2004年10月13日から16日にかけて、架空請求詐欺を行う組織の内部で男性4人が次々に拘束された。発端は、4人が中国人マフィアを使って清水大志らを襲わせ、多額の現金を奪う計画を立てているという情報だった。清水らは計画の内容を聞き出し、制裁を加えるために4人を監禁した。
しかし、4人の死亡経過は同じではない。最高裁が認定した事実では、2人は殺害を実行する前の激しい暴行によって死亡し、残る2人は殺害するとの話し合いが成立した後、鼻や口をふさがれるなどして窒息死した。4人全員を同じ方法で殺害した事件として一括りにすると、確定判決の事実認定から外れる。
清水大志、渡辺純一、伊藤玲雄には、それぞれ別の裁判で死刑が言い渡された。渡辺だけは一審で無期懲役だったが、東京高裁が死刑へ変更し、最高裁もこれを維持した。2013年1月29日に清水と渡辺、同年2月28日に伊藤の上告が棄却され、3人の死刑が確定した。
| 発生 | 2004年10月13日~16日 |
|---|---|
| 背景 | 架空請求詐欺グループ内部の対立 |
| 被害 | 同じ組織の男性4人が死亡 |
| 死亡経過 | 2人は暴行による傷害致死、残る2人は殺人と認定 |
| 遺体 | 4人の遺体を茨城県内の土中に遺棄 |
| 清水大志 | 一審死刑→控訴棄却→2013年1月29日上告棄却 |
| 渡辺純一 | 一審無期懲役→控訴審死刑→2013年1月29日上告棄却 |
| 伊藤玲雄 | 一審死刑→控訴棄却→2013年2月28日上告棄却 |
| 2026年8月 | 3人はいずれも死刑確定者として収容が続いている |
「襲撃計画がある」と聞き、4人を拘束して内容を聞き出そうとした
最高裁判決によれば、清水らは、被害者4人が中国人マフィアに依頼して自分たちを襲撃させ、多額の現金を奪おうとしていると聞いた。そこで計画の内容を聞き出し、同時に制裁を加える目的で、4人を逮捕監禁または監禁した。
ここで注意が必要なのは、被害者側の襲撃計画そのものを裁判所が独立して犯罪事実として確定したわけではない点である。清水らがそのような計画があると聞き、それを理由に監禁と暴行へ進んだというのが判決の記述だ。事件の動機を説明する際には、情報の存在と、その情報を受けて被告人側が取った行動を分ける必要がある。
監禁中の暴行で、殺害実行前に2人が死亡した
拘束された4人には激しい暴行が加えられた。最高裁は、1人について殴る、蹴るなどの暴行に加え、熱湯を掛けるなどして熱傷性ショック等で死亡させたと認定している。伊藤の判決では、さらに覚醒剤を注射する行為も認定されている。
別の1人は、すでに暴行で衰弱していたところ、口元や胸部などへ粘着テープを巻き付けられ、呼吸不全で死亡した。これら2人について認定された中心的な犯罪は傷害致死であり、後に残る2人へ実行された殺人とは法的評価が異なる。
4人をどうするか話し合う中で、殺害するとの結論に至った
監禁を続けるうち、清水らは4人の処置に困り、解放すれば報復されるおそれがあると考えるようになった。最高裁は、被告人らが「殺害するほかない」と話し合い、暴力団関係者へ殺害を依頼する交渉を進めたと認定した。
その交渉中に、すでに2人が暴行によって死亡した。さらに、外部へ殺害を依頼する交渉も失敗したため、残った2人の殺害を自分たちで実行する流れになった。監禁開始時から4人全員の殺害が確定していたと単純化するより、拘束、暴行、殺害の謀議、外部への依頼失敗という段階を追う方が判決に近い。
残った2人は緊縛された状態で殺害された
残る2人は寝袋に入れられ、粘着テープで何重にも緊縛されるなど、身動きが取れない状態に置かれた。最高裁は、その鼻や口をふさぐなどして窒息死させた行為を殺人と認定した。
伊藤の最高裁判決は、先の2人が死亡するのを目の当たりにした後も、残る2人の鼻口部をふさぐという殺害行為の中核部分を自ら実行したと指摘する。伊藤側には上位者を恐れて指示に従った面もあったとされたが、それでも実行上の役割は重大だったと評価された。
遺体4体は、暴力団関係者への高額報酬を通じて土中へ遺棄された
4人の死亡後、遺体は茨城県内の土中へ遺棄された。最高裁判決は、犯行の発覚を防ぐため、暴力団関係者に依頼して高額の報酬を支払い、深く掘った土中へ4人の遺体を埋めさせたと認定している。
死体遺棄は殺害後に偶然行われた処置ではなく、一連の犯跡隠蔽の中で実行された。清水については高額の報酬を用意したこと、渡辺についても遺棄で中心的な役割を担ったことが、量刑判断の中で具体的に触れられている。
清水大志は「実行していない」だけでは責任を免れなかった
清水の裁判では、本人が殺人への関与を否認した。しかし最高裁は、清水が一貫して謀議の中核におり、主導的・中心的な立場で犯行に関与したと認定した。自ら暴行を加えただけでなく、外部への殺害依頼が失敗したとの連絡を受けた後、共犯者へ殺害の実行を指示したとされる。
殺人事件では、手を下した者だけが刑事責任を負うわけではない。清水の判決では、殺害の謀議を形成し、実行を指示し、死体遺棄の費用まで準備した一連の行為が重視された。最高裁は一審の死刑を維持し、2013年1月29日に上告を棄却した。
渡辺純一だけは、一審無期懲役から控訴審で死刑へ変わった
3人の中で裁判経過が大きく異なるのが渡辺である。千葉地裁は2007年8月7日、渡辺を無期懲役とした。しかし東京高裁は2009年3月19日、一審判決を破棄して死刑を言い渡した。
最高裁は渡辺を、清水とともに一連の犯行の中核メンバーと評価した。監禁時にナイフを突き刺すなどの暴行を加え、最初の傷害致死にも大きく寄与し、残る被害者を殺害する者がいない場合には自ら実行するよう共犯者へ指示したことなどを認定した。犯行後の口止め工作も含め、役割は大きかったとされた。
そのため最高裁は、一審が無期懲役とした事情を踏まえても、控訴審が死刑へ変更した判断を是認した。2013年1月29日の上告棄却により、渡辺の死刑は確定した。
伊藤玲雄は従属的な面を認められながらも死刑を免れなかった
伊藤について最高裁は、上位者を恐れて指示に従った面があり、その関係では従属的な立場だったことを認めている。前科がなく、事実関係をおおむね認め、反省の態度を示していたことも有利な事情として挙げた。
それでも、監禁中に積極的に暴行へ加わり、2人が死亡した後、残る2人の殺害行為の中核を自ら実行したことは重いとされた。最高裁第一小法廷は2013年2月28日に上告を棄却し、一審から維持されてきた死刑を変更しなかった。
「4人殺害」ではなく、傷害致死2人と殺人2人を区別する
事件全体では4人が死亡しているため、「4人殺害事件」と呼ばれることがある。しかし確定判決の認定は、2人が激しい暴行による傷害致死、残る2人が殺人という構成である。
結果として4人の生命が失われたことは変わらないが、誰にどの時点で殺意が認定されたのか、どの行為が死亡結果につながったのかは別問題だ。刑事裁判ではこの違いが各被告人の共謀、実行行為、量刑を判断する前提となっている。
3人の死刑判決は、同じ理由をそのまま当てはめたものではない
清水は謀議と指示の中心、渡辺は暴行と殺害決定を実質的に進めた中核、伊藤は残る2人の殺害行為を直接担った実行者として評価された。それぞれの役割は異なる。
一方で最高裁はいずれの判決でも、4人が死亡した結果、激しい暴行、殺害への計画的移行、遺体遺棄による犯跡隠蔽を重く見た。3人の死刑という同じ結論は、役割を一律に扱った結果ではなく、個別の関与を検討したうえで出されたものだった。
とりわけ渡辺について、一審は無期懲役を選択していた。控訴審と最高裁がその量刑を改めて死刑とした経過は、4人が死亡したという結果だけで自動的に刑が決まったわけではないことを示す。各人が謀議、暴行、殺害、犯跡隠蔽のどこで何を担ったのかが、最後まで量刑判断の中心になった。
3人の一審・控訴審・最高裁は、別々の日程で進んだ
清水は2007年8月7日に千葉地裁で死刑となり、東京高裁は2009年5月12日に控訴を棄却した。最高裁第三小法廷も2013年1月29日に上告を棄却している。渡辺は同じ2007年8月7日の千葉地裁で無期懲役だったが、2009年3月19日に東京高裁が一審を破棄し、死刑へ変更した。その死刑を最高裁が2013年1月29日に維持した。
伊藤は2人とは判決日程が異なり、2007年5月21日に千葉地裁で死刑判決を受け、2009年8月28日に東京高裁で控訴棄却、2013年2月28日に最高裁第一小法廷で上告棄却となった。同じ4人死亡事件でも、3人の刑が一つの裁判で同時に確定したわけではない。
起訴・審理された犯罪事実も、3人で完全には同一ではない
最高裁判決を読むと、3人に共通する中心は、4人の監禁・暴行、2人の傷害致死、残る2人の殺害、死体遺棄である。一方、清水の上告審には2004年10月から11月にかけての組織的な架空請求詐欺も含まれ、渡辺の上告審には2005年6月に拘置施設内で起こした傷害事件も含まれていた。
そのため、「同じ事件で3人が死刑になった」という要約だけでは、各判決が審理した犯罪の範囲を正確に示せない。死刑選択では4人死亡の一連の犯行が中心になったが、裁判所は各人の関与、前後の犯罪、反省状況などを個別に検討している。
清水については、架空請求詐欺を行う組織の中心的人物として活動していたことも判決で扱われた。渡辺についても、本件後に拘置施設内で別の被収容者へ暴行を加えた傷害事件が併合審理されている。事件名だけから3人の判決内容を完全に同一と考えると、こうした審理範囲の違いが見えなくなる。
2026年8月現在、清水・渡辺・伊藤はいずれも死刑確定者として収容中
清水、渡辺、伊藤はいずれも2013年に死刑が確定した。その後、3人について死刑執行や収容中死亡は公表されておらず、2026年8月21日更新の死刑確定者一覧でも生存する確定者として掲載されている。
判決から13年以上が経過したが、法的状態は「死刑判決を受けた被告人」ではなく、刑が確定した死刑確定者である。死刑判決、死刑確定、死刑執行は別の段階であり、本件では3人とも最後の執行段階には至っていない。
参考資料・出典
- 最高裁判所第三小法廷「平成21年(あ)第994号」判決・2013年1月29日(渡辺純一)
- 最高裁判所第三小法廷「平成21年(あ)第995号」判決・2013年1月29日(清水大志)
- 最高裁判所第一小法廷「平成21年(あ)第1602号」判決・2013年2月28日(伊藤玲雄)
- CrimeInfo「死刑確定者 全リスト」
- CrimeInfo「無期懲役あるいは無罪判決を経た死刑確定者」
関連事件
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