新宿歌舞伎町ラブホテル連続殺人事件|女性3人死亡と1人襲撃の未解決事件

公開日 2026年6月25日
最終更新 2026年8月14日

1981年3月から6月にかけ、東京都新宿区歌舞伎町二丁目の別々のラブホテルで、女性3人が相次いで首を絞められて死亡した。6月には同様に首を絞められた30歳女性が抵抗して生還し、現金を奪われる事件も起きた。

各事件では男女が一緒に入室し、男だけが先に立ち去った後、女性が客室で発見された。絞殺、パンティーストッキングなどの使用、料金を払わず逃げる行動に共通点があったが、男の特徴や被害者との関係には違いもあり、同一犯とは確定しなかった。

当時のホテルには防犯カメラがなく、宿泊者の身元確認も現在ほど厳密ではなかった。犯人は検挙されず、各事件は1996年までに公訴時効が成立した。3人のうち1人は身元が確認されないまま残った。

発生期間1981年3月~6月
発生場所東京都新宿区歌舞伎町二丁目のラブホテル
被害女性3人死亡、女性1人が首を絞められ生還
手口男性客が退出後、客室で絞殺状態の女性を発見
現在の状況犯人未特定・公訴時効成立

1981年の歌舞伎町とホテルの匿名性

1981年の歌舞伎町は飲食店、キャバレー、映画館、風俗店、宿泊施設が集中し、昼夜を問わず多数の人が出入りしていた。ラブホテルは利用者のプライバシーを重視し、名前や身分証を詳しく確認しない施設が多かった。

男女が短時間利用し、一人が先に出ても従業員が必ず確認する運用ではなかった。客室や廊下に防犯カメラもなく、犯人は偽名を使わずとも身元を残さず入室・退出できた。

この匿名性は利用者の私生活を守る一方、客室内で犯罪が起きた場合に同伴者を特定しにくくした。従業員の短い目撃と、室内に残った指紋や所持品が捜査の中心となった。

3月20日に発見された45歳女性

最初の事件は3月20日午前に発覚した。前夜から男女がホテルへ入り、男は午前7時ごろ一人で出た。チェックアウト時刻になっても女性から応答がないため、従業員が客室を確認し、首を絞められた女性を発見した。

室内の名刺から当初は33歳のホステス名が浮上したが、調べにより本名は和田露子さん、年齢は45歳と判明した。仕事上の名前と実名が異なったことが、初期の身元確認を複雑にした。

和田さんと男がどこで知り合い、ホテルへ入ったかは解明されなかった。男が勤務先の客だったのか、路上で会ったのかも分からない。従業員の記憶だけで似顔絵を作るには情報が不足していた。

二件目は4月25日夜、別のホテルで起きた。男女が午後9時ごろ入室し、約1時間後、男が「女性は後から出る」という趣旨を告げて退出しようとした。従業員が不審に思い部屋へ電話したが応答がなかった。

従業員が客室で女性の遺体を見つけ、フロントへ戻った時には男は逃げていた。女性はパンティーストッキングで首を絞められ、衣服やバッグなど身元を示す所持品の多くが持ち去られていた。

残された装身具や身体特徴から情報提供が求められたが、女性の身元は確定しなかった。身元が分からなければ、交友関係、勤務先、最後の行動を調べられず、犯人との接点を追う捜査も大きく制限される。

6月14日に死亡した17歳の長田貴子さん

三件目は6月14日夕方に発生した。男女がホテルへ入り、午後7時40分ごろ男からフロントへ退出を告げる電話があった。従業員が部屋へ向かう途中で男とすれ違い、別の従業員が女性の異常に気付いて男を追ったが逃げられた。

女性はパンティーストッキングを首に巻かれた状態で病院へ運ばれたが死亡した。所持していた図書館の本などから、17歳の長田貴子さんと身元が判明した。手足には縛られたような痕もあったと報じられている。

長田さんが男と知り合った場所や、ホテルへ入った経緯は確定しなかった。未成年であったことを利用し、声をかけて連れ込んだ可能性も調べられたが、直接の目撃や男の氏名には結び付かなかった。

6月25日の襲撃から生還した女性

三件目から11日後の6月25日、歌舞伎町のゲームセンターで30歳の女性が男から声をかけられ、近くのホテルへ入った。女性が客室でうとうとしていると、男はネクタイで首を絞めた。

女性が目を覚まして強く抵抗したため、男は殺害を遂げられず、財布から現金約5万円を奪って逃走した。女性は男を追ったが見失い、警察へ被害を届け出た。

生存者から男の外見、話し方、接触方法を聞ける点で、前の三件より有力な捜査材料となった。ただし、緊急時の目撃は短く、犯人が同一人物かを確定できる特徴や身元は得られなかった。

絞殺手口と遺留物の共通点

四件はいずれも歌舞伎町二丁目のホテルで発生し、女性の首を布や衣類で絞め、男が一人で立ち去る点が似ていた。料金を支払わず逃げた事件もあり、警察は連続犯の可能性を視野に合同で捜査した。

一部の室内資料から覚醒剤成分が検出されたとの報道があり、被害者が犯行前に薬物を摂取させられた可能性も調べられた。三件目ではA型の血液やコップの指紋が犯人のものとして検討された。

ただし、当時の鑑定では微量資料からDNA型を識別できず、血液型や指紋が既存の容疑者と一致しなければ特定できない。各事件の男の描写にも差があり、模倣犯や無関係の犯行が含まれる可能性を排除できなかった。

容疑者を絞れなかったホテル内捜査

警察はホテル従業員、歌舞伎町の店舗、被害者の知人、同種事件の前歴者を調べた。1982年には女性への別の性犯罪で逮捕された男との関連も検討されたが、本件の犯人とする証拠は得られなかった。

ホテルの宿泊名簿、防犯映像、カード決済記録がほとんどなく、男が現金で料金を支払い、徒歩で雑踏へ出れば足取りは途切れた。被害者側の身元や交友関係が分からない二件目では、捜査の入口自体が限られた。

連続事件として報じられることで、似た手口の情報が多数寄せられた一方、便乗供述や記憶違いも増える。警察は犯人だけが知る客室状況を公表せず、情報の信用性を見分けたが、逮捕へつながる供述はなかった。

被害者の身元確認が捜査を左右した

一件目と三件目では被害女性の身元が確認され、家族、勤務先、交友関係、歌舞伎町へ来た経緯を調べることができた。一方、二件目の女性は身元が分からず、犯人と接点を持った可能性のある生活圏をたどれなかった。

身元不明者の捜査では、歯科所見、指紋、衣服、所持品、似顔絵を全国へ照会する。当時はDNA型を親族データと比較する制度がなく、家族が行方不明届を出していない場合や別名を使っていた場合、照合はさらに難しかった。

被害者の氏名が分からないことは、被害が軽いことを意味しない。生活歴を明らかにできなかったために捜査情報が限られ、事件から長い年月が経っても家族へ死亡を伝えられていない可能性が残る。

三件の死亡現場では、被害女性の衣服や所持品の一部が持ち去られたとの記録もあり、犯人が身元確認を遅らせ、記念品として保持し、あるいは自分の痕跡を隠そうとした可能性が検討された。詳細は事件ごとに異なり、共通の目的は確定していない。

ホテル従業員は多数の利用客へ対応しており、後から一組だけを正確に思い出すことが難しかった。男が帽子や眼鏡を使い、女性と自然に入室すれば、従業員が異常を感じないまま通過した可能性がある。

当時の歌舞伎町には似た形態のホテルが密集し、犯人は事件ごとに施設を変えていた。管轄内の情報をまとめ、手口や被害者像を比較する必要があったが、紙の宿泊記録と聞き込み中心の捜査には限界があった。

被害女性の職業や歌舞伎町へ来た理由を推測し、危険を選んだかのように描くことは適切ではない。ホテルへ同行したことは殺害への同意ではなく、犯人の責任を軽くする事情にはならない。

生還した女性の証言と同一犯捜査

6月25日の事件では、女性が絞められながらも抵抗し、相手が逃走したため生還した。警察は男の年齢、体格、話し方、服装、客室での行動を聞き取り、先の三件との共通点を調べた。

生存被害者の証言は犯人像を具体化する一方、極度の緊張下で見た特徴には誤差もあり得る。似顔絵や説明に近い人物を広く調べても、客観証拠と一致しなければ逮捕には至らない。

三件の死亡事件と未遂事件は、場所、期間、絞殺という共通性から連続犯が疑われた。しかし被害者の選び方や客室内の状況に違いもあり、同一人物による犯行と確定する物証は得られなかった。

被害者がホテルへ入った相手を自ら選んだとしても、客室内で首を絞められる危険を予測したことにはならない。匿名性の高い場所を利用した事情を被害者の責任として描けば、犯人の計画と暴力が見えにくくなる。

事件後、ホテル業界では宿泊者確認や従業員の巡回、防犯設備の必要性が意識された。ただし、利用者のプライバシーを重視する営業形態との間で、どこまで身元確認を行うかは難しい課題だった。

時効までの15年間、似た性犯罪者や絞殺事件との照合が続けられたとみられる。犯人が別事件で逮捕されても、客室の秘密情報、指紋、供述が一致しなければ、本件の殺人を立証することはできない。

身元不明女性については、当時の歯科資料や行方不明届との新たな照合によって、刑事時効後でも氏名が判明する可能性は残る。

1996年の時効と同一犯不明の結末

当時の殺人罪の公訴時効は15年で、1981年の各事件は1996年に相次いで時効を迎えた。後の時効廃止は、すでに完成した事件には適用されず、現在新たな犯人が判明しても当該殺人罪で起訴できない。

「連続殺人事件」という呼称は、短期間・近距離で手口の似た事件が続いたことによる。裁判や捜査の最終判断で、一人の犯人が三人を殺害したと認定されたわけではない。第四の未遂事件も同一人物によるものか確定していない。

2026年8月時点で犯人の公的な特定はなく、二件目の女性の身元も判明したとの確認はない。歌舞伎町の匿名性と当時の捜査技術の限界により、女性3人の殺害と1人への襲撃は刑事責任が確定しないまま残った。

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