八王子スーパー強盗殺人事件|ナンペイで3人が射殺された未解決事件

公開日 2026年2月3日
最終更新 2026年8月1日

1995年7月30日夜、東京都八王子市大和田町のスーパー「ナンペイ大和田店」2階事務所で、パート従業員の女性2人とアルバイトの女子高校生が拳銃で撃たれて死亡した。閉店後の事務所には売上金が入った金庫があったが、現金は奪われていなかった。犯人は短時間で3人を殺害し、目撃されないまま店を離れた。

警視庁は強盗殺人事件として捜査本部を設置し、現場に残った弾丸や被害者を縛った粘着テープ、店周辺の目撃情報を調べてきた。事件は2005年の刑事訴訟法改正などによって公訴時効が撤廃され、現在も捜査対象である。警察庁の捜査特別報奨金制度と民間懸賞金を合わせ、犯人逮捕につながる情報には最高額の報奨金が設定されている。

事件名八王子スーパー強盗殺人事件
発生日1995年7月30日
発生場所東京都八王子市大和田町・ナンペイ大和田店
被害女性従業員2人、女子高校生1人が死亡
主な物証拳銃弾、薬きょう、粘着テープなど
現在の状況未解決。警視庁が公開捜査を継続

閉店後の事務所に残った3人

1995年7月30日は日曜日だった。ナンペイ大和田店は午後9時に閉店し、店内にはパート従業員の稲垣則子さん(当時47歳)、矢吹恵さん(当時17歳)、アルバイトの前田寛美さん(当時16歳)が残っていた。矢吹さんと前田さんは高校生で、仕事を終えて帰宅するまでの時間を事務所で過ごしていた。

午後9時15分ごろ、迎えに来た家族が店の異変に気付き、その後、2階事務所で3人が倒れているのが発見された。いずれも至近距離から拳銃で撃たれていた。二人は手を粘着テープで縛られ、抵抗しにくい状態にされていた。

店は住宅や事業所が混在する地域にあり、近くには道路や鉄道も通っている。犯人が徒歩で来たのか、車や二輪車を使ったのかは確定していない。閉店から発見までの短い時間に犯行が行われたとみられ、捜査本部はその時間帯に店の周辺を通った人や車を重点的に調べた。

奪われなかった金庫内の売上金

事務所には店舗の売上金を保管する金庫があった。金庫にはこじ開けようとした痕跡が残っていたが、中の現金は奪われていなかった。犯人が金庫の開け方を知らず、途中で断念した可能性がある一方、金銭以外の目的があった可能性も排除できなかった。

被害者3人と犯人の間に共通する関係は確認されていない。女子高校生2人はその日、通常のアルバイトとして店に勤務していた。特定の被害者を狙ったのか、売上金を狙って店へ入り、居合わせた3人を殺害したのかは、事件の性格を分ける重要な未解決点である。

強盗目的であれば、なぜ現金を残したのかが問題となる。発砲音や来店者を警戒して逃げた、金庫を開けられなかった、犯行後に予定が変わったなど複数の可能性が検討された。しかし、犯人の供述がなく、現場だけから一つに絞ることはできていない。

拳銃の扱いと現場に残された弾丸

3人は頭部を中心に撃たれており、犯人は殺害する意思を持って発砲したとみられる。使用された拳銃は小型の自動式拳銃と推定され、現場には弾丸と薬きょうが残された。発射された弾の状態から、捜査本部は拳銃の種類や流通経路を調べた。

発砲の間隔や命中位置については、犯人が拳銃の扱いに慣れていたとの見方と、至近距離で撃ったため経験がなくても可能だったとの見方がある。捜査上の仮説を、軍や暴力団への所属歴と直結させることはできず、警視庁は国内外の拳銃事件や押収銃器との照合を続けた。

弾丸は犯行を裏付ける重要な物証だが、銃本体が見つからなければ個体を特定できない。事件後に別の犯罪で押収された拳銃や海外で発見された銃器も調査対象となったものの、犯行銃の発見には至っていない。

粘着テープと指紋・DNAの照合

被害者の手を縛るために使われた粘着テープには、犯人につながる痕跡が残っている可能性があった。警視庁は指紋、掌紋、付着物を詳しく調べ、捜査対象となった人物との照合を重ねている。鑑定技術が進歩するたび、保存された証拠を再検討してきた。

現場から採取された指紋の一部について、犯人のものかどうかは確定していない。店員や納入業者など正当な理由で店に出入りした人の痕跡もあるため、現場に存在したというだけでは犯行への関与を示せない。採取位置や残り方を含めた評価が必要になる。

DNA型鑑定についても、微量資料の扱いは事件当時より進歩した。ただし、誰がいつ残したか分からない資料や、複数人の成分が混ざった資料は慎重に判断しなければならない。捜査本部は新しい鑑定方法を利用しながら、証拠を損なわないよう保存を続けている。

目撃証言と捜査線上に浮かんだ人物

事件前後、店の周辺では不審な人物や車両に関する複数の目撃情報が寄せられた。店内をうかがう男、現場近くで立ち止まる車、犯行時間帯に急いで離れた人物などが確認されたが、証言の正確さや事件との関係は一様ではなかった。

警視庁は暴力団関係者、拳銃犯罪の前歴者、店舗に出入りした人物、元従業員などを広く調べた。海外にいる人物の情報が取り上げられたこともあり、捜査員が現地へ赴いて確認した事例もある。しかし、現場の物証と一致し、逮捕状を請求できる証拠は得られていない。

未解決事件では、捜査対象になったという事実だけが独り歩きしやすい。警察が事情を聴いた人物の多くは、関与を裏付ける証拠がなかった人々である。公式に犯人と認定された人物はおらず、匿名の証言や推測を確定情報として扱うことはできない。

時効撤廃と現在も続く公開捜査

事件発生当時、強盗殺人には公訴時効があった。その後の法改正で、死刑に当たる罪の公訴時効は撤廃され、過去に発生して時効が完成していない事件にも適用された。八王子の事件は捜査を続けることが可能となり、専門の捜査員が情報の整理と証拠の再鑑定を行っている。

警察庁は2007年、この事件を捜査特別報奨金制度の対象に指定した。犯人の検挙につながる有力情報には公的な報奨金が支払われ、民間からの懸賞金も加えられている。警視庁は毎年、事件が起きた時期に現場周辺や駅でチラシを配り、記憶や保管資料の確認を呼びかけている。

事件から長い年月がたつほど、当時を知る人の記憶や資料は失われやすい。一方、過去には重要でないと思われた会話、拳銃や車の処分、知人の行動変化が、別の情報と結び付く可能性がある。警視庁八王子警察署の捜査本部は、現在も犯人逮捕につながる情報を受け付けている。

保存された証拠と情報提供の再検討

捜査本部には事件直後から多数の情報が寄せられた。時間の経過後に寄せられた情報には、記憶違いや報道から得た内容が混ざる可能性があるため、当時の供述、地図、勤務記録、車両登録などと照合する作業が必要になる。単独では意味を持たない情報も、別の証拠と一致すれば捜査対象を絞る手掛かりになる。

店の構造を知っていた人物による犯行との見方も検討された。事務所の位置、閉店時刻、売上金の保管場所を知っていれば短時間で2階へ入れる一方、金庫を開けられなかった事実は内部事情に詳しくなかった可能性を示す。どちらか一方を断定できる証拠はなく、元従業員、取引先、近隣住民など幅広い関係者の確認が続いた。

事件当時には一般的でなかったデータベース照合も、その後の捜査で利用されるようになった。指紋、DNA型、拳銃の発射痕、同種事件の手口を他地域の資料と比較し、別事件の逮捕者や服役者との関係を調べる。候補が浮かんでも、現場証拠との一致がなければ立件には至らない。

被害者を縛ったテープの粘着面や切断面、弾丸の変形、事務所に残った物の配置は、犯行時の行動を推定する資料になる。保存資料を新しい方法で調べる際には、鑑定で資料を消費する可能性も考えなければならない。将来の技術で得られる情報を残すため、分析の範囲は慎重に決められる。

警視庁は、事件の前後に急に金を必要としていた人、拳銃を持っていたという話をした人、事件後に生活や行動が変わった人について、家族や知人からの情報を求めている。犯人がすでに死亡している可能性もあるが、共犯や銃器の入手先を含めて真相を確認する必要があり、未解決のまま捜査は継続している。

被害者3人が最後に店内で確認された時刻、迎えの家族が到着した時刻、通報と警察官の到着時刻は、犯行可能時間を絞る基礎となった。短時間で事務所へ入り、拘束、発砲、金庫への働きかけを行ったとすれば、犯人は迷わず行動した可能性がある。ただし、店内に事前に潜んでいた可能性も完全には否定されていない。

捜査特別報奨金は、うわさや推測ではなく、犯人の検挙や事件解決に直接役立つ情報が対象となる。警視庁は、当時の写真、日記、車の記録、銃器に関する会話など、本人が重要と考えていなかった資料も確認するよう呼びかけている。

事件現場となった店舗はすでに営業していないが、現場の位置関係や周辺道路は捜査資料として記録されている。建物や街並みが変化しても、当時の航空写真、地図、現場写真を使って目撃証言を再検討できるようにしている。

犯人が一人だったか複数だったかも確定していない。事務所内の行動を一人で行うことは可能とみられるが、見張りや移動手段を担当した共犯者がいた可能性も捜査対象である。情報提供者が直接犯行を見ていなくても、拳銃の入手や事件後の処分を知る人物であれば解決につながり得る。

3人の被害者には、その日の勤務を終えた後の予定と生活があった。事件を金庫や銃器の謎だけで扱うと、無関係の人々が職場で殺害された事実が後景に退く。公開捜査は、犯行手口の解明と同時に、3人を殺害した人物を法的に特定するために続けられている。

事件解決に必要なのは、犯人像に合うという印象ではなく、現場の物証や行動記録と結び付く証拠である。警視庁は、過去に捜査した人物も新しい情報があれば再確認し、反対に裏付けがなければ推測だけで関与を断定しない方針で捜査を続けている。

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