SNS型ロマンス詐欺|2026年上半期2509件・246.6億円、DMから送金へ至る手口

公開日 2026年6月15日
最終更新 2026年8月28日

事件ステータス

発生年月日
2024年
事件分類
マッチングアプリ・SNS関連 / 詐欺

SNS型ロマンス詐欺は、恋愛感情や親近感を利用して金銭をだまし取る詐欺だ。入口はマッチングアプリやSNSのダイレクトメッセージでも、送金理由は「会うための旅費」だけではない。投資、暗号資産、ネットショップ運営、仕事上の立替金などへ話を移し、関係を切りにくくした後で金銭を要求する手口が確認されている。

警察庁によると、2025年の認知件数は5,645件、被害額は546.4億円。2026年上半期も2,509件、246.6億円に達した。2026年4月からはSNS型投資・ロマンス詐欺が特殊詐欺の一手口として分類され、統計上の扱いも変わっている。

主な接触場所マッチングアプリ、Instagram、Facebookなど
典型的な接触ダイレクトメッセージから別の連絡手段へ誘導
主な要求名目投資、暗号資産、結婚・渡航費、仕事費用、ネットショップ運営など
2025年5,645件・被害546.4億円
2026年上半期2,509件・被害246.6億円(暫定値)
2026年上半期の1件当たり被害額既遂1件当たり984.1万円
統計区分2026年4月から特殊詐欺の一手口として分類

恋愛関係を作ること自体ではなく「信用させて送金させる」ことが核心

警察庁が示す事例では、相手はSNSやマッチングアプリで接触し、実際には一度も会わないまま親密なやり取りを重ねる。プロフィール写真、メッセージ、通話だけで相手の身元が確認できたとは限らず、翻訳アプリや生成AIを使ったなりすましも可能になっている。

関係が深まると、「2人の将来のため」「会いに行くため」「仕事上の問題を解決するため」などの理由で金銭の話が出る。最初の要求額が小さくても、送金後に別の名目が追加され、被害が繰り返し拡大する場合がある。

実際に会っていない相手から投資を勧められる

ロマンス詐欺という名称から、結婚資金や渡航費だけを想像すると実態を見誤る。警察庁は、マッチングアプリで知り合った相手からFX投資を勧められ約1億5,000万円をだまし取られた事例や、恋愛感情を抱いた相手から専用アプリを入れさせられ、投資名目で約300万円を送金した事例を紹介している。

別の事例では、暗号資産取引やインターネットショップ運営を持ち掛けられている。画面上で利益が出ているように見えても、表示された数字が実際の資産を意味するとは限らない。出金のための保証金や手数料を追加で求める流れもある。

2025年は5,645件、被害額546.4億円

警察庁の2025年確定値では、SNS型ロマンス詐欺は5,645件、被害額546.4億円だった。前年より認知件数は1,821件、47.6%増え、被害額も145.5億円、36.3%増加した。件数だけでなく、1件ごとの損失が大きくなりやすい犯罪であることが分かる。

2025年に目立った変化が暗号資産だ。暗号資産送信型は2,177件、被害額247.7億円。銀行振込を経由して最終的に暗号資産へ移すものも含めると、実質的に暗号資産が主な交付形態となった被害は、件数の40.4%、被害額の48.6%を占めた。

2026年4月から「特殊詐欺」の一手口として分類

2026年4月、警察の統計上の整理が変わった。山口県警は、同月から「ニセ警察詐欺」が新たな手口として加わり、SNS型投資・ロマンス詐欺も特殊詐欺の一手口として分類されるようになったと説明している。

このため、2025年までの「特殊詐欺」と2026年4月以降の集計を単純に同じ枠組みで比較するときは注意が必要だ。犯罪そのものが2026年に新しく生まれたのではなく、警察統計上の分類が変更された。

2026年上半期は2,509件、246.6億円

警察庁が2026年7月31日に公表した上半期暫定値では、SNS型ロマンス詐欺は2,509件、被害額246.6億円だった。前年同期比では件数が5件、被害額が6.3億円増えている。既遂1件当たりの被害額は984.1万円に上る。

2025年通年の急増と比べると、2026年上半期の件数は前年同期とほぼ同水準だが、被害額はなお大きい。件数だけを見て被害が収束したと判断できる状況ではない。

被害の約8割が40代〜60代、入口の約9割がDM

2026年上半期の特徴として、警察庁は40代から60代の被害が約8割を占めるとしている。さらに70代の被害も増加傾向にある。若年層だけがSNS詐欺の対象になるわけではない。

当初の接触手段ではダイレクトメッセージが約9割を占めた。当初接触ツールは、被害額・認知件数ともマッチングアプリが最多。次いで、被害額ではFacebook、認知件数ではInstagramが続いた。

LINEなどへ移動した後に金銭の話が始まる

警察庁は、マッチングアプリで知り合った直後にLINEなど別の連絡手段へ誘導された場合、詐欺を疑うよう注意を促している。プラットフォームを移動すると、最初に使っていたサービス側の監視や通報の仕組みから離れ、相手とのやり取りが閉じた空間になりやすい。

連絡が毎日続き、将来の生活や結婚、共同の資産形成といった話が重なるほど、送金要求を単独の金銭取引として判断しにくくなる。詐欺側は「投資」と「関係維持」を結び付け、拒否しづらい状況を作る。

専用アプリやサイトの「利益表示」は出金できる証拠ではない

投資型では、相手から指定された専用アプリやウェブサイト上で利益が増えているように表示されることがある。警察庁の事例でも、運用収益が上がっているように見せかける手口が示されている。

問題は、画面上の残高と実際に引き出せる資産が別物である点だ。出金しようとした段階で「税金」「保証金」「認証費用」などを要求されれば、すでに送金した金を取り戻そうとして追加送金を重ねる危険がある。

「本人確認できたつもり」を崩す必要がある

写真が自然で、文章が流暢で、音声通話やビデオ通話までできても、それだけでは本人性を保証しない。警察庁は、公開写真や翻訳アプリ、AIなどを使えば他人になりすますことができると注意喚起している。

実際に会ったことがない相手から投資や結婚費用、旅費、仕事費用などの送金を求められた場合は、関係性とは切り離して確認する必要がある。送金前に第三者や警察相談専用窓口「#9110」、消費者ホットライン「188」へ相談することが、被害拡大を止める手段になる。

警察庁が示す典型的な流れは「出会い→別サービス→投資→出金不能」

警察庁は典型的な進行を段階的に示している。SNSやマッチングアプリで接触した後、別のメッセージサービスへ移るよう誘われ、恋愛感情を抱かせるやり取りが続く。そこから投資サイトへ案内され、より高額な投資を求められる。

最後に出金を試みると、税金や手数料など別の名目で追加送金を要求され、結局は引き出せない。そこで相手との連絡が途絶える。この流れでは、金銭要求が始まる前に時間をかけて信頼関係を作る点が重要になる。

「ロマンス詐欺」と「SNS型投資詐欺」は重なる部分がある

SNS型ロマンス詐欺では、恋愛感情や親近感を抱かせること自体が欺く過程の一部になる。一方、SNS型投資詐欺は、SNSなど非対面のやり取りを通じて投資を勧め、投資名目で金銭をだまし取る手口として整理されている。

実際の被害では両者の要素が重なる。恋人や将来のパートナーを装った相手が「2人の将来のために投資しよう」と誘えば、恋愛関係を利用した詐欺でありながら、金銭要求の具体的な名目は投資になる。名称だけで「恋愛の送金」か「投資の送金」かを二分しない方が実態に近い。

警察庁の事例では500万円、700万円、3300万円、1億5000万円の被害も

警察庁の注意喚起ページには、40代女性が仕事費用の立替名目で約500万円、40代男性が暗号資産購入名目で約700万円を失った事例が掲載されている。別の50代男性は、ネットショップ運営の仕入れや保証金名目で約3,300万円をだまし取られた。

さらに、マッチングアプリで知り合った為替アナリストを自称する相手からFX投資を勧められ、約1億5,000万円を送金した事例もある。被害額に大きな幅があるのは、最初の一回で終わらず、相手の指示に従って送金を重ねるケースがあるためだ。

2026年上半期の特殊詐欺全体でも被害額が大きい手口

2026年上半期、特殊詐欺全体の被害額は1,816.2億円だった。手口別ではSNS型投資詐欺が797.9億円、ニセ警察詐欺が507.9億円、SNS型ロマンス詐欺が246.6億円と続く。ロマンス詐欺だけで特殊詐欺全体の一部に過ぎないが、被害額では大きな割合を占める。

既遂1件当たり984.1万円という数字も、少額被害だけではないことを示している。相手との関係を維持したい心理と、すでに送った資金を取り戻したい心理が重なると、被害額が拡大しやすい。

被害者自身が送金の中継に利用される例もある

警察庁は、被害者に「投資の手伝い」などと説明し、被害者自身の口座へ入金された金銭を別口座へ送らせる事例もあると注意している。この場合、被害者は自分が送金した金を失うだけでなく、別の犯罪資金を移動させる役割に利用される可能性がある。

相手から「自分の代わりに口座で受け取ってほしい」「届いた金を別の口座へ移してほしい」と頼まれた場合も危険信号になる。恋愛や投資の話だけでなく、資金移動の手伝いを求められた時点でやり取りを止め、第三者に相談する必要がある。

早い段階で確認したい五つの兆候

警察庁の事例から共通点を拾うと、①直接会ったことがない、②知り合って早期に別の連絡サービスへ移る、③将来や結婚の話と投資を結び付ける、④指定された投資アプリやサイトだけで利益が表示される、⑤出金時に追加送金を要求される、という流れが警戒点になる。

どれか一つだけで詐欺と断定できるわけではない。しかし複数が重なり、とくに金銭・暗号資産の送付を求められた場合は、相手が示した連絡先や投資サイトとは別の経路で確認する必要がある。

参考資料・出典

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