に起訴された被告人の公判へ自動的に加わるのではなく、逮捕後に個別の勾留、起訴、証拠開示を経る。送還時期が数か月違えば、裁判員の対象事件や審理日程も別になる。報道で「JPドラゴンの裁判」とまとめられていても、誰がどの被害について起訴されているかを確認しなければならない。

2026年4月には別の男女5人がフィリピンから送還され、福岡県警に逮捕された。岐阜市の高齢女性から現金140万円などを奪った疑いが持たれ、かけ子や国内実行役への指示役だったとみられている。

7月、さらに関係者5人の初公判が福岡地裁で開かれ、一人は認め、一人は関与を否認し、三人は認否を留保したと報じられた。検察は、JPドラゴンから離脱後に別グループを作った時期も含めて主張している。

同じ人数の「5人」が複数回報道されるため、送還組や公判を混同しやすい。氏名、逮捕日、起訴事件を確認し、既に判決を受けた者と公判開始直後の者を分けて記述する必要がある。

組織全体の解明と今後の裁判

初公判後も証人尋問や端末解析の証拠調べが続き、判決が出ても控訴される可能性がある。2026年8月時点で公判中の被告人については、起訴内容を「犯罪を行った」と確定表現せず、検察が主張し裁判所が審理している事実として記載する。今後、判決、追加起訴、別の送還があれば現在状況と被害額を更新する必要がある。

海外拠点を摘発しても、日本国内の名簿提供者、受け子募集者、現金回収役、資金洗浄先が残れば別の名称で活動が続く。捜査は送還された人物の公判だけでなく、押収端末の解析、口座の追跡、国内協力者の立件へ広がる。2026年8月時点では全員の判決が確定しておらず、被告人を有罪確定者のように一括して扱わないことが必要である。

特殊詐欺の公判では、電話役の録音、通信アプリ、送金記録、受け子の供述などが共謀を裏付ける。海外にいた被告人が国内被害者と会っていなくても、虚偽電話と指示を通じて財産奪取を共同実行したかが判断される。

リーダーとされる人物の送還や起訴が進めば、資金の流れ、暴力団との関係、他の詐欺グループとの結び付きが明らかになる可能性がある。一方、捜査段階の肩書を判決前に確定した地位として扱うことはできない。

2026年8月時点では、公判の認否が分かれ、全事件の判決は出そろっていない。約9億円は警察が把握した組織全体の可能性、各被告人の責任は起訴された具体的事件という二つの範囲を分けることが、現状を正確に伝えるために必要となる。

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