里庄町ゲストハウス連続性的暴行事件|女性10人への事件、責任能力を争い最高裁へ上告

公開日 2026年6月25日
最終更新 2026年8月28日
カテゴリー 2010年代 性犯罪 有期刑

事件ステータス

発生年月日
2018年
都道府県
岡山県
事件分類
性犯罪

2022年9月、岡山県里庄町のゲストハウスから、宿泊客を無断で撮影したとみられる多数の写真や動画が押収された。捜査の出発点となったのは、同年3月に別の女性から寄せられた相談だった。警察は施設経営者の武内俊晴を逮捕し、複数年にわたる被害の捜査へ入った。

刑事裁判で審理されたのは女性10人に対する行為で、9人への性的暴行・わいせつ行為などと、1人への盗撮が含まれた。岡山地裁は2025年9月24日に懲役26年を言い渡し、広島高裁岡山支部も2026年3月25日に弁護側の控訴を棄却した。武内は翌26日に最高裁へ上告しており、2026年8月26日時点で公開資料から上告審の終局判断は確認できない。裁判で大きく争われたのは、犯行そのものだけでなく、武内に刑事責任能力があったのかという点だった。

主な犯行期間2018年9月ごろ~2022年6月
場所岡山県浅口郡里庄町のゲストハウスなど
被告人武内俊晴
被害者女性10人
起訴対象女性9人への性的暴行・わいせつ行為など、女性1人への盗撮
主な罪名準強制性交等、準強制わいせつ、準強制わいせつ未遂、岡山県迷惑行為防止条例違反など
最初の逮捕2022年9月20日
検察側求刑懲役28年
一審2025年9月24日、岡山地裁が懲役26年
控訴審2026年3月25日、広島高裁岡山支部が控訴棄却
上告2026年3月26日、武内被告が最高裁へ上告
最新の公表状況2026年8月26日時点で、公開資料から上告審の終局判断は確認できない

2022年3月の相談から、3年前の宿泊被害へ捜査がさかのぼった

最初の逮捕容疑は、2019年8月に1人で宿泊していた30代女性への準強制性交等だった。警察によると、女性は睡眠作用のある薬物を飲まされ、抵抗が困難な状態にされた疑いがあった。武内は2022年9月20日に逮捕され、当初は「やったかやっていないかは黙秘する」という趣旨の供述をしていたと報じられた。

逮捕時点で警察は、施設内から複数の宿泊客を無断撮影したとみられる写真や動画を押収していた。単独の申告だけで終わらず、映像などの確認から別の被害が浮上し、捜査対象は複数年へ広がった。後の公判で扱われた犯行期間は2018年から2022年に及ぶ。

押収データの確認から、起訴は4罪名・女性10人へ広がった

2026年3月のRSKの整理によると、捜査ではスマートフォン、パソコン、ハードディスクなどが押収され、宿泊客らを無断撮影した複数の動画や画像が見つかった。2022年3月に体調不良となった別の宿泊客から睡眠薬の成分が検出されたことも、薬物使用の疑いを強める材料になったと報じられている。

最終的な起訴は、6人への準強制性交等、3人への準強制わいせつ、1人への準強制わいせつ未遂、1人への県迷惑行為防止条例違反に及んだ。ここでは人数を単純に足して11人とすることはできない。未遂の被害者は他の起訴事実と重なるため、刑事裁判で扱われた被害女性は合計10人と整理されている。

宿泊施設という立場が、被害者を繰り返し呼び込む場所になった

一審判決で認定された犯行は、自ら経営する宿泊施設へ来た女性客らに睡眠作用のある薬物を飲ませ、抵抗できない状態にして性的行為に及ぶというものだった。被害者は旅行や宿泊のために施設を利用していたのであり、経営者との間には宿泊サービスを提供する側と利用する側という関係があった。

岡山地裁は量刑理由で、女性たちを次々と施設へ招き入れて被害に遭わせた点を重く評価した。単発の事件ではなく、同じ場所と同種の方法を使いながら被害が重なったことが、26年という長期刑の判断につながった。

9人への性犯罪だけではなく、浴室脱衣所での盗撮も起訴された

公判で扱われた被害者は計10人だった。9人については薬物を用いた性的暴行やわいせつ行為などが対象となり、別の女性1人については浴室の脱衣所に設置したカメラで裸を撮影した行為が起訴された。

報道によって「9人」「10人」と人数が異なって見えるのは、性的暴行などの対象が9人で、盗撮被害を含めた起訴対象が10人だからだ。10人全員が同じ罪名・同じ被害態様だったわけではない。数字を一つにまとめると、起訴内容の違いが見えなくなる。

公判の中心には「黒い影に命令された」という主張が置かれた

武内は公判で、犯行は「黒い影」に命令されて行ったという趣旨の説明をし、犯行時の記憶がないとも述べた。弁護側は精神疾患の影響で善悪を判断し、行動を制御する能力を失っていたとして、刑事責任を問えない心神喪失だったと主張した。

ここで重要なのは、不可解な説明を記事側が人物評価へ置き換えないことだ。刑法上の争点は、その説明が奇異に聞こえるかではなく、犯行時に責任能力が存在したかどうかだった。検察側は計画的な準備や継続した行動などを根拠に、完全責任能力があったと主張した。

検察側は、薬物の作用に関する知識と準備性を指摘した

RSKの公判報道によると、検察側は、武内がかなり以前から睡眠作用のある薬物と酒を組み合わせることについて知識を得ていたと指摘した。起訴された複数の犯行では、宿泊客に飲食させて抵抗困難な状態を作る方法が繰り返されたと主張している。

こうした事情は、偶発的な行為なのか、目的に沿って準備・実行した行為なのかを判断する材料になった。責任能力の有無をめぐる審理は、単に被告人の公判供述だけを見るのではなく、犯行前後の具体的な行動と整合するかという形で進められた。

岡山地裁は責任能力を認め、精神鑑定を行わない判断も争点になった

弁護側は精神鑑定の必要性を訴えたが、一審は責任能力に問題がないと判断した。2025年9月24日の判決は、武内の説明を信用せず、女性10人に対する起訴事実について有罪と認定した。

その後の控訴では、弁護側が事実誤認や量刑不当などに加え、責任能力の判断や審理手続にも異議を述べたと報じられている。したがって「一審で26年、二審でも26年」と結果だけを並べるより、二つの審級で責任能力をめぐる主張が退けられた経過を残す方が事件の核心に近い。

検察は懲役28年を求刑、一審は懲役26年を選んだ

2025年6月の論告で検察側は懲役28年を求刑した。これに対し岡山地裁は同年9月24日、懲役26年の実刑判決を言い渡した。判決は、被害者の人格や尊厳を無視したこと、複数の女性に対して犯行を重ねたことなどを厳しく評価した。

一方で、判決は求刑どおり28年ではなく26年を選択した。刑事裁判では「求刑」と「判決」は別であり、求刑年数がそのまま刑になるわけではない。本件でも、確定的に言える一審の結論は懲役26年である。

初公判は2024年2月、全面否認から約1年7か月の審理が続いた

岡山地裁での初公判は2024年2月に始まった。武内は、目の前に現れた「黒い影」から命令を受けた、向精神薬とアルコールの同時摂取で犯行を覚えていない、という趣旨の説明をし、起訴内容を全面的に否認した。2025年6月の論告・弁論を経て、同年9月に判決が言い渡されるまで、責任能力と個々の起訴事実が長く審理された。

一審判決後、武内は翌日の2025年9月25日に控訴した。控訴審で弁護側が掲げた理由は、単なる量刑不当だけではない。事実誤認、訴訟手続の法令違反、量刑不当の3点を主張し、一部の薬物混入やわいせつ行為、未遂事件における故意などについて一審認定を争った。

高裁は事実認定と精神鑑定の却下を別々に検討した

広島高裁岡山支部は、事実誤認の主張について、一審判決には論理則・経験則から見て不合理な点はないと判断した。さらに弁護側は、統合失調症による幻聴や妄想の影響が疑われるのに一審が精神鑑定を行わなかったのは違法だと訴えた。

これに対し高裁は、各犯行当時に幻覚妄想状態や見当識を失うような意識障害を伴う統合失調症に罹患していたとは認められず、責任能力に疑いはないとした。そのため、精神鑑定請求を却下した一審の判断にも誤りはないと結論付けた。責任能力については「鑑定をして有責とした」のではなく、「鑑定請求を退けた判断自体が控訴審でも是認された」という経過になる。

2026年3月25日、高裁は控訴を棄却した

広島高裁岡山支部は2026年3月25日、弁護側の控訴を棄却した。テレビせとうちによると、菱田泰信裁判長は責任能力に問題はなく、反省も認められないなどとして一審判決を支持した。

テレビ朝日も、一審が認定した女性9人への薬物を用いた性的暴行などを前提に、弁護側の主張には理由がないとして控訴が退けられたと報じている。これにより、少なくとも控訴審まで懲役26年という結論が維持された。

控訴棄却の翌日、武内被告は最高裁へ上告した

控訴審判決で手続違反と事実誤認、量刑不当の主張はいずれも退けられたが、手続はそこで終わらなかった。RSKは、武内が判決翌日の2026年3月26日、控訴審判決を不服として最高裁へ上告したと報じている。

2026年8月26日時点で、最高裁が上告を棄却した、あるいは上告が取り下げられたとする公表資料は確認できない。このため現在の法的状態は「一・二審で懲役26年、最高裁に上告中」と整理するのが適切で、「懲役26年が確定した」とは書けない。

事件の記録で残すべきなのは、薬物・宿泊施設・責任能力の三つの軸

本件は、宿泊施設の経営者が利用客と接する立場を使い、睡眠作用のある薬物を用いた性犯罪を複数年にわたり繰り返したとして有罪判決を受けた事件である。同時に、盗撮を含めると被害者10人、性的暴行などの対象は9人という区別も必要になる。

裁判では、弁護側が心神喪失を主張し、責任能力が正面から争われた。岡山地裁と広島高裁岡山支部はいずれもその主張を退け、懲役26年を維持した。武内は最高裁へ上告しており、2026年8月26日時点では刑の確定まで確認できない。公表資料にない心理や未起訴の余罪を足さなくても、捜査の端緒から上告までを追えば事件の全体像は十分に見える。

参考資料・出典

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