岩手県洋野町母娘強盗殺人事件は、2006年7月19日、岩手県九戸郡洋野町の住宅で、母親と次女が相次いで殺害され、金品を奪われた事件である。一審では起訴事実を認めていましたが、控訴審からは一転して無罪を主張した。しかし司法判断は変わらず、2012年に死刑が確定。2015年12月18日、仙台拘置支所で死刑が執行された。
- 2006年7月に洋野町で母娘2人が殺害された経緯
- 若林一行が女性2人暮らしの住宅を狙った背景
- 目出し帽・軍手・ロープを準備した犯行の計画性
- 母親を殺害した後も次女の帰宅を待ち続けた流れ
- 一審で認めた後、控訴審から無罪を主張した裁判経過
- 死刑確定から2015年の死刑執行まで
| 事件名 | 岩手県洋野町母娘強盗殺人事件 |
|---|---|
| 別称 | 岩手母娘強盗殺人事件、洋野町母娘殺害事件 |
| 発生日 | 2006年7月19日 |
| 場所 | 岩手県九戸郡洋野町 |
| 死亡者数 | 2人 |
| 被害者 | 母親(52歳)、次女(25歳) |
| 犯人 | 若林一行 |
| 事件当時の年齢 | 29歳 |
| 当時の職業 | 塗装工 |
| 認定された目的 | 強盗と性的暴行 |
| 主な罪 | 住居侵入、強盗殺人、強盗強姦未遂、死体遺棄、窃盗など |
| 一審 | 2007年4月24日、盛岡地裁が死刑 |
| 控訴審 | 2009年2月3日、仙台高裁が控訴棄却 |
| 最高裁 | 2012年1月16日、上告棄却 |
| 確定刑 | 死刑 |
| 死刑執行 | 2015年12月18日、仙台拘置支所 |
| 現在 | 死刑執行済み。本人への刑事手続きは終了 |
若林一行は借金や家賃の支払いに窮していた
若林一行は事件当時29歳で、青森県八戸市の塗装工として働いていた。一方、パチスロなどに金を使い、家賃や借金の返済に行き詰まっていたと認定されている。金を得るため、空き家や住宅への侵入を重ねるようになった。事件現場となった住宅にも、犯行前に侵入したことがあった。その際、家の中の様子から女性2人だけで暮らしていると知る。
若林はこの情報を利用し、強盗の標的として母娘の家を選んだ。
強盗と性的暴行を目的に住宅へ侵入
2006年7月19日、若林は母娘の留守中に住宅へ侵入した。準備していたのは、顔を隠すための目出し帽、軍手、被害者を縛るためのロープなどである。さらに住宅内にあった木製のすりこぎへ滑り止めを施し、凶器として使える状態にした。目的は、帰宅した母娘を拘束して金品の場所を聞き出し、性的暴行を加えることだった。
侵入した時点で殺害まで決めていたとは認定されていない。それでも、女性だけの家を狙い、道具をそろえて帰宅を待つ行為には、明確な準備と計画性があった。
先に帰宅した52歳の母親を襲撃
先に帰宅したのは、当時52歳の母親だった。若林は背後などからすりこぎで頭部を殴った。しかし母親は激しく抵抗し、その過程で若林の顔を見たとされている。自分の身元が知られれば逮捕される。そう考えた若林は、犯行の発覚を防ぐため母親の殺害を決意した。
さらに頭部へ攻撃を加え、首を絞めるなどして殺害。性的暴行も試みましたが、未遂に終わっている。侵入者へ抵抗し、顔を見たことが、命を奪う理由にされた。
母親を殺害した後も逃げず、次女の帰宅を待った
母親を殺害した時点で、若林には現場を離れる機会があった。ところが、若林は逃走しない。次女からも金品を奪い、性的暴行を加えたうえで殺害しようと考え、住宅内にとどまった。やがて、当時25歳の次女が仕事先から帰宅する。
自宅は本来、外出先から帰り、安心して過ごす場所である。しかし次女を待っていたのは、すでに母親を殺害した若林だった。
次女も殺害し、金品を奪った
若林は次女の頭部も、すりこぎで殴った。次女が激しく抵抗すると、若林は殺害して抵抗を止めた後に、強盗や性的暴行へ及ぼうと決意したと認定されている。若林は首を絞めるなどして次女を殺害。性的暴行を試みたものの、目的は遂げなかった。
その後、現金やゲーム機などの金品を奪っている。母親を殺害した後も次女を待ち続けた行動は、偶発的な一人殺害から、自ら被害を拡大させたものとして裁判で重く評価された。
母娘の遺体を山林へ運び遺棄
殺害後、若林は2人の遺体を住宅へ残しなかった。母娘の遺体を車で運び、青森県内の山林へ遺棄したとされている。目的は、遺体と犯行の発見を遅らせ、自分への捜査を免れることだった。家族から見れば、母娘が同時に行方不明になった状態である。自宅には血痕が残され、車も置かれているのに、本人たちだけがいなかった。
親族からの届け出を受け、警察は重大事件の可能性を視野に捜査を始める。
不審な車の目撃情報から若林が浮上
捜査では、事件前後に現場周辺で目撃された不審な車が手がかりとなった。車両情報などを調べる中で若林が浮上し、警察が事情を聴く。若林は母娘を殺害したことを認め、遺体を遺棄した場所についても供述した。警察は供述に基づいて山林を捜索し、2人の遺体を発見。2006年7月25日、若林を死体遺棄容疑で逮捕した。
その後、殺害と金品強奪についても捜査が進み、強盗殺人などの罪で起訴されている。
一審では犯行を認め、盛岡地裁が死刑判決
刑事裁判は盛岡地裁で開かれた。若林は捜査段階だけでなく、一審公判でも起訴された事実を認めた。争点の中心は、どの刑を科すべきかという量刑だった。2007年4月24日、盛岡地裁は若林に死刑を言い渡す。
裁判所が重く見たのは、金銭欲と性的目的から女性2人暮らしの家を狙い、道具を準備して待ち伏せしたことだった。さらに、母親を殺害した後も逃げず、次女の帰宅を待って殺害した点、遺体を山林へ遺棄した点も厳しく評価されている。
控訴審で一転して無罪を主張
一審判決後、若林はそれまでの態度を変えた。控訴審では、自分は母娘を殺害しておらず、別の人物が真犯人だという趣旨の主張を始める。捜査段階と一審で犯行を認めた理由についても、第三者に関する新たな説明を行った。
しかし仙台高裁は、若林の新しい供述には信用性がないと判断。客観的証拠や従来の供述などから犯人性に疑いはないとして、2009年2月3日に控訴を棄却した。
2012年、最高裁が上告を棄却し死刑確定
2012年1月16日、最高裁第一小法廷は若林側の上告を棄却した。最高裁は、強盗と性的暴行を目的として女性だけが暮らす住宅を選び、目出し帽やロープを準備して待ち伏せた経緯に、酌量の余地はないと判断している。侵入した段階では殺害まで計画していなかったことや、前科がなかったこと、一審までは犯行を認めていたことなども考慮された。
それでも、2人の生命を奪った結果は重大で、犯行は冷酷かつ残虐。死刑を回避する事情にはならないとして、一・二審の判断を維持した。その後の手続きを経て、若林一行の死刑が確定している。
2015年12月18日、仙台拘置支所で死刑執行
死刑確定から約4年後の2015年12月18日、若林一行の死刑が執行された。執行場所は仙台拘置支所。若林は39歳だった。法務省は、女性2人が住む住宅へ強盗などの目的で侵入し、順次帰宅した2人を殺害して金品を奪った事件として、執行理由となった犯罪事実を説明している。
したがって現在も、若林について「死刑確定者として収容中」「死刑執行待ち」とする説明は正確ではない。2015年に死刑が執行され、本人への刑事手続きは終了している。
殺害計画が侵入後に生じても死刑が維持された理由
若林は、住宅へ侵入した当初から母娘を殺害すると決めていたわけではなかった。それでも死刑が維持されたのは、殺意が生じた後の行動が極めて重大だったためである。母親を殺害した後、若林には逃げる時間があった。ところが次女への強盗や性的暴行を目的に、その帰宅を待ち続ける。
次女が戻ると襲撃し、抵抗を受けて殺害。金品を奪い、母娘の遺体を山林へ遺棄した。当初から計画していなかったことは、二人目の被害を自ら選んで拡大させた責任を消すものではない。
岩手県洋野町母娘強盗殺人事件が残したもの
2006年7月19日、母親と娘はそれぞれ仕事を終え、自宅へ戻った。しかし家の中には、若林が潜んでいた。先に帰った母親は突然襲われ、必死に抵抗した。若林は顔を見られたことから、口封じのため命を奪う。
その後も若林は逃げず、次女の帰宅を待ち続けた。次女も襲われ、同じ住宅で殺害されている。2人の遺体は山林へ運ばれた。母娘にとって最も安心できるはずの自宅が、以前から家の内部を調べていた侵入者によって犯行現場に変えられた。
一審では犯行を認めながら、控訴審以降は無罪を主張。しかし裁判所はいずれも退け、2012年に死刑が確定する。2015年12月18日、死刑執行。岩手県洋野町母娘強盗殺人事件は、借金や生活苦を背景に女性2人暮らしの住宅を狙い、強盗と性的目的から母娘の命を奪った重大事件である。
岩手県九戸郡洋野町の住宅で、母親と次女が相次いで殺害された。ただし、強盗と性的暴行を目的に道具を準備し、母娘の帰宅を待ち伏せした点には高い計画性があると判断された。2012年1月16日に最高裁第一小法廷が上告を棄却し、その後の手続きを経て死刑が確定した。
若林一行は母娘の帰宅前から住宅内に入り、強盗と性的暴行を目的に待ち伏せしていた。侵入した時点ですでに殺害まで決めていたとは認定されなかったものの、道具を準備し、帰宅した二人を相次いで襲った経過から、裁判所は犯行の計画性を重くみた。被害者は52歳の母親と25歳の次女で、若林は強盗殺人や死体遺棄などの罪に問われた。
最高裁第一小法廷は2012年1月16日に上告を棄却し、死刑が確定した。刑は2015年12月18日に仙台拘置支所で執行されており、若林は当時39歳だった。事件の刑事手続きはこの執行によって終結している。
母娘の帰宅を待つ間に犯行を中止する機会がありながら、若林は住宅内にとどまり、二人が戻ると実行へ移した。この経過も量刑判断で重く扱われた。
死刑確定から執行までの経過も、公表された法的状況に含まれる。
関連事件
この事件に関連するテーマから、書籍・資料をまとめて確認できます。


