JR新宿駅痴漢冤罪事件は、2009年12月10日夜、東京都のJR新宿駅構内で大学職員の原田信助さん(当時25歳)が痴漢を疑われ、警察の取調べを受けた後、翌朝に死亡した問題である。したがって本件は、一般に痴漢冤罪事件と呼ばれているものの、刑事裁判で原田さんの無罪が確定した事件ではない。同時に、原田さんが痴漢をしたとする有罪判決も存在しない、真相に重大な疑問が残された事件である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 一般的な呼称 | JR新宿駅痴漢冤罪事件、新宿駅痴漢冤罪事件 |
| 発生日時 | 2009年12月10日午後11時ごろ |
| 発生場所 | 東京都新宿区のJR新宿駅構内 |
| 当事者 | 原田信助さん(当時25歳) |
| 当時の職業 | 大学職員 |
| 疑われた行為 | 女子大学生の腹部を触ったとする迷惑防止条例違反 |
| 原田さんの主張 | 痴漢行為を否定し、自身が暴行を受けたと訴えた |
| 取調べ | 新宿警察署で翌11日午前4時ごろまで |
| 原田さんの死亡 | 2009年12月11日、早稲田駅で電車にはねられ死亡 |
| 書類送検 | 2010年1月29日 |
| 刑事処分 | 被疑者死亡を理由に不起訴 |
| 刑事裁判 | 行われていない |
| 国家賠償請求 | 遺族が東京都へ1000万円を請求 |
| 国賠訴訟の結果 | 遺族側敗訴。2017年に確定 |
| 現在 | 有罪・無罪いずれの刑事判決もなく、真相には疑問が残る |
歓迎会からの帰宅途中、駅の階段で突然取り押さえられる
原田信助さんは2009年10月に大学職員へ転職し、事件当日は職場の歓迎会に参加していた。午後11時ごろ、帰宅のためJR新宿駅構内を歩き、ホームへ続く階段を上りかけたところ、突然男性らに取り押さえられた。男性らは、一緒にいた女子大学生がすれ違いざまに腹部を触られたとして、原田さんを犯人だと考えたとされている。
遺族側の主張によると、原田さんは階段から引き落とされ、床へ押さえつけられたうえ、腹部を蹴られるなどの暴行を受けた。原田さんは自ら110番通報し、警察へ助けを求めている。痴漢をして逃走しようとした人物ではなく、自分を暴行被害者として扱うよう求めていたというのが遺族側の説明である。
女子大学生が訴えたのは「腹部を触られた」という被害
女子大学生が説明した被害は、新宿駅の階段を下りていた際、上ってきた男性から腹部をつまむように触られたというものだった。女性は触った人物の顔を確認しておらず、原田さんを直接見て犯人だと特定したわけではなかったとされている。警察は後に、女性の供述と駅の防犯カメラ映像を組み合わせ、同じ時間帯に接触できた人物は原田さんだけだったと説明した。
ただし、実際に身体が接触したとされる瞬間はカメラの死角だった。映像そのものに、原田さんが女性へ手を伸ばす様子が明確に記録されていたわけではない。
暴行被害を訴えた原田さんが痴漢の被疑者として取調べ
駆けつけた警察官は、原田さんや大学生らを新宿駅西口交番へ同行させ、その後、原田さんを新宿警察署へ移した。原田さんは、自分が受けた暴行について事情を聴かれると考えていた。しかし実際には、女子大学生へ痴漢をした疑いを持つ被疑者として取調べを受ける。取調べは翌11日午前4時ごろまで続いた。原田さんは痴漢行為を否定し、帰宅や外部への連絡を希望しましたが、すぐには署を出られなかったと遺族側は主張している。
警察側は、逮捕ではなく任意の事情聴取であり、必要な範囲で適正に捜査したと説明した。
原田さんは職場の会合を終えて帰宅する途中、新宿駅構内の階段で女性とその同行者らに囲まれ、暴行を受けたと訴えた。原田さん自身が110番し、現場へ来た警察官に被害を説明したが、女性側は原田さんから痴漢行為を受けたと主張した。双方が被害を訴える状態で警察署へ移動した。原田信助さん取調べ後死亡をめぐるこの段階では、再審事件では、確定判決を覆す新証拠が、旧証拠と合わせて合理的な疑いを生じさせるかが問われる。
警察内部では「痴漢の事実なし」と判断されたとの指摘
原田さんの母・原田尚美さんは、事件直後に新宿警察署から「大勢が行き交う駅で犯人と認定するのは無理で、痴漢容疑は晴れた」と説明されたとしている。また、後の国家賠償請求訴訟では、110番通報に関する警察資料に「痴漢の事実なし」と読める記載があったことも争点となった。
一方、新宿署は後に原田さんを痴漢の被疑者と認定し、死後に書類送検している。事件直後の説明と、後の警察判断が食い違っているように見える点が、遺族の疑念を強めた。
原田さんは早朝、新宿警察署内のソファーで休んだ後、午前5時台に署を出た。その後、母校である早稲田大学に近い東京メトロ東西線早稲田駅へ向かい、午前6時40分ごろ、ホームから線路へ入り電車にはねられた。病院へ搬送されましたが、同日死亡。警察は自殺とみている。
痴漢を疑われたことや、暴行被害を訴えても受け入れられなかったと感じたことが、原田さんを精神的に追い詰めた可能性が指摘されている。ただし、死亡に至る心理や警察の取調べとの直接的な因果関係について、刑事裁判で認定されたわけではない。
原田さんの死後に痴漢容疑で書類送検
原田さんが死亡した後、新宿署は捜査を続け、2010年1月29日、東京都迷惑防止条例違反の疑いで東京地検へ書類送検した。検察は同年3月、被疑者死亡を理由として不起訴処分としている。被疑者死亡による不起訴は、有罪を認定する処分ではない。同時に、嫌疑なしや嫌疑不十分を理由とする不起訴とも異なる。
原田さん本人が法廷で反論し、証拠を争う機会はなかった。そのため、刑事司法上は痴漢行為の有無が最終判断されないまま手続きが終わっている。
防犯カメラ映像は、警察が原田さんを被疑者とした重要な根拠と説明していた。ところが遺族側が確認を求めた際、JR東日本からは、警察による証拠保全の指示がなかったため当日の映像は消去したとの説明があった。その後、警察へ提出して返却された映像を保有しているとの説明もあり、情報が一貫していないとして問題視される。
裁判所による証拠保全で提出されたのは不鮮明な複製映像で、遺族側は事件時刻とも一致しないと主張した。犯行そのものが映っていない映像を、どこまで人物特定の根拠にできるのかが大きな疑問として残った。
母親が東京都を提訴|1000万円の国家賠償を請求
母の尚美さんは2011年4月、警察が原田さんを暴行の被害者として扱わず、根拠なく痴漢の犯人と決めつけたとして、東京都に1000万円の損害賠償を求めた。訴訟では、任意同行や取調べの適法性、防犯カメラ映像、女子大学生の供述、死後に作成された捜査書類などが争われた。
2016年3月15日、東京地裁は警察の捜査に違法性はないとして、遺族側の請求を棄却する。東京高裁も2017年5月18日に控訴を棄却。最高裁も同年11月16日に上告を退け、遺族側の敗訴が確定した。
母親が東京都へ損害賠償を求めた国家賠償訴訟では、東京地裁と東京高裁が警察対応の違法性と死亡との因果関係を認めず、請求を棄却した。痴漢行為の有無自体は刑事裁判で判断されていない。
本件は、報道や支援活動では「新宿駅痴漢冤罪事件」と呼ばれている。しかし、原田さんの無罪を言い渡した判決や、検察が嫌疑なしと判断した処分はない。国家賠償請求訴訟でも、警察の捜査が違法だったとは認められなかった。一方、原田さんに痴漢行為をしたという有罪判決もない。本人が死亡したため、検察の主張と弁護側の反論を刑事法廷で検証できなかったからである。
現在の状況|刑事裁判なし、国賠訴訟は敗訴確定
現在も、原田信助さんをめぐる刑事・民事手続きは終了している。
刑事裁判が開かれなかった以上、原田さんを痴漢の犯人と断定することはできない。同時に、無罪判決が出た事件として扱うことも正確ではない。
痴漢被害の訴えは軽視されるべきではなく、被害を申告した人の安全や尊厳は守られなければならない。一方、現場で取り押さえられた人物を、十分な確認なしに犯人と決めつけることも許されない。
本件では、原田さん自身が110番通報して暴行被害を訴えていたにもかかわらず、警察対応の中心は痴漢容疑の取調べとなった。被害申告を尊重することと、疑われた人物の人権を守ることは両立しなければならない。JR新宿駅痴漢冤罪事件は、初動捜査のあり方、任意同行の実態、防犯映像の保存、死亡した被疑者の名誉回復という難しい課題を残した事件である。
2009年12月、JR新宿駅で原田信助さんが痴漢を疑われ、警察の取調べを受けた後、翌朝に死亡した事件である。遺族は原田さんが痴漢をしていないとして名誉回復を求めた。原田さんの死後に書類送検されましたが、被疑者死亡を理由に不起訴となり、刑事裁判は開かれなかった。
警察は原田さんを被疑者として送検しましたが、痴漢行為の有無は司法判断されていない。遺族は東京都に1000万円を求めましたが、東京地裁と東京高裁は警察の捜査を違法とは認めなかった。2017年11月、最高裁が上告を退け、遺族側の敗訴が確定している。
原田さんが一貫して否認し、女性が犯人の顔を確認していなかったこと、防犯映像が犯行を直接捉えていないことなどから、遺族や支援者が誤認だったと訴えてきたためである。
原田信助さんは逮捕ではなく任意同行を求められ、痴漢の被疑者として事情聴取を受けた。死後に書類送検されたが、被疑者死亡を理由に不起訴となり、痴漢行為の有無を判断する刑事裁判は開かれていない。遺族が起こした国家賠償請求も警察の捜査を違法とは認めず、2017年に敗訴が確定した。
2009年12月10日夜、大学職員の原田信助さん(当時25歳)はJR新宿駅構内で若い男女とトラブルになり、自ら110番通報した。原田さんは暴行被害を訴えたが、女性への痴漢行為を疑われ、新宿署で任意の事情聴取を受けた。原田さんは翌11日未明に署を出た後、東京メトロ東西線早稲田駅で電車にはねられて死亡した。遺族は、警察が痴漢の疑いを明確に説明しないまま長時間聴取し、嫌疑が解けたことも伝えなかったため自死へ追い込まれたと主張した。警察は原田さんの死後に痴漢事件の捜査を続け、被疑者死亡のまま書類送検し、不起訴となった。
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