2009年7月17日午後9時34~35分ごろ、JR鳥取駅北口のタクシー乗り場から、毎日タクシー運転手の下田和雄さん(当時60歳)が客を乗せて出発した。約5分後、鳥取市立川町6丁目の住宅街で下田さんは拳銃で撃たれる。犯人はタクシーを約2キロ運転し、東今在家の住宅街へ乗り捨てて逃走した。
事件から17年が経過した2026年も犯人は検挙されていない。鳥取県警は同年2月5日に公開捜査ページを更新し、捜査特別報奨金の対象期間を2027年2月4日まで延長した。上限は300万円。駅から発砲現場、乗り捨て場所までの移動、防犯カメラ、車内の足跡、犯人を見た可能性のある駅利用者など、現在も具体的な情報を公開している。
| 発生日 | 2009年7月17日 |
|---|---|
| 被害者 | 下田和雄さん(当時60歳、毎日タクシー運転手) |
| 犯人乗車 | 午後9時34~35分ごろ・JR鳥取駅北口 |
| 防犯カメラ | 午後9時38分ごろ・産業道路を東進 |
| 発砲 | 午後9時40分ごろ・鳥取市立川町6丁目 |
| 乗り捨て | 午後9時50分ごろ・鳥取市東今在家 |
| 凶器 | 拳銃 |
| 遺留資料 | 車内の足跡、車両・弾痕など |
| 捜査特別報奨金 | 上限300万円 |
| 現行期間 | 2026年2月5日~2027年2月4日 |
午後9時30分、特急列車が鳥取駅へ到着した直後
鳥取県警が現在注目している時間の一つが午後9時30分前後である。この時刻、岡山駅を午後7時46分に出た特急「スーパーいなば9号」がJR鳥取駅に到着した。
犯人がこの列車の乗客だったと警察が断定しているわけではない。ただし、被害タクシーが出る直前に駅北口方向へ歩いた複数の人物について、犯人を目撃している可能性があるとして情報を求めている。
発砲現場は産業道路から入った住宅街だった。県警資料では、事件後にその場所から被害タクシーが北方向へ走り去る様子を見たとの情報がある。
拳銃がどこで入手されたのか、何発発射されたのか、犯人が最初から下田さんを殺す目的だったのかは、現行の県警ページでは明らかにされていない。強盗殺人として捜査されているが、奪われた金額なども公開ページには記載されていない。
午後9時34~35分、下田さんのタクシーに犯人が乗車
県警の現行ページは、犯人がJR鳥取駅北口のタクシー乗り場から乗車したと明記している。乗車場所が分かっているため、事件は『どこから乗ったか分からない客』を追う捜査ではない。問題は、午後9時30分前後の駅前にいた多数の利用者の中から、下田さんの車に乗り込んだ人物を特定できていないことにある。
下田さんの車が乗り場を出る直前には、特急スーパーいなば9号の乗客が駅構内を移動していた。県警はその中の3人を犯人の目撃可能性がある人物として公開し、後に女性Aを特定した。現在も男性B・Cについて情報を求めている。
下田さんはJR鳥取駅北口のタクシー乗り場で客待ちをしていた。鳥取県警によると、犯人を乗せたタクシーは午後9時34分ごろから35分ごろに乗り場を出発した。
出発後、駅北口の障害者用乗降口で一時停車していた目撃情報もある。なぜ止まったのか、犯人がそこで何をしたのかは公表されていない。駅周辺で乗車前後の犯人を見た可能性がある人の特定が、長期捜査でも続けられている。
午後9時38分、防犯カメラに東へ走るタクシー
駅を出た約3~4分後の午後9時38分ごろ、被害タクシーは主要地方道鳥取国府岩美線、通称「産業道路」を東方向へ走る姿が防犯カメラに記録されていた。
この映像によって、駅を出てから発砲現場へ向かう時間の一部が客観的に確認できる。映像から犯人の顔が特定されたとの公表はないが、車両の移動経路と時刻を絞る重要な資料になっている。
午後9時40分ごろ、立川町6丁目で下田さんを射殺
鳥取県警は、午後9時40分ごろ、犯人が鳥取市立川町6丁目の住宅街で下田さんを射殺したと公表している。犯行には拳銃が使われた。
2024年の日本海テレビ取材で鳥取署の捜査員は、下田さんが背中から肩甲骨付近に銃弾を受け、弾が胸側へ貫通したと説明した。タクシーを降りようとして体を横へ向けた時に、背後から撃たれた可能性をみているという。これは捜査側が車両や弾道から推定している犯行時の体勢である。
発砲後、犯人は下田さんのタクシーを運転した
事件現場に止まっていた被害タクシーは、発生後に北方向へ走る姿を目撃されている。下田さんが撃たれた後、犯人が車両を運転したと警察はみている。
運転手を殺害した場所でそのまま逃げるのではなく、被害車両を使って約2キロ移動したことが、この事件の特徴の一つである。犯人が土地勘を持っていたのか、行き当たりばったりに走ったのかは明らかになっていない。
午後9時50分ごろ、約2キロ先で乗り捨て
下田さんのタクシーは、鳥取市東今在家の住宅街で午後9時50分ごろ発見された。発砲から約10分。犯人はそこから別の交通手段か徒歩で逃げたとみられるが、逃走先は特定されていない。
乗り捨て場所は県道沿いの住宅地で、事件当時も現在も家が立ち並ぶ。県警は、タクシーが走っているところや不自然な速度で走る車を見た人、乗り捨て場所付近で人物を見た人の情報も求めている。
2024年の映像では、事件当時のタクシーのシートや車体がそのまま残され、運転席周辺には銃撃の痕跡が確認できる。捜査員は、通常の運転姿勢なら弾がシートや前方へ抜ける位置関係から、下田さんが体を横へ向けた時に背後から撃たれた可能性を説明した。
これは犯人の供述ではなく、車両と遺体の損傷から捜査側が組み立てた推定である。被疑者が逮捕されていない事件では、物証から再現した犯行状況と、裁判所が認定した事実は区別される。
犯行車両は現在も発生当時の状態を残して保管
日本海テレビは事件15年となった2024年、犯行現場となったタクシーが捜査資料として保管されている様子を取材した。車内のシートには弾道や事件の痕跡が残り、車体も長期間保存されている。
車両を残す理由は、将来の鑑定技術で新たな証拠を取り出せる可能性があるためだ。一方、時間の経過による劣化で失われる情報もある。未解決事件では、保存資料そのものが将来の再鑑定の基礎になる。
県警が公開する足跡画像は、単に靴のサイズを示すものではない。靴底の外周、つま先、かかとの模様を分けて公開し、当時使われていた靴と照合できるようにしている。参考画像では26センチの靴底が示されている。
同じ模様の靴を持っていたことだけで犯人になるわけではないが、事件当日に鳥取駅周辺にいた人物の服装や行動と一致すれば、捜査資料との照合対象になる。古い写真に写った靴でも、形状が確認できれば手掛かりになり得る。
車内から見つかった特徴的な足跡
鳥取県警は、乗り捨てられたタクシーの車内から足跡が見つかったと公表している。靴底の縁は斜線状、つま先側にひし形の集合図形と横線、かかと側にもひし形と横線がある。
県警は類似する靴底の参考として、正規品ならコンバースなどに見られる形状を挙げる。ただし、特定ブランドの靴を履く人物を犯人と断定しているわけではない。事件当時に同様の靴を好んで履いていた人物の情報を広く求めている。
犯人を見た可能性がある駅利用者A・B・C
捜査特別報奨金の指定後、鳥取県警は被害タクシーが出発する直前にJR鳥取駅を通った3人の男女を公開し、本人や知人からの連絡を求めた。3人はいずれも午後9時30分着のスーパーいなば9号に乗車していたとされる。
女性Aはその後、情報提供によって身元が判明した。一方、男性BとCについては2026年の公開ページでも情報募集が続く。2人は午後9時33分ごろ駅構内を北口方向へ歩いており、犯人を目撃している可能性があると警察はみている。
Bは黒い半袖、Cは黒白ボーダー
男性Bは中肉、黒色短髪、黒っぽい半袖シャツとズボン、白色スニーカーで、黒っぽいトートバッグと白色の袋を持っていた。
男性Cも中肉・黒色短髪で、黒と白のボーダー柄半袖シャツ、カーキ色ズボン、黒色スニーカー、白色のかばんという特徴が公開されている。二人は被疑者として手配されている人物ではなく、事件直前に駅を通ったため情報を持つ可能性がある参考人候補である。
報奨金指定後、情報提供件数が増えた
日本海テレビによると、事件発生後2年間は約80件の情報が寄せられたが、その後は2022年まで年間平均5件程度に減少していた。2023年に捜査特別報奨金の対象となって以降、2024年4月末までに42件が寄せられた。
時間がたつほど、当日の記憶や物品が失われる可能性は高くなる。警察が駅利用者や靴底、当時の町並みまで詳しく公開するのは、「直接犯人を見た」という情報以外からも記憶を掘り起こすためである。
事件後、鳥取県ハイヤータクシー協会はタクシー乗り場へ防犯カメラを設置したと日本海テレビは報じている。事件当時に現在のような映像記録が十分残らなかったことが、業界側の防犯対策にも影響した。
県警も長期化に合わせ、ポスターの表現を具体化し、二次元コードから事件ページへアクセスできるティッシュを配るなど、情報募集の方法を変えてきた。17年前の記憶を持つ人だけでなく、その人から当時の話を聞いた家族や知人も情報源になり得るためである。
捜査員は延べ9万2000人に達したと報じられた
2024年の日本海テレビ取材では、事件発生から15年までに延べ約9万2000人の捜査員が投入されたと報じられた。鳥取県内では長期にわたる大規模捜査となっている。
大量の人員を投入しても、拳銃の入手経路、犯人の氏名、乗車前後の行動、逃走先という核心は残った。事件現場と車両には物的資料がある一方、それを一人の人物へ結びつける情報が不足している。
2010年の法改正で、強盗殺人・殺人の公訴時効は廃止
事件翌年の2010年、刑事訴訟法が改正され、人を死亡させた罪のうち死刑に当たる殺人や強盗殺人などについて公訴時効が廃止された。
改正時点で旧制度の時効が完成していなかった事件にも新制度が適用されるため、2009年発生の本件に時効はない。日本海テレビの取材でも鳥取署はこの点を明示し、長期間が経過しても捜査は終わらないとしている。
2026年2月、報奨金期間を2027年2月4日まで更新
鳥取県警は2026年2月5日、事件の公開捜査ページを更新し、捜査特別報奨金の対象期間を2027年2月4日までとした。上限額は300万円。
対象となるのは、犯人の検挙や事件解決に寄与する情報である。駅で見た人物、犯行前後のトラブル、事件後に行動が変わった人物、似た靴の使用、タクシーの走行や乗り捨てなど、直接・間接を問わず情報を求めている。
鳥取県警が現在公開している時系列は、午後9時33分ごろの駅利用者、9時34~35分の出発、9時38分の防犯カメラ、9時40分ごろの発砲、9時50分ごろの乗り捨て発見まで連続している。
ここまで時間と車両の動きが絞られていても、犯人本人の映像や氏名に結びついていない。駅で誰かを待っていたのか、鳥取市内の土地勘があったのか、乗り捨て後にどの方向へ移動したのかという人物側の情報が不足している。
現在も、犯人の氏名・拳銃・逃走先は判明していない
2026年8月現在、被疑者の逮捕や起訴は公表されていない。鳥取県警の現行ページは、下田さんを射殺した人物を「犯人」として捜査しているが、氏名や年齢、性別など具体的な人物像は公開していない。
午後9時35分ごろの鳥取駅出発、9時38分の防犯カメラ、9時40分ごろの発砲、9時50分ごろの車両発見。約15分間の移動はかなり細かく分かっている。それでも、その車内にいた人物が誰だったのかという一点が、17年後も埋まっていない。
参考資料・出典
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