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自殺サイト連続殺人事件|前上博が自殺志願者3人を殺害したネット悪用連続殺人事件

事件概要

項目内容
事件名自殺サイト連続殺人事件
発生2005年2月〜6月
発生場所大阪府河内長野市、和泉市周辺
被害者3人(女性1人、男子中学生1人、男子大学生1人)
犯人前上博
犯行殺人、死体遺棄、未成年者誘拐、脅迫
逮捕2005年8月5日
判決死刑(確定)
死刑執行2009年7月28日
性質インターネット悪用型連続殺人事件

事件の注目ポイント

自殺サイト連続殺人事件は、自殺願望を抱える利用者が集まる掲示板を悪用し、接触した相手を次々に殺害した連続殺人事件である。犯人の前上博は、自殺志願者に「一緒に死のう」などと持ちかけて信用させ、実際には自分だけが生き残る形で犯行を重ねた。

被害者は、2005年2月の25歳女性、5月の14歳男子中学生、6月の21歳男子大学生の計3人で、いずれも自殺サイトを通じて接触していた。事件は、ネット上の匿名性と自殺願望につけ込んだ極めて悪質な犯行として大きな衝撃を与えた。


事件の発生

前上博は、2004年末ごろから自殺系サイトに目をつけ、自殺志願者へ接触するようになった。表向きは「集団自殺」や「一緒に死ぬ相手」を装っていたが、実際には相手を支配し、窒息させて苦しむ様子を見ること自体を目的にしていたと認定されている。

最初の被害者は、2005年2月19日に大阪府河内長野市へ連れ出された25歳女性だった。前上はレンタカー内で女性の手足を縛り、鼻と口を繰り返し塞いで失神させた後、窒息死させ、遺体を河原に掘った穴へ遺棄した。


犯行状況

2人目の被害者は、2005年5月21日に誘い出された神戸市北区の中学3年の男子生徒だった。前上はJR南田辺駅前に呼び出した後、車内で手足を縛り、鼻と口を何度も塞いで失神させ、和泉市へ移動して窒息死させた。さらに、事件後には遺族から300万円を脅し取ろうとする脅迫電話までかけている。

3人目の被害者は、2005年6月10日に接触した東大阪市の男子大学生だった。前上は河内長野市内へ同行させた後、レンタカー内で手足を拘束し、鼻と口をタオルで塞いで窒息死させ、遺体を山林へ遺棄した。犯行は毎回、拘束→窒息→遺棄という流れで行われていた。


捜査経過

事件が表面化したのは、行方不明者の捜索と遺体発見が重なったことがきっかけだった。警察は、被害者たちがいずれも自殺サイトを利用していたこと、さらに同一人物との接触履歴があったことから、連続事件として捜査を進めた。

2005年8月5日、大阪府警は前上博を逮捕した。自宅倉庫からは、被害者の苦しむ声を録音したテープや、犯行を撮影したビデオなども押収されており、犯行の異常性と計画性を裏づける重要証拠とされた。


前上博の供述と犯行の異常性

前上博は公判で起訴事実を認めた。事件では、被害者に自殺サイトの利用履歴を削除させたり、遺族あての遺書を書かせたりするなど、自殺に見せかける偽装工作も行っていた。単に殺害するだけではなく、発覚を遅らせ、自分への捜査を遠ざける工夫が重ねられていた。

また、犯行の過程で被害者を何度も失神させては蘇生させる行為が認定されており、裁判では快楽目的の連続殺人という評価が前面に出された。被害者の弱い心理状態につけ込み、しかもその苦痛そのものを利用していた点で、極めて悪質な事件と判断されている。


裁判

2005年12月に大阪地裁で初公判が開かれ、前上博は起訴事実を全面的に認めた。弁護側は責任能力を争う姿勢を示したが、裁判所は完全責任能力を認定した。

2007年3月28日、大阪地裁は死刑判決を言い渡した。判決では、被害者が3人に及ぶこと、犯行が快楽目的で反復継続されていたこと、ネットを利用して巧妙に被害者を誘い出したことなどが重く評価された。前上はその後控訴を取り下げ、死刑が確定した。


死刑執行

前上博の死刑は、2009年7月28日に執行された。確定から約2年での執行であり、自殺サイトを悪用した連続殺人犯としては異例の速さで刑が執行された部類に入る。


社会的影響

この事件は、自殺サイトそのものが殺人の入口になり得ることを社会に突きつけた。事件後、自殺掲示板や匿名掲示板の監視、ネット上の自殺呼びかけへの対策、若年層や孤立者の保護が強く議論されるようになった。

また、被害者の多くが「死にたい」という弱った心理状態の中で接触していたことから、この事件は単なるネット犯罪ではなく、孤立した人間の脆弱さを食い物にした犯罪としても語られている。


現在の位置づけ

自殺サイト連続殺人事件は、日本におけるインターネット悪用型連続殺人の代表例として位置づけられている。のちの座間9人殺害事件などを考える上でも先行事例として参照されることが多く、ネット上の匿名性、孤立、自殺願望、犯罪利用という問題が重なった事件として記憶されている。


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