八王子スーパー強盗殺人事件|女性3人射殺から31年、残る靴跡と最大600万円の公開捜査

公開日 2026年2月3日
最終更新 2026年8月28日

事件ステータス

発生年月日
1995年
都道府県
東京都
事件分類
未解決事件 / 殺人事件
事件状況
未解決

1995年7月30日午後9時15分ごろ、東京都八王子市大和田町のスーパー「ナンペイ大和田店」2階事務所で、3人の女性が拳銃で殺害された。亡くなったのはパート従業員の稲垣則子さん(当時47)、アルバイトの高校2年生・矢吹恵さん(17)と前田寛美さん(16)。31年後の2026年8月現在も被疑者は検挙されていない。

現場の金庫には銃弾が撃ち込まれた痕があった一方、約500万円の現金は残されたままだった。警視庁は「大和田町スーパー事務所内けん銃使用強盗殺人事件」として捜査を継続し、2026年7月30日には現場周辺を再現した3D動画を公開。捜査特別報奨金300万円と私的懸賞金300万円を合わせ、最大600万円の懸賞金を設定している。

発生1995年7月30日午後9時15分ごろ
場所東京都八王子市大和田町4丁目26番1号・スーパー「ナンペイ大和田店」2階事務所
被害者稲垣則子さん(47)、矢吹恵さん(17)、前田寛美さん(16)
被害女性3人が拳銃で殺害
現場構造1階が店舗、2階事務所へは外階段を使用
金庫銃弾痕があったが約500万円の現金は残存
重要な遺留情報現場の靴跡、拳銃・弾丸、粘着テープなど
捜査状況未解決・警視庁が特別捜査本部で継続捜査
懸賞金公的300万円+私的300万円、最大600万円
現行期間2026年7月30日~2027年7月29日

閉店直後の2階事務所で、3人が拳銃で殺害された

警視庁によると、事件が起きたのは日曜日の午後9時15分ごろ。ナンペイ大和田店は1階が売り場、2階が事務所で、事務所へ上がるには建物外側の階段を使う構造だった。店の近くにある北の原公園では午後6時から盆踊りが開かれ、午後9時6分ごろに終わっている。人の動きが途切れ切らない時間帯で事件は起きた。

被害者3人は抵抗できない状態で撃たれたと警視庁は説明する。翌年の警察白書にも、「アルバイト高校生2人を含む女性店員3人がけん銃で射殺された」と記録され、警視庁が捜査本部を設置した重要凶悪事件の一例として掲載された。事件発生直後から拳銃を使った強盗殺人として大規模な捜査が始まった。

被害者は稲垣則子さん、矢吹恵さん、前田寛美さん

亡くなった稲垣則子さんは47歳のパート従業員。矢吹恵さん17歳と前田寛美さん16歳は、ともに高校2年生で店のアルバイトだった。共同通信の30年報道によれば、3人は頭や顔を撃たれて死亡した。10代の2人は夏休み中の高校生であり、職場で勤務やシフト確認に関わる時間帯に事件へ巻き込まれた。

「女性3人」「高校生2人」という人数だけでは、事件の被害は見えにくい。警視庁は現在も3人が働いていた当時の店内や周辺の状況を再現し、記憶を持つ人へ情報提供を呼びかけている。31年という時間が経過しても、捜査の目的は誰が3人を殺害したのかを刑事手続で明らかにすることに変わりはない。

金庫には弾痕――それでも約500万円は残された

事件を理解しにくくしている事実の一つが金庫である。NHKの2025年の検証では、事務所の金庫に1発の銃弾が撃ち込まれていた一方、中にあった現金約526万円は奪われず、室内も大きく荒らされていなかったとされる。金庫を狙った形跡と、金銭を持ち去っていない結果が同時に残った。

警察の正式名称は現在も「けん銃使用強盗殺人事件」だが、現金が残ったという事実だけから「金目的ではなかった」と断定することもできない。強盗を試みたが何らかの事情で断念した可能性、別の目的があった可能性など、複数の捜査仮説が成り立つ。刑事裁判による事実認定がない現在、動機は確定していない。

現場の靴跡は、2種類の市販スニーカーに絞り込まれた

長期捜査で今も公開されている物証の一つが靴跡だ。警視庁は、現場に残された靴跡に該当するスニーカーが2種類あると公表している。どちらも26センチで、事件当時に新品ではなく、ある程度履き込まれていたことも分かっている。

一方は1990~1991年ごろに東京・神奈川・埼玉の店舗で販売され、警視庁が把握する販売数は439足。もう一方は1993~1994年ごろに全国49店舗で94足が販売され、そのうち都内では19足だった。警視庁は1990~1995年ごろの写真やアルバムを見返し、同型の靴を履いている人物に心当たりがないか情報を求めている。

最後の客とみられる男女、白いセダンの情報も求められている

警視庁の2026年公開ページは、事件当日午後8時56分ごろにレジを通過した最後の客とみられる男女について、現在も連絡を求めている。2人は白色のセダンで店を離れたとされ、捜査本部は犯人と決めつけているのではなく、事件直前の店や周辺で何を見たかを知る重要な目撃者候補として探している。

また、午後9時15分前後に外階段を上り下りした人物、店舗敷地から出てきた人物、付近でたばこを吸っていた人物、不審な車を見た人など幅広い情報を募集する。未解決事件では、長年語られてきた特定の「犯人像」より、事件時刻の前後に実際に誰がどこにいたかという断片的な目撃情報の積み重ねが重要になる。

拳銃事件として、1996年警察白書にも記録された

警察庁の1996年警察白書は、1995年に銃器発砲を伴う強盗事件が14件発生したとし、その代表例の一つとしてナンペイ事件を記載した。発生日、八王子市のスーパー2階事務所、女性店員3人の射殺、捜査本部設置という骨格が、事件翌年の公的記録に残っている。

事件は後年、外国製拳銃の流通経路、海外につながる人物、国内の複数の捜査対象などさまざまな角度から報じられてきた。しかし、誰かが捜査線上に浮かんだことと、その人物が被疑者として起訴され有罪になったことは別である。2026年8月現在、警視庁は犯人を検挙したとは発表していない。

2010年の公訴時効撤廃で、捜査に時間の区切りはなくなった

事件発生から15年となった2010年、刑事訴訟法の改正で、人を死亡させた殺人など一定の犯罪について公訴時効が廃止された。ナンペイ事件も時効によって捜査が終了することなく、発生から30年を超えて捜査が続く事件の一つとなった。

共同通信は30年となった2025年、警視庁が延べ22万人以上の捜査員を投入してきたと報じた。捜査員の入れ替わりが進む中でも、物証の再鑑定、過去の聴取記録の見直し、国内外で得られた情報の検討が継続される。時間が経過したこと自体が、事件を終結させる理由にはならない。

2026年、警視庁は現場周辺を3Dで再現した

警視庁は2026年7月30日、公開捜査ページを更新し、事件当時の発生現場付近を再現した3D動画を掲載した。建物そのものはすでに当時と同じ状態ではないため、31年前の位置関係や外階段、周辺道路を視覚的に示し、記憶を呼び起こす狙いがある。

同じ公開ページには、当日の盆踊り、テレビ番組、スポーツ、音楽など「その日に何をしていたか」を思い出す手掛かりも並ぶ。長期未解決事件で「1995年7月30日夜」という日付だけを示しても記憶をたどりにくい。生活上の出来事と結び付けて、当時八王子にいた人の記憶を掘り起こす方法へ捜査広報も変化している。

懸賞金は最大600万円、2027年7月29日まで

警察庁は本件を捜査特別報奨金の対象としており、2026年7月30日から2027年7月29日まで、被疑者の検挙または事件解決に結び付く情報に上限300万円を設定している。これとは別に「捜査に協力する会」の私的懸賞金が上限300万円あり、支払額は最大600万円となる。

報奨金は情報の価値や事件解決への寄与度に応じて決まり、単に連絡すれば支払われる制度ではない。それでも、警察が31年後も公的報奨金の対象として捜査を続けている事実は、本件が「過去の未解決事件」ではなく、現在進行形の強盗殺人捜査であることを示している。

今も「犯人」と断定できる人物はいない

ナンペイ事件では、指紋、拳銃、靴跡、粘着テープ、目撃情報などをめぐって長年にわたり多くの報道が出た。捜査対象となった人物や、海外で聴取された人物も報じられたが、それらをつなぎ合わせて特定人物を犯人と書くことはできない。逮捕・起訴・有罪判決に至った人物はいないからだ。

確定しているのは、1995年7月30日夜に稲垣さん、矢吹さん、前田さんの3人が拳銃で殺害されたこと、警視庁が強盗殺人として捜査を続けていること、そして2026年になっても新たな情報提供を求めていることまでである。残された物証と記憶の断片が被疑者の特定へ結び付くかが、31年目以降の捜査でも最大の焦点になる。

現場は北八王子駅から約750メートル、住宅と工場が混在する一帯だった

警視庁の公開資料では、現場はJR八王子駅の北東約2キロ、JR八高線北八王子駅の西南西約750メートルに位置する。西側には八王子バイパス、南側には国道20号が走り、周辺には住宅と工場が混在していた。犯行後に徒歩で離れたのか、車で幹線道路へ向かったのかを考える上でも、現場の道路構造は捜査上の重要な背景になる。

2階事務所へは外階段を使うため、犯人が出入りすれば屋外から目撃される可能性があった。警視庁が現在も「外階段を昇り降りした人」「敷地から出た人」「駐車場から車に乗り込んだ人」など具体的な場面を挙げて情報を求めているのは、この構造と関係している。

午後8時56分に精算した男女は、事件直前を知る目撃者候補として今も探されている

警視庁が探す最後の客とみられる男女は、午後8時56分に7点、税込み1,754円分の商品を精算し、駐車場へ向かったとされる。男性は身長約177センチで両側を刈り上げたような髪形、女性は肩までのストレートヘアで黒っぽいワンピース風の服装。2人は白色のセダン型車両に乗ったとの情報がある。

この男女が事件に関与したと警視庁が発表しているわけではない。公式ページは「犯人を目撃しているかもしれません」とし、最後の客として情報提供を求めている。事件の直前まで通常の営業が続いていたとすれば、店を離れる際の駐車場、外階段、周辺道路の様子を見ていた可能性があり、31年後も証言を得たい対象になっている。

30年で延べ22万人を超える捜査員が投入された

共同通信は発生30年の2025年7月、警視庁がそれまでに延べ22万人以上の捜査員を投入したと報じた。テレビ朝日の同年報道では約22万6,000人とされる。長期間の捜査は、事件当夜の聞き込みだけでなく、拳銃の流通、指紋・DNAなどの鑑定、海外情報、過去の捜査資料の再点検へ範囲を広げてきた。

それでも逮捕に至っていない事実は、捜査対象になった人物が多いことと、起訴できる証拠がそろうことの間に大きな隔たりがあることを示す。未解決事件の記事では、過去に報じられた「有力人物」を並べるより、現在の警察がなお公開している物証と目撃情報を基準にする必要がある。

参考資料・出典

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