ロマンス詐欺の手口と被害事例|SNS・マッチングアプリから送金へ誘導する仕組み

公開日 2026年6月15日
最終更新 2026年8月14日

ロマンス詐欺は、SNSやマッチングアプリで知り合った相手に恋愛感情や親近感を抱かせ、投資、事業資金、渡航費、医療費などの名目で金銭を送らせる詐欺である。相手は実在する人物の写真や偽の経歴を使い、数週間から数か月かけて信頼関係を作る。

警察庁によると、SNS型投資詐欺とロマンス詐欺の被害は近年急増し、2024年には両類型を合わせて1万件を超え、被害額は約1272億円に達した。個別事件の犯人逮捕だけでは被害を止めにくく、接触段階で手口を見抜くことが重要になっている。

類型SNS型ロマンス詐欺
主な接触経路SNS・マッチングアプリ
主な要求投資金・事業資金・渡航費など
特徴長期間の連絡で信頼を形成
被害全国で増加
現在の対応警察・金融機関が注意喚起

SNSやマッチングアプリから始まる接触

最初の連絡は、写真への反応、共通の趣味、誤送信を装ったメッセージなど、日常的な会話から始まる。マッチングアプリでは結婚や交際を希望する人物として登録し、SNSでは海外勤務の軍人、医師、投資家、会社経営者などを名乗る例がある。

プロフィール写真は、第三者の画像を無断で使ったり、生成画像を用いたりして作られる。本人確認済みの表示があっても、詐欺に利用するために別人名義のアカウントを入手している場合があり、写真や肩書だけでは実在性を確認できない。

接触後は外部のメッセージアプリへ移るよう求められることが多い。運営会社の監視や通報機能から離れ、アカウント停止後も連絡を続けるためである。短期間で親密な呼び方を使い始めることも、典型的な特徴の一つとされる。

接触相手の日本語が自然でも、実際には翻訳ソフトや複数人の担当者が会話を管理していることがある。時差や返信の癖が不自然でも、海外勤務や夜勤という設定で説明される。詐欺グループは公開プロフィールから趣味、家族、職業を調べ、最初の会話に取り入れるため、偶然相性が良い人物と出会ったように感じさせる。

同じ写真や定型文を複数の相手へ送るため、画像検索や文章検索で別名のアカウントが見つかることがある。検索結果がなくても安全の証明にはならない。

毎日の連絡で作られる恋愛感情と信頼

詐欺者は、朝晩のあいさつ、仕事の報告、将来の生活についての会話を繰り返す。相手の家族構成、資産、勤務状況、孤独感を聞き出し、その人が望む関係に合わせて人物像を作る。映像通話を避ける理由として、海外勤務、機密業務、通信環境などを挙げる。

結婚、同居、来日などの具体的な予定を語る一方、実際に会う段階になると事故や仕事上の問題が発生したとして延期する。被害者は、長い時間を共有した相手を疑うことが難しくなり、矛盾があっても一時的な事情だと受け止めやすい。

金銭の話は、関係を作った後に出される。最初から送金を求めるのではなく、投資で利益が出た画面を見せたり、少額の出金を成功させたりして、仕組みが本物であるように見せる。

連絡の継続そのものが被害者の判断へ影響する。毎日決まった時間に返信が届き、悩みを聞き、将来を語ることで、相手を生活の一部にする。送金を断った際には、愛情を疑うのか、将来を信じていないのかと責めることがあり、金銭判断を恋愛関係の証明に置き換える。第三者へ相談しないよう求めるのも、矛盾を指摘される機会を減らすためである。

相手が家族や友人との関係を否定し、相談相手を自分だけにしようとする場合もある。孤立させることで、第三者が送金や投資の不自然さを指摘する機会を減らす。

投資や送金へ誘導する代表的な手口

投資型では、暗号資産、外国為替、金、未公開株などを扱う偽サイトやアプリへ登録させる。画面上では利益が増えているように表示されるが、実際には資金が犯人側の口座や暗号資産ウォレットへ移されているだけである。

別の手口では、海外から荷物や現金を送ったが税関で止められた、来日費用が不足した、家族の治療費が必要になったと説明する。送金先は本人名義ではなく、国内の個人口座、収納代行、暗号資産交換先などが指定される。

初回の要求額は比較的小さくても、支払うと税金、保証金、解除料など新たな名目が加わる。被害者が資金不足を伝えると、借入れ、保険の解約、不動産の売却を勧める例もあり、被害が数千万円に達することがある。

投資先の名称が実在企業に似ていたり、検索すると広告や肯定的な記事が表示されたりする場合がある。犯人側が偽サイトだけでなく、検索広告や口コミを準備して信用を補強しているためである。送金先が毎回変わる、名義が投資会社と無関係な個人である、振込理由を銀行へ説明しないよう指示される場合は、資金移転を隠す目的が疑われる。

偽の利益表示と出金できない仕組み

偽の投資画面には、実在する市場価格やチャートを取り込み、本物の取引が行われているように見せるものがある。担当者を名乗る人物が売買の時期を指示し、操作後に利益額が増えるため、利用者は投資が成功したと考える。

信用させるため、初期には少額の利益を実際に出金させることがある。その後、入金額を増やした段階で出金を拒み、税金やマネーロンダリング審査の費用を追加請求する。正規の金融事業者が、出金のために個人口座へ追加送金を求めることはない。

サイトが消えた後も、被害回復を支援すると名乗る別の人物が連絡し、手数料を求める二次被害がある。犯人グループが被害者情報を共有し、別の名義で再接触している場合もある。

画面上の数字は運営者が自由に変更でき、実際の市場で売買された証拠にはならない。取引履歴や税額の表示が詳細でも、外部の金融機関に資産が存在するとは限らない。出金申請後に信用スコア、保証金、税務証明など聞き慣れない条件が追加されるのは、さらに送金させる段階である。支払っても次の名目が生まれ、全額を取り戻すことはできない。

被害に気付くきっかけと捜査の難しさ

被害者が不審に思うのは、出金できない、約束の日に会えない、追加送金を断ると態度が変わるといった段階である。家族や金融機関が高額送金に気付き、警察への相談を勧めることで発覚する例も多い。

送金先口座は、譲渡された口座や犯罪収益の移転に使われる中継口座であることが多い。資金は短時間で別口座へ移されたり、暗号資産に交換されたりする。運営者や連絡役が海外にいる場合、アカウントの人物と実際の犯人を結び付ける捜査には国際協力が必要になる。

警察は口座凍結、通信記録、端末、暗号資産の移転履歴を追うが、被害回復が難しい場合が少なくない。送金前に金融機関や警察へ相談することが、被害を防ぐうえで最も有効な段階になる。

被害者が警察へ相談する時点では、相手のアカウントが消え、送金先口座の残高がほとんどないことがある。口座名義人も犯罪組織の中心人物とは限らず、アルバイトや融資を装って口座を譲った人物の場合がある。海外拠点では、日本語を使う連絡役、投資画面の管理者、資金洗浄担当が分かれ、被害者が接した一人だけを追っても全体へ届きにくい。

警察へ相談するときは、送金先だけでなく最初に接触したプラットフォームも伝える。運営会社が保有するログの保存期間には限りがあるため、早い申告が重要である。

被害を防ぐために確認する項目

会ったことのない相手から投資や送金を勧められた場合は、恋愛関係の有無にかかわらず金銭を渡さない。金融庁の登録を受けた事業者かを公式の検索で確認し、相手から送られたリンクや画面だけを根拠にしないことが必要である。

プロフィール写真は画像検索で同じ写真が別名で使われていないか確認できる。職業、所在地、家族関係の説明に矛盾がないか、映像通話や対面を不自然に避けていないかも判断材料になる。ただし、一つの確認が通っただけで安全とは限らない。

送金を急がせる、秘密にするよう求める、借金を勧める、出金に追加費用が必要だと説明する場合は、詐欺を強く疑う。金融機関の窓口や警察相談専用電話、消費生活センターへ、メッセージと送金先情報を持って相談する。

金融庁の登録一覧は、事業者名だけでなく所在地や電話番号まで照合する必要がある。正規業者と同じ名称を使い、URLや連絡先だけを変えた偽サイトが存在するためである。相手が指定した担当者へ確認するのではなく、自分で公式サイトの窓口を探す。恋愛相手が投資の専門家を紹介する構図自体を疑い、少額の成功体験があっても追加送金を止めることが重要になる。

被害発生後に残す記録と相談先

送金後に詐欺へ気付いた場合は、相手とのメッセージ、アカウント名、プロフィール、送金先口座、暗号資産のアドレス、取引画面を削除せず保存する。アプリ内の通報を行う前に、画面のスクリーンショットや日時を確保しておく。

銀行振込では、金融機関へ直ちに連絡することで口座が凍結され、残金があれば被害回復分配の対象となる可能性がある。暗号資産の場合も、利用した交換業者へ取引識別情報を伝える。時間が経つほど資金が移され、追跡が難しくなる。

相談先は警察の専用窓口や最寄りの警察署、消費者ホットライン、金融サービス利用者相談室などである。被害を恥じて連絡を止めると、追加請求や二次被害が続くおそれがあるため、送金額の大小にかかわらず早期に相談することが重要になる。

相手を問い詰める前に記録を保存すると、アカウント削除やメッセージ消去に備えられる。振込明細だけでなく、勧誘の開始、将来の約束、投資説明、出金拒否までの会話を時系列で整理すると、詐欺の故意を示す資料になる。被害回復をうたう業者の中には、調査費や成功報酬を先に取る二次詐欺もあるため、弁護士や公的相談先の資格と実在性を確認する。

被害者本人を責める言葉は相談を遅らせる。家族は送金経緯を否定せずに聞き、今後の追加支払いを止め、警察や金融機関へ同行することが望ましい。

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